2008年3月29日土曜日

株式49

なお、かつては株式分割で取得単価の縮小により需要が増加しても、新株(株券)が市場に流通するまでに一定期間あったために、株価が上昇する場合があった。しかし、証券取引所からの通達で1:5以上の株式分割を抑止する方針が出されたことや、[[証券保管振替制度証券保管振替機構]]([[証券保管振替制度ほふり]])に預託された株券については[[2006年]][[1月4日]]以降株式分割割当日の翌日を効力発生日とする等の制度改正によって株式分割による需給の空白期間が無くなったことから、需給を原因とする大幅な株価変動は少なくなった。
== 株式分割をめぐる現代的問題 ==従来は、[[額面株式株式の額面額]](券面額、株金額)や[[株券]]の発行コストが株式分割を法的にあるいは事実上限定する役割を果たしていたが(商法旧第166条2項)、額面株式が廃止され([[2001年]]商法改正)、また、株券を必要としない制度([[社債等の振替に関する法律]]、なお会社法においては株券不発行が原則となっている)が整備されたことで、特に[[上場会社]]についてはほぼ無限定に株式分割をすることが可能になり、大幅な株式分割によって株価上昇をさせる手法が問題になった。特に[[2006年]]には[[ライブドア]]の[[ライブドア事件粉飾決算事件]]に絡んで、同社の度重なる株式分割がクローズアップされ「現代の[[錬金術]]」と揶揄された。詳細は[[株式分割バブル]]を参照。

株式48

よって、日本法においては、[[株式併合]]([[b:会社法第180条180条2項]])の場合と異なり、株主総会の特別決議([[b:会社法第309条309条2項]])までは法律上要求されず、[[取締役会設置会社]]においては、[[株主総会]]の通常決議すら不要で、[[取締役会]]の決議のみで分割が可能である([[b:会社法第183条183条2項]])。
実際の例では、1:1.1(かつての言い方でいう1割無償)などの形が多い。分割によって発生した[[単元株単元株式数]]未満の株式については、会社への買取を請求することができる([[株式買取請求権]]、[[b:会社法第192条192条1項]])。
== 背景 ==株式分割は、単元単価が高値をつけており市場[[流動性 (経済学)流動性]]が低下しているなどの状況がある場合、株式分割によって単元あたりの単価を縮小させることで市場流動性を向上させるために行われることが多い。
株式分割によって取得単価の縮小と全体株数の増加によって、市場流動性が高まり株式が取得しやすくなる等の効果がある。

株式47

以前は'''株式配当'''や'''無償交付'''、'''無償増資'''とも呼ばれており、[[商法]]上も株式分割と株式配当、無償交付は個別に規定が存在していたが、[[1991年]]の商法改正で株式分割に統一された。これは、「株主の所有する株式が分割により増加すること」と「株主に対し持株数に応じて一定割合の株式を無償に交付すること」が新株を発行するという点においては法的には同一の事象であるからと説明される。なお、[[2005年]]に成立、公布された[[会社法新会社法]]では、[[b:会社法第185条185条]]で新たに'''[[株式無償割当て]]'''という概念が登場している。これは、[[種類株式]]が制度化されたのに伴い、異種の株式の交付を、従来の株式分割の概念でとらえることが困難になったためである。
== 概要 ==従来の株数を1とした比率で表され、例えば「1:3」の場合、1株に対して2株が無償で、[[基準日]]([[b:会社法第183条183条2項1号]])に[[株主名簿]]に記載された[[株主]]に対し配られることになる。持株数は3倍になるが、(理論的には)[[株価]]は1/3になるので、[[資産]]の総額([[時価総額]])自体は変わらず、またすべての株主の持株数が均等に増加するので持分比率の変動もない。

株式46

平成13年商法改正前は端株券を発行してもらい流通に付すことで投下資本を回収することもできたが、同改正は端株券の発行を禁止し、[[名義書換]]に関する制度も無くなったことから、端株券を譲渡することは出来なくなった。その代わり、会社に対して'''端株買取請求権'''を有する(商法220条ノ6)。
端株主が新たに株式の交付を受け、従来から有する端株と併せて一株となるときは、株主となる(商法220条ノ5第1項)。もっとも、端株券が廃止されたことから、端株の流通により株主となることは無い。[[株主総会]]において[[議決権]]を行使すべき者を定める[[基準日]]を会社が定めたときは、基準日後に株主となった者はその株主総会では議決権を有しない(同条2項)。
会社が定款によって、端株主がその端株と併せて一株となるべき端株を売渡すべき旨を会社に請求することが出来ることを定めたときは、端株主は会社に対して'''端株の買増請求'''が出来る(商法220条ノ7)。

株式45

=== 端株の発生 ===端株が発生するのは、株式の発行、[[株式併合]]または[[株式分割]]により一株の100分の1の整数倍に当たる端数が生じたときである(商法220条ノ2第1項)。ただし、定款により100分の1とは異なる割合を定めることも出来る(同条3項前段)。端数について端株原簿に記載しない旨を定款で定めれば、端株は発生しない(同条3項後段)。
=== 端株原簿 ===会社は、端株となるべき端数が生じたときは端株原簿に記載または記録しなければならない(同条1項)。端株原簿とは、端株主に関する事項を明らかにするために作成される会社の法定帳簿である。端株原簿には、端株主の[[氏名]]及び[[住所]]、端株主の有する端株の種類及び一株に対する割合、端株取得の年月日、その他の事項を記載する。
=== 端株主 ===端株主には、株主の権利のうち[[共益権]](会社の管理運営に参加する権利)は認められない。[[自益権]](会社から経済的利益を受ける権利)は一定のものが認められる(商法220条ノ3)。株式の消却・併合・分割又は[[株式交換]]・[[株式移転]]・[[会社分割]]・[[企業合併合併]]により株式又は金銭を受ける権利、[[残余財産分配請求権]]は全ての端株主に認められる。これに対し、[[利益配当請求権]]([[中間配当]]請求権)、[[利息]]請求権、株式の転換請求権、新株・[[新株予約権]]・[[新株予約権付社債]]の引受権は原則として認められるが、会社が定款で権利を与えない旨定めることができる。

株式44

[[1981年]](昭和56年)商法改正では、株式の[[出資]]単位を5万円に引き上げた([[単位株]])。同改正前は出資単位が500円であったため、一株に満たない端数の価値は微々たるものであったが、同改正により端数の[[経済]]的価値も無視できないものとなった。そこで同改正では、同時に'''端株制度'''についても規定し、一株に満たない端数で、一株の100分の1の[[整数]]倍に当たるものに限り、端株として一定の保護を与えることにした。つまり、端株制度は出資単位引き上げによる[[株主]]管理コストの軽減と端株主の保護の調整のための制度である。
[[2001年]](平成13年)6月の商法改正では、株式の出資単位を[[法 (法学)法]]が強制することをやめたため([[単元株]])、端株制度を採用するかどうか、採用する場合に端株として認める端数をどう定めるかは[[会社]]ごとの判断([[定款]]自治)に委ねられることになった。
さらに、[[2005年]](平成17年)の商法改正では、端株制度を'''廃止'''することにした。これは、制度趣旨が[[単元株]]制度と共通していることから、現実に多く使われている単元株制度に一本化したものである。従って、[[会社法]]に端株についての規定は存在しない。もっとも、会社法234条、235条は一株に満たない端数の処理について規定しているが、制度としての端株は無い。ただし、冒頭でも述べたように、会社法施行前から存在する端株については、会社法施行後においても存在が許され、その処理についてはかつての商法旧会社編の規定が適用されることになる(会社法整備法86条1項)。

株式41

=== 単元株数の決め方 ===単元株式制度を導入するときは、その旨を[[定款]]で明示し([[b:会社法第188条188条1項]])、[[取締役]]は株主総会において理由を説明しなければならない([[b:会社法第190条190条]])。単元株式数については下限は制度趣旨から一株であり、上限については、会社の発行済み株式数が20万株未満の場合は発行済み株式数を200で割った数を一単元の上限とし、20万株以上の場合は一律1000株を一単元の上限とする。一度定めた単元株数を減らす場合には取締役会決議で柔軟に変更できるが、単元株数を増加させる変更は議決権行使可能な株主が単元未満株主にされるおそれがあるため、会社法は[[株主総会決議事項]]としている。
ちなみに、200と言う数値は旧商法で定められていた[[最低資本金制度]](平成2年~平成18年)の最低資本額1000万円を、旧額面株式制度(明治32年~平成13年)で定められていた最低券面額5万円で除した数と言われる。ここで登場する1000万円や5万円については、いずれも法制度検討時に妥当と推測された額であり確たる根拠はなく、そのため200と言う数値にも意味がないと言えるが、両制度が並存した時期もあり会社法改正時にはこれら背景を考慮したと考えられる。

株式40

== 単元株制度 ==単元株制度自体は、旧[[額面株式額面株式制度]]の改革の経緯に由来するもので日本独自の制度といえる。現行制度は旧[[単位株単位株制度]]にかわり平成13年10月施行[[商法]]改正で導入された制度で、'''本来一株しか持たない株主でも株主権を全て認めるべきところを、経済合理性の面から一定の株式以上をまとめて「一単元」と称して単元株主には本来株主に認められる全ての権利を認める一方で、「単元未満」の株主には株主総会議決権などの権利を制限する制度([[b:会社法第189条189条]])'''を言う。昭和56年商法改正時のように「50円額面を50,000円額面に強制的に引き上げて会社の株主管理コストを削減させる(その代わりに1,000株を1単位とする単位株制度が導入された)」ようなことを法定する時代背景もなくなり、(経済的合理性のために[[株主]]の権利を制限する制度であるので[[株主平等原則]]に反するという疑義もなされているものの)株主管理コストについてはそれぞれの会社自身で決定すべきとの考え方が定着し、単元未満株式については[[株式買取請求権買取請求権]]([[b:会社法第192条192条]])によって会社が買い取ることとされるため株主の財産的価値は保護されるため、会社法では株主平等原則の明文化とともに単元株制度の本則化を行っている(従来の単位株制度は商法附則に定められており、全ての会社が[[端株制度]]へ移行するまでの経過措置とされていた。なお、端株制度は廃止された。)。

株式39

== 検証時に注意する事柄 ==変数、一定条件を加えたフィルター、損切りルールなどをプログラムに書き込む事で最適化したり、ルールを絞ったりする事ができるが、カーブフィッティングと呼ばれる将来的には無効になるであろう都合のいい数字を出す危険がある。他に注意する事柄として[[大数の法則]]、最大ドローダウン、連敗数、資金残高曲線などがある。特に[[大数の法則]]はシステムトレードの要であるため注意が必要。そのためシステムトレードでは自然と短中期戦略にならざるを得ない。

株式38

== システムトレードの手法 ==主にクロス系、ブレイクアウト系、パターン系、裁定系などがある。有名な物は『移動平均の交差』『3点チャージ法』『タートルズ・ブレイクアウトシステム』などがある。過去のデータを用いて検証し、対象とする市場と相性の良いシステムを選択する。データは証券取引所やデータ配信会社から購入するが、公開株式の日足データは無料の[[Yahoo!]]などのポータルサイトから取得することも可能である。一般投資家が[[自動売買]]をする場合、データ収集、売買判断、注文、決済などの計算と処理を自動で行なわせる必要がある。楽天のRSS、[[UWSC]]、[[トレードステーション]]、[[オートレ]]などを使用する場合が多い。海外では市販プログラムを利用し、[[API]]を公開し対応している証券会社等を通して注文する場合が多く、今後移行していくと思われる。24時間取引が行なわれる[[外国為替証拠金取引]](FX)に関してはAPIを利用した市販プログラムの利用率が増えている。

株式37

米国では既に一定の評価を得ている投資法。最近では日本の書籍・雑誌の中で扱われて始めている。投資判断を投資家個人の経験や勘といった裁量的なものではなく「指標Xがn値になったら買う・売る」など過去の検証が可能な数値や指標などの組み合わせで作成、検証した売買ルールにより一貫して行う。(よって、必ずしもコンピュータなどで完全に自動売買されることを指すものではない)
主な長所は、感情的な投資判断を除去できること、作成した売買ルールを過去の株価データを用いて検証し評価する事ができること。主な短所は、過去に無い相場に遭遇したり、過度な最適化、売買ルールが一般に浸透すると、効果が低下したり逆に損失を出すことがあること。(実例として日本で利益のでるシステムが米国では損失をだす事がある。)

株式36

===連続ストップ時===特例として、ストップ高/ストップ安が3日連続で続いた場合には、値幅制限を2倍とする拡大措置がとられる。
以下の条件を全て満たした場合、上限値幅のみ2倍に拡大される。逆に、同様の条件で3日連続ストップ安の場合は、下限値幅のみ2倍に拡大される。
この拡大措置は、連続ストップ高/ストップ安が途切れた日、または出来高の条件を満たさなかった日の翌営業日から解除され、通常の値幅制限に戻される。
===[[ジャスダック証券取引所]]における新規上場銘柄===ジャスダック証券取引所では新規上場銘柄の値幅制限に関して、他の証券取引所と異なった扱いをしている。
上場日においては発行価格または売出し価格を基準値段として、また初値決定前の上場日翌日以降においては前日の最終気配値段を基準値段として、その4倍を上限、その1/4倍を下限として制限する。この制限は、当日の初値形成後もそのまま適用される。
===社会情勢の混乱===また、社会情勢の混乱などで大暴落が予想されるときには、値幅制限の縮小といった臨時措置がとられる事がある。最近では、[[アメリカ同時多発テロ事件]]が発生した翌日、東証の値幅制限が通常の2分の1に縮小された。
== 制限値幅一覧 ==[[呼び値]]単位の切り上げによって、制限値幅は規定された金額よりわずかに大きくなる場合がある。

株式35

値幅制限は、[[証券取引所]]の目的の一つである適正な価格の形成と、不測の損害からの投資家保護という目的から制定されている。
前営業日の[[終値]](特別気配のまま引けた場合は最終気配値)を基準株価とし、この基準株価から変動できる上下の範囲を価格帯ごとに定めている([[値幅制限#制限値幅一覧下の表]]を参照)。
日本の証券取引所では全て値幅制限を採用しているが、[[JASDAQ]]のマーケットメイク銘柄に限り、値幅制限が適用されない。これは、マーケットメイカーが適切な気配値を提示する前提のシステムだからである。値幅制限に代わり、30%以上の株価変動があった場合に15分間の取引停止となる'''サーキットブレイク'''という制度が設けられているが、これはあくまで相場の沈静化を促す手段であり、値幅制限ではない。(サーキットブレイクの発動条件は相場の情勢により例えば15%に縮小されるなど変更される場合がある)。従ってマーケットメイク銘柄の売買においては注意が必要である。
また、正式な取引所ではない[[グリーンシート]]においても気配値を提示するスタイルであることからマーケットメイク同様に値幅制限が存在しない。

株式34

日本の株式市場における株価の決定方式は大きく二つに分けることができる。一つはオークション方式といい、売買当事者が希望する価格と数量を[[証券取引所]]に告げることにより、証券取引所側で約定を行うもので、日本では一般に使用されている決定方式である。もう一つは[[マーケットメイク]]方式といい、[[マーケットメイカー]]となった証券会社が、確実に成立する気配値を出して売り方と買い方を募るもので、日本ではごく一部の[[銘柄]]において採用されている方式である。
株価の変動を把握するために作成する図のことを[[罫線表]](チャート)と呼び、その主なものとしては[[ローソク足]]や[[一目均衡表]]などが挙げられる。また、個別の銘柄の株価ではなく、特定の市場全体の動向を把握するために複数の株価を元に算出した値が[[株価指数]]であり、[[東証株価指数]](TOPIX)や[[日経平均株価]]、[[毎日新聞]]による[[日本株30]]などが有名である。

株式33

'''株価'''('''かぶか''')とは[[株式市場]]における[[株式]]の価格のことという認識が強いが、正しくは「'''[[株式市場]]において、目的の[[株式]]に対して直近に約定があった値段'''」のことである。一方的に売りまたは買いの注文が多く、''[[約定]]に至らない''値段のことを''気配値''(けはいね)という。
特に、一日の最初に取引された株価は'''始値'''、最後に取引された株価は'''終値'''といい、[[立会時間]]中で最も高い株価を'''高値'''、最も安い株価を'''安値'''と呼ぶ。これらの四つの値を合わせて'''四本値'''と呼び、一日の株価の変動を見るための重要な値とみなされている。また、[[証券取引所]]内で売買取引をする際の株価を[[呼び値]]とも表現する。
株価は市場の原理に従って変動するが、あまりにも急速な変動は投資家が不測の損害を被ると考えられ、一日に変動できる株価は一定の範囲に制限されている。この制限が[[値幅制限]]で、株価が[[値幅制限]]の限界まで急騰・暴落することをそれぞれ[[値幅制限ストップ高]]・[[値幅制限ストップ安]]という(ただし、株式が上場された初日において、始値が決定されるまでの間には[[値幅制限]]がない)。また、株価の変動は、時々の株価によって決まる[[呼び値単位]]を最小単位として変動する。

株式43

通常、一単元は会社の株券発行単位とリンクするため1,000株、500株、200株、100株、50株、20株、10株といった定めをしている上場会社が多い。
== 単元未満株式買増制度 ==単元株制度を導入している会社では、単元株未満株主による買増請求制度(所有の単元未満株式と併せて1単元となる数の株式を会社に買増請求することを可能にする制度;[[b:会社法第194条194条]])を定めることが可能である。単元未満株式買増制度を採用している会社の単元未満株主が行使できるこうした権利を会社法上では「単元未満株式売渡請求」権と称しているが、これは株主を主体としてみたときに会社が自己株式を売渡すことを請求することができると言う意味であり、会社が株主に対して株式の売渡を請求するものではない(会社がそのような請求ができるのは[[非公開会社]]株式が相続された場合や[[b:会社法第108条108条]]により発行された[[取得条項付き株式]]について生じる場合など限定的である)。
== 上場会社の表示株価と取引株価の誤解 ==日本の上場会社の株式を売買する場合に一般に相場で表示される[[株価]]で売買できるのは一部の単元株制度非採用会社であり、通常は取引所'''表示株価'''に'''単元株数'''を乗じた額が実際の'''取引株価'''となる。この点は株式市場で一般投資家の誤認を生じさせる可能性が高く株式投資解説書などに頻繁に注意として表示されているが、[[証券取引所]]は旧商法が単元株制度を過渡的制度として捉えていた点を重視していることや表示株価と取引株価が違うのは商習慣であることなどから、株価の二重表示について特段の措置を取っておらず、会社法で単元株制度が本則化された後もこの姿勢に変化はない。日本の上場会社は歴史の古い会社も多く、したがって各会社の単元株数もさまざまであるため表示株価と取引株価の換算は一般的には容易ではないことから「貯蓄から投資へ」の政策にあわせて改善することが望まれている。

株式42

=== 単元株数の調べ方 ===単元株数は会社の登記事項であり[[商業登記商業登記簿]]に記載されるため、会社の商業登記簿の閲覧により誰でも調べることが可能である。また、上場会社にの単元株数については新聞紙上の株式欄に単元株数別に銘柄にマーキングがされていることから、容易に調べることができる。また、上場会社のウェブ上で[[IR]](投資家情報)サイトに単元数が表示されている場合もある。ただし、新興企業などは単元株制度を採用していないことも多くあり、全ての会社が単元株数を決めているわけではないことには留意する必要がある。
[[2008年]][[1月1日]]現在で、1,000株を超える単元の定めをしている上場会社は、1単元2,000株の[[近畿日本鉄道近鉄]]の[[関連会社]]である[[きんえい]]のみである。同社は旧商法典の認めた単元株数を経過措置によって継承してきたもので例外と言える。なお、かつて1単元が3,000株であった[[東海観光]]は「[[時価総額]]に比べて発行済株式総数が多すぎるために、今般、当社株式を併合して発行済株式総数の適正化を図り、株主・投資家の方にとって1株あたりの諸指標や株価が、当社の状況に即してよりわかりやすく表示されることを目的」として[[2007年]][[6月1日]]をもって[[株式併合]]により1単元が1,000株となった。

株式27

====株券の記載事項====株券の番号、発行年月日、株数、株主の氏名、[[取締役]]の[[署名]]、会社の[[商号]]、会社の成立年月日、株式の内容(普通株式か、種類株式であるか)、などを記載することが要求される。
====株券喪失登録制度====商法施行来、株券を紛失または盗取された株主は他の有価証券の権利者と同様、[[非訟事件手続法]]に定められた公示催告手続の下、[[除権判決]]により権利の回復を図らざるをえなかったが、[[善意取得]]を阻止できないなどその実効性が薄かったため、[[2002年]](平成14年)改正商法において、[[株券失効制度]]が導入された。しかしながら、株券失効制度によっても、(1)株主が確定的に権利を回復するまで1年を要する (2)株券の移転による善意取得を阻止することが困難である、等の不備は、株式の譲渡を株券による限り回避しえず、抜本的な解決策が求められた。[[2005年]]に成立した[[会社法]]においては'''株券喪失登録簿制度'''が新たに導入されている([[b:会社法第221条221条]]~[[b:会社法第232条232条]])。

株式23

==会社法での株券=====株券の発行===株券発行会社は、株式を発行した日以後遅滞なく、当該株式に係る株券を発行しなければならない([[b:会社法第215条215条]]1項)、また、株式の併合、分割をしたときは、その効力を生ずる日以後遅滞なく、併合、分割した株式に係る株券を発行しなければならない(215条2項3項)。
[[公開会社でない会社公開会社でない]]株券発行会社は、株主から請求がある時までは、これらの規定の株券を発行しないことができる(215条4項)。
===株式の譲渡===株主権の移転(株式の譲渡)は株券の交付のみにより、株券の[[占有]]者は適法の所持人と[[推定]]される([[b:会社法第131条131条]]第2項)。会社は、株券を提示され名義書き換えを求められた場合、正当な理由のない限り、これを拒否することはできない。また、株券を紛失または盗取され、それが第三者に[[善意取得]]される可能性があり(旧商法229条)、善意取得されると、株主名簿の記載有無にかかわらず当該株券記載の権利を失うこととなる。即ち、株券は、有価証券法理の支配する証券流通の領域では完全な[[無記名証券]]

株式22

==実体としての株券==株券の作成方法としては、証券印刷会社に委託して作成する方法と、市販の株券用紙に[[チェックライター]]等で株数その他の必要的記載事項を記載する方法がある。大企業では前者の方法を採るが、小さな企業ではコスト面から後者を選択することも多い。さらに、実際は株券不所持制度を利用し、実体としての株券を発行しないことがほとんどである。また、株式の譲渡を定款で制限しているような会社については違法を承知で株券自体を発行しないこともあったといわれる。
[[証券取引所]]において株式が取引される、即ち[[上場]]の条件として、偽造変造防止の観点から、発行される株券(但し、証券取引所における流通単位である1株券または1[[単元株]]券のみ)が、各証券取引所において十分な管理組織を有していると確認された印刷会社において印刷され、かつ各取引所において定める様式に適合する株券(適合株券)であることを要する。そのため、例えば[[東京証券取引所]]においては、[[大日本印刷]](株)、[[凸版印刷]](株)、[[共同印刷]](株)、[[プロネクサス]](株)、[[瀬味証券印刷]](株)、[[昌栄印刷]](株)、[[図書印刷]](株)、[[サンメッセ]](株)及び[[国立印刷局]]とされるように、高度な印刷技術と厳しい管理体制を有する一部の印刷会社においてのみ、上場株券の印刷が可能となっている。

株式32

ストック・オプション会計の難点は、公正価値の測定にある。ストック・オプションはコール・オプションであるため、ブラックショールズ理論の応用がよく知られている。しかし、この理論は権利行使が満期時のみにできる形式のオプションを評価するために開発された。ストック・オプションの権利は、いつでも行使できるアメリカン形式である。このため、金融工学では格子モデルを使うのが一般的である。ウエイリー・モデルは格子モデルを正確かつ効率よく近似計算するものである。これには専門のソフトがあり、例えば、村中健一郎著「ストック・オプション公正価値測定の実務~現場ですぐに使えるストック・オプション計算ソフト付き」(ダイヤモンド社・2007年)にはエクセル(Windows)で公正価値測定ができる計算ソフトが付いている。入力する基礎数値は、1.株価、2.権利行使価格、3.ボラティリティ、4.利子率、5.配当率、6.残存期間となっている。

株式31

==企業の会計処理==昨今、話題となっているのがストックオプションの費用化、という会計処理である。これは従来、取締役、従業員にストックオプションを無償給付した際にオフバランスされていたものを、オンバランスしようという変更である。この会計処理の変更には、[[原価即事実説]]、[[原価即価値説]]という二つの相対する考え方が根底にある。
==税務上の取り扱い==国内企業が国内の従業員などに与えているストックオプションは、原則として「[[給与所得]]とする」と税法上定められている。
これに対し、外資系企業の日本法人の従業員などに与えたストックオプションの行使で得られた利益にかかる[[税金]]については、対象となる外資系企業(親会社)と直接の雇用関係がないことから、[[1998年]]分までは、税額の低い「[[一時所得]]」として処理されていたが、その後、国税当局が[[給与所得]]として申告するよう統一指導を始めたため、課税区分をめぐり約100件の訴訟が係争中であるが、2005年1月25日、最高裁は「[[給与所得]]に該当する」との初めての判断を下した。

株式30

本来は[[新株予約権]]と同義であるが、カタカナでストックオプションと書く場合には、Employee Stock Optionsをさすものとして、以下の意味で用いられることが多い。
'''ストックオプション'''とは、[[会社]]([[企業]])の役員や従業員が、一定期間内に、あらかじめ決められた価格で、所属する会社から自社[[株式]]を購入できる権利をいう。
[[株価]]が上がれば上がるほど、社員や役員が得られる利益も大きくなるため、業績に貢献した役員らのボーナス([[賞与]])として利用する企業が多い。
[[1997年]]、[[商法]]改正により日本企業への導入が全面解禁され、外資系企業の子会社日本法人等を中心に、親会社の株式を対象としての導入が相次いだ。
==導入のメリット==ストックオプション制度には、賞与を現金で支払う場合に比べて、以下のようなメリットがある。*手元に現金がある必要がない。このため、財務の余裕がなくても人材を集められる。*株価に基づく報酬体系である。このため、指標が明確であり、また会社(株主)の目標と従業員の目標の間にズレが生じない。*株価が上昇基調にある限り、従業員の忠誠心やモラルの向上が期待できる。*税務上のメリット

株式29

なお、未公開株の売買の場を[[証券会社]]の業界団体である[[日本証券業協会]]が、[[1997年]]に[[グリーンシート]]市場を作って提供しているが、グリーンシート市場以外の未公開株の扱いは、原則として行っていない。
証券取引法上、未公開株の購入は、当事者間の売買を除くと、証券会社を介すことが必要となる。ただし、[[匿名組合]]投資で未公開株式を購入することは事実上可能である(ただし、株券の交付を受けることは出来ない)。
==事件==企業の株式が、新規に証券取引所に公開される場合、直前に未公開株を一般に向けて販売(売り出し)するが、公開直後には販売価格よりも[[市場価格]]が上回ることが多いため、絶好の利ざや稼ぎとなる。
[[リクルート事件]]の場合、リクルートコスモス(現 [[コスモスイニシア]])社の公開前の未公開株が、[[賄賂]]として利用されたこともある。このため、将来の株式公開をにらんだ、未公開株の販売や投資などといった[[詐欺]]行為が、2004年頃から問題になっている。

株式28

==非上場企業の株式==[[証券取引所]]に[[上場]]している[[企業]]の[[株式]]は、基本的に[[株式公開]]しているため、証券取引所で(一般には[[証券会社]]を窓口として)売買することができる。これに対して、上場していない企業の株は株式公開していない。その株式公開していない株式を'''未公開株'''と呼ぶ。
未公開株は、創業者やその親族、取引先、[[ベンチャーキャピタル]]といったところが多く保有している。株式公開していないので証券取引所で売買することはできないが、譲渡価格など条件面で合意さえすれば、当事者間で売買は可能である。[[ストックオプション]]により子会社や社員に株を譲渡する企業もある。
証券取引所で売買できない以上、証券会社でも取り扱うことは基本的に出来ないが、ごく一部の証券会社では未公開株も取り扱っているところがあり、[[株式新聞]]など専門紙でも実勢価格が掲載されることがある。

株式26

2005年に成立した会社法においては、すべての株式会社につき、定款で株券を発行する旨の記載がない限り、株券を発行しなくてもよいこととされた([[b:会社法第214条214条]])。株券を発行すると定款で定めている株式会社のことを特に'''[[株券発行会社]]'''とよぶ。ただし、経過措置として、会社法施行時(2006年5月1日)に株券不発行の定めをしていない会社については、その会社の定款において株券を発行する旨の定めがあるものとみなされた(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律76条4項)。
===株券発行会社=======有価証券としての株券====株券を証券という観点から見た場合、「物的証券」・「利潤証券」・「支配証券」という三つの異なる側面を持つと言える。;物的証券 :株主の持つ[[残余財産分配請求権]]に着目した場合、株式は会社の[[資産]]を分割したものであるから物的証券であると考えられる。;利潤証券 :株主の持つ[[利益配当請求権]]に着目した場合、株式は配当という利潤を生む証券であるから利潤証券であると考えられる。このため[[理論株価]]には、将来にわたって期待できる(利率を考慮した)配当の総額が含まれる。;支配証券 :株主の持つ[[経営参加権]]に着目した場合、株式は[[議決権]]を行使して会社を支配するものであるから支配証券であると考えられる。

株式25

===株券不発行制度と株券不発行の原則化===[[2003年]][[9月]]、法制審議会で全面的な「株券不発行制度」を導入するための商法等の改正案の要綱がまとめられた。[[2004年]][[6月]]には、「株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律」(この改正法の中において「商法」「社債等の振替に関する法律」(改正後の名称は「社債、株式等の振替に関する法律」)などの法律が改正された)の改正が成立し、[[証券取引所]]に[[上場]]している株式会社については、2009年6月までに一斉に「'''株券不発行制度'''」に移行することとなった([[株券の電子化]]と呼ばれる。現時点において、2009年1月を予定)。
「ほふり」((株)証券保管振替機構)に株券が預託され、登録された株券についてはそのまま新しい振替制度に移行される。仮に、株券を「ほふり」に預託しなくとも株主名簿において名義が本人名義に書き換えられていれば権利を失うことはないが、株券が手元にあり、かつ株主名簿の書換えをしないまま2009年1月を迎えると、株券に係る権利を失うおそれがあるので注意が必要である。

株式24

===株主名簿と保管振替制度===株券を購入したり譲り受けたりしただけでは、株主権を行使するにおいて発行会社に対抗することはできない。名義書換の手続きを行い、発行会社の[[株主名簿]]に氏名、住所、持ち株数を記載する必要がある。この手続きを忘れていた株式は[[失念株]]と呼ばれ、旧株主と新株主の間で、新たに割り当てわれた新株の所有権等をめぐってトラブルになることがある。ただし[[証券会社]]を通じて購入した場合には、通常、[[証券保管振替制度保護預かり制度]]および[[証券保管振替制度株券保管振替制度]]を利用することになり、株式を購入した段階で自動的に[[株主名簿]]に購入者の氏名等が記載される。株券保管振替制度のために作られた[[株式会社]][[証券保管振替制度証券保管振替機構]](通称:ほふり)は、この制度に沿って株券を一括して管理する機構である。

株式21

== 証券取引所への上場 ==転換社債型新株予約権付社債は各[[証券取引所]]に[[上場]]されているものも多い。証券取引所に上場することのメリットとして以下が挙げられる。
*[[流動性 (経済学)流動性]]が確保できること*[[私募]]・海外発行と違い、国内一般投資家に対する不公平感がないこと*決済手続きが簡便になること
なお、いわゆるMSCBのうち、修正が6か月に満たない間隔で行われ、さらに下方修正転換価格が参照価格を下回って決定されうるものは、[[東京証券取引所]]においては上場を認められていない。
==会計上の扱い==会計上では、転換社債型新株予約権付社債は、転換前は貸借対照表上の[[負債]]に計上される。社債が株式に転換された場合、転換された社債の分負債が減少し、株式に転換された分[[純資産]]が増える。

株式20

転換社債型新株予約権付社債は、平成14年以前は単に「転換社債」と呼ばれ、「[[新株予約権付社債ワラント債]]」と区別されていたが、[[新株予約権]]に関する規定を明確化した[[平成14年]][[4月1日]]の改正[[商法]]の施行により、従来の転換社債と従来のワラント債とは債券種別が同一となり、同じ「新株予約権付社債」という区分の中で債券の内容が異なるものであると定義された。両者を区別するときは、従来の転換社債は'''転換社債型新株予約権付社債'''、従来のワラント債は'''[[新株予約権付社債]]'''と呼ばれることになった。
新株予約権を行使された発行会社は、基本的には新株を発行して行使者に交付するが、平成13年10月1日施行の改正商法により[[金庫株]]を交付する事もできるようになった。
== リスク ==株式と[[債券]]の利点を兼ね備えた転換社債型新株予約権付社債は、[[債権者]]に利益だけをもたらす物ではない。発行元は自社株価の上昇を見越して転換社債型新株予約権付社債を発行し、後日株式で[[負債]]を支払う事で、[[キャッシュ・フロー]]の合理化を目論む。しかしそのあてが外れて株価が下落した場合は、負債を現金で支払わざるを得なくなり、結果として[[資金繰り]]が悪化する。[[ヤオハン]]のように破綻・倒産した企業もある。

株式19

== 概要 ==転換社債型新株予約権付社債は、[[普通社債]]とは異なり、[[社債]]を転換価額(事前に決められた株式への転換の価額)で[[株式]]に転換することができる点に特徴がある。なお、途中で転換価額が変更される条項のある商品もある。投資家から見れば、転換価額よりも[[株価]]が上昇すれば、株式に転換、売却する事で利益を得ることができる。逆に転換価額よりも株価が下回れば、転換せずに満期日まで待つ([[満期償還]])ことで社債としての利息を受け取り続けることもできる。このように普通社債に比べて投資家に有利な条件を持つといえるため、発行体は通常は[[利子金利]]を低めに設定することができる。
転換価額を株価の変動に応じて上下に修正できる条項のあるものは、一般に'''MSCB'''(moving strike convertible bond '''転換価格修正条項付転換社債'''あるいは'''下方修正条項付転換社債''')と呼ばれている。ただし[[会社法]]上は「転換社債型新株予約権付社債」と区別はされていない。アメリカ合衆国では、MSCBのうち転換価格の下方修正に下限が定められていないか、あるいは下限があったとしても非常に低いものを俗に'''Death Spiral Convertible Bond'''と称することがある。下方修正条項には、転換価額が株価から一定割合以上乖離したときに発動されるものや、特定日の株価を元に転換価額を修正するものなどがある。

株式18

;新株予約権の性質#株式や社債とは別個独立に発行可能。#募集新株予約権の割当てを受けた者は割当日に新株予約権者になる。(募集株式の発行の場合は払込期日に株主の地位を得る。)#募集新株予約権の割当てを受けたにも関わらず払込期日までに払込みをしなかった者は失権する。#株式と同じく譲渡制限を附す事が出来る。(但し株式の場合とは違い定款に定める必要はく、発行決議時にそう定めていればよい。)#株式と同様に取得条項を附す事が出来る。(但し取得請求権を附す事が出来るとする規定は存在しない。)#新株予約権の行使より得られる株式の総数は、発行可能株式総数から発行済株式総数を控除した数を超えてはならない。(但し行使期間の初日を迎えてない新株予約権にはこの規定は適用されない)* 新株予約権の内容一般につき、[[b:会社法第236条236条]]を参照。* 共有に属する新株予約権の権利行使の方法につき、[[b:会社法第237条237条]]を参照。

株式17

に制限され用語自体は破棄された。これにより、募集株式の発行の際に第三者が有利発行を受ける権利については名称そのものが存在しない事になった。更に、平成13年改正までの新株予約権は[[新株予約権付社債新株引受権付社債]]のように社債に附され、分離する事が不可能であったがこの改正により単独発行が認められるようになった。そのため'''新株予約権'''のみを売買することが可能となった。しかし[[転換社債型新株予約権付社債転換社債型新株予約権付社債(CB)]]の様に新株予約権付社債の形式で発行された新株予約権はなお従前の通り、分離処分は出来ず[[社債]]部分の金額をもって[[株式]]に転換する権利を持つとされた。上記の様な概念の整理に至ったのは、平成7年の商法特例法制定によって特定の会社に先行導入されたストックオプション制度(それ以前に会社実務においては擬似ストックオプションという制度が普及していた)が平成9年の商法改正により本格的に導入された事とも関連する。平成9年当初のストックオプション制度は自己株式方式と株式引受権方式とがあったが新株引受権が定款規定が必要であったり株主総会で導入に付き、正当な理由があることを述べなければならなかったりと導入の障害になる規定が多かったため、平成13年商法改正で新株予約権の制度を創設し、ストックオプションとは、株主以外の者への新株予約権の無償での有利発行であると整理して、自己株式方式と株式引受権方式によるストックオプションの規定を削除した。

株式16

== 用途== 新株予約権制度は以下の用途で用いられることが多い。#日本的な意味における[[ストックオプション]]としてのインセンティブ報酬#資金調達の手段#負債の担保#[[企業買収買収防衛策]]の一手段(いわゆるポイズンピル)新株予約権の機能は様々であるが大別すると上記四種になる。1は本来制度創設時に予定されていた用途である。2は、有償で新株予約権を発行した場合、①株式発行とは違い、発行しても行使されるまでは資本金の額が増加しない、②金融機関からの融資とは違い、負債が増えない、と言う性質を利用した用途である。直接金融(金融機関を介さない資金調達)の方法として利用される。3の具体例は、[[新株予約権付社債]]・[[転換社債型新株予約権付社債転換社債型新株予約権付社債(CB)]]等である。4は、M&Aの項を参照。== 概念の沿革 ==従来、新株予約権は、新株引受権と呼ばれていた。しかし、この語は「新株発行の際に優先的に新株を引き受ける権利」と「会社に対して行使することにより有償で新株又は自己株式の交付を受けられる権利」の両方の意味を持っていた。そのため、平成13年商法改正時にこの概念を分離し、前者を新株引受権、後者を新株予約権と定義した。また、新株引受権は、行使をする者を限定しない概念であったが会社法制定に伴い新株引受権の行使権者は「株主」

株式15

=== 取得条項規定 ===全部の株式の内容について付す事の出来る取得条項とほぼ同じであるが、取得対価として、その会社の別の種類株式を設定できるという部分が異なる。理由は上記の取得請求権と同様である。取得請求権は、取得に関してアクションを起こすのが「株主」であるのに対し、取得条項は、取得についてアクションを起こすのが「会社」である事に注意が必要である。また、前節でも述べた通り、対価の柔軟性が図られている為従来の原則であった金銭以外に、他の株式、社債、新株予約権等も取得対価として交付が可能である。詳述は取得条項の項を参照。
=== 全部取得条項規定 ==={{節stub}}
=== 拒否権規定 ===この規定も上記の譲渡制限と同じく従来(会社法以前)は株式の種類とは位置づけられてなかったが、会社法から種類株式の一種とされた。
=== 役員選任権規定 ===
== 種類株式の設定 ==定款に定めないとその効力を有しないため、定款変更が必要となり株主総会で特別決議が必要となる。しかし、種類株式発行会社が任意の発行済種類株式に新たに別の権利内容の規定を設ける場合は、当該種類株主による種類株主総会特別決議を要し、設定する規定によっては、種類株主総会の特殊決議や該当する種類株主全員の同意が必要になる場合もある。

株式14

[[会社法]]制定以前までは株式の種類とは位置づけられていなかったが、会社法から種類の株式と位置づけられた。今まで、種類の株式に譲渡制限をつける事ができるか否かは疑義があったがこれにより、'''株式の一部に譲渡制限をつける事ができる事が明らかとなった'''。なお、'''[[非公開会社]]では'''元々強固な信頼関係で株主同士が結び付いているものとされる為、'''議決権制限株式の発行枠は撤廃された。'''これは、[[特例有限会社旧有限会社]]と非公開会社が実質は同じものである事から、有限会社制度の廃止に伴って有限会社に認められていた制度が、非公開会社に引き継がれたものであると解される。
譲渡の承認をするには、株主総会又は、取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めを設けることが出来る([[b:会社法第139条139条]])。
=== 取得請求権規定 ===全部の株式の内容について付す事の出来る[[取得請求権付株式取得請求権]]とほぼ同じであるが、取得対価として、その会社の別の種類株式を設定できるという部分が異なる。このような取得対価の設定が全部の株式に附す取得請求権規定に設定出来ないのは、取得対価としての「別の種類株式」が観念出来ないからである。ちなみに、取得対価として設定できるものに制限は無いものと解されており、現金、[[新株予約権]]、[[社債]]等様々なものを設定する事が可能である。この規定を株式発行後に設定する場合、[[定款]]変更である事から[[特別決議]]を要する事になる。また、新株予約権等と異なり、取得請求権のみを他人に譲渡することはできない事とされている。なお、平成17年商法改正以前の'''''転換予約権付株式'''''や株主の請求で行える'''''償還株式'''''は、取得請求権付株式の一種と言うになる。

株式13

=== 残余財産の分配規定 ===株式に付される規定の一種で、会社の清算をした後、残った残余財産の分配に関する地位の優劣を定めたもの。これに関しても、優先株式や劣後株式と呼ばれる為、'''何に対して優先又は劣後なのか注意が必要である。'''
=== 議決権制限規定 ===株式に付される規定の一種で株主総会での議決権の、全部又は一部を制限する事を内容とするもの。無議決権株式も可能であるが、その場合でも、その株主は種類株主総会では議決権を行使する事が出来ると解されている。通常は、配当に対して優先株式である事の代償として、議決権制限がつけられる。こうする事で、株式の流通性を高めると同時に、買収防衛策にもなるからである。
ちなみに'''公開会社'''においては議決権制限株式が発行済株式総数の二分の一を超えたとき'''は'''直ちに'''発行済株式総数の'''二分の一以下にする措置を取らなければならない'''とされている([[b:会社法第115条115条]])。しかし[[非公開会社]]においては、旧有限会社と同一視する傾向から、このような規制はなされていない。

株式12

*新株予約権付株式*:会社に新株を発行させる、または会社の自己株式を移転させる権利付きの株式の事。新株予約権付株式は、従来認められていなかったが、新株引受に関する規定が緩和され、平成14年の商法改正以後この名で導入された。詳しくは[[新株予約権]]の項を参照。会社法上、新株予約権は株式の内容とはされておらず、取得請求権や取得条項と違い、新株予約権のみの発行も可能であるし、原則、株式との分離処分も可能である。
== 種類株式の内容の具体例 ==株式にくっつける事の出来る''権利の内容''は、108条1項各号に掲げる事項で法律によって限定的に定められているが、会社法108条1項各号に掲げる事項を自由に組み合わせて、その会社独自の種類株式を発行する事が出来る。しかし、108条1項9号、いわゆる役員選任権規定だけは、[[取締役会設置会社]]及び[[公開会社]]はその株式に付す事が出来ない様になっている。以下の見出しは108条1項各号の条文の順に記載している。
=== 剰余金の配当規定 ===株式に付される規定の一種で剰余金の配当に関する地位の優劣を定めたもの。詳しくは[[優先株式]]の項を参照。この規定により、配当において他の株式より優越的な地位が認められる株式が、いわゆる'''優先株式'''と呼ばれる。ちなみに、標準的な地位に置かれるものが'''普通株式'''、劣後的な地位に置かれるものを'''劣後(後配)株式'''と呼ばれる。

株式11

*普通株式*:剰余金及び残余財産の配当(配分)に関して標準的な地位が与えられた株式。実務上での詳細は[[優先株式]]の項を参照。会社法上の規制等については、下記の[[#剰余金の配当規定剰余金の配当]]及び[[#残余財産の分配規定残余財産の分配]]の規定参照。
*混合株式*:剰余金の配当に関しては優先株式であるが、残余財産の分配で(劣後)後配株式であるような、ある規定に対しては他の株式よりも優越し、別の規定に関しては他の株式よりも劣後するような株式を'''混合株式'''と呼ぶ。旧商法下と同様に,法定の手続を踏む事で発行する事ができる。
*償還株式*:旧商法下で用いられていた分類で、'''会社や株主の請求'''など特定の事由が起こる事を条件に会社が株式と'''現金を交換'''する旨の規定のある株式。会社法では取得条項及び取得請求権規定に吸収。会社法での解釈では、償還株式は「取得請求権付株式または取得条項付株式で定款で取得対価を現金に定めたもの」となる。
*転換予約権付株式(転換株式)*:旧商法下にあった分類で、'''株主の請求'''で、当該株式を会社の発行する'''別種の株式と交換'''できる旨の規定がある株式。会社法で[[#取得請求権規定取得請求権の規定]]に吸収された。会社法での解釈では、転換予約権付株式は「取得請求権付株式で定款で取得事由を株主の取得対価を当該会社の発行する他の種類株式に定めたもの」となる。

株式10

== 実務上の種類株式の呼称例 ==以下は実務で使われる種類株式の呼称例である。しかし会社法の制定に伴い、法律上はそのような呼称がなくなったものもある。
*優先株式*:剰余金及び残余財産の配当(配分)に関する地位が他の株式よりも優越する株式のこと。実務上での詳細は[[優先株式]]の項を参照。会社法上の規制等については、下記の[[#剰余金の配当規定剰余金の配当]]及び[[#残余財産の分配規定残余財産の分配]]の規定参照。
*劣後株式*:後配株式とも呼ばれる。剰余金及び残余財産の配当(配分)に関する地位が他の株式よりも劣る株式のこと。実務上での詳細は[[優先株式]]の項を参照。会社法上の規制等については、下記の[[#剰余金の配当規定剰余金の配当]]及び[[#残余財産の分配規定残余財産の分配]]の

株式9

また、現在上場株式全体の約80%が、「[[証券保管振替機構]](ほふり)」に株券を預託したまま行われており、株券自体をやりとりすることは少ない。さらに、2009年1月を目標に[[株券電子化]]が予定されている。株券電子化が実現されれば、それ以降上場株式は基本的に、コンピューター上の登録データでの管理に移行される。
== 株式の種類 ==株主の権利の違いや記載内容の違いにより以下のような種類がある。
=== 株主の権利の違いによる分類 ===[[普通株式]]は、一つ(一単元)の株式に与えられる株主の権利は平等([[株主平等の原則]])である。これに対し、配当や議決権などの権利について意図的に差をつけた株式を発行する場合があり、これを普通株式と区別して[[優先株式]]あるいは[[種類株式]]と呼ぶ。

株式8

=== 株価 ===株式の売買取引の際に付けられる価格が[[株価]]である。基本的には売り手と買い手双方の合意があれば自由に決定できるが、上場株式においては証券取引所での直近の約定値を株価として時価の評価基準にすることが多い。これら株式の売買の際の株価変動によって得た利益を[[キャピタルゲイン]]と呼び、価格変動によって被った損失のことを[[キャピタルロス]]と呼ぶ。なお、配当などによる利益は[[インカムゲイン]]と呼び、キャピタルゲインとは区別される。
=== 株券 ===株式を表章する証券のことを[[株券]]と呼ぶ。従来は株式の譲渡性を確保するための必須の存在であったが、定款において譲渡制限が定められているような中小企業においては発行されないことも多く、大企業においても発行コストや善意取得の危険など管理コストの問題もあるため、株券不発行制度が導入された。日本の[[会社法]]においては、株券は発行しないことがむしろ原則とすらされている。

株式7

== 仕組み ==株式会社は、事業で得た[[利益]]の一部を出資比率に応じて[[配当]]という形で[[株主]]に分配する。事業が[[赤字]]の場合には無配になる可能性がある。また、[[廃業]]したり、経営が破綻して[[倒産]]した場合には株式の価値がゼロになることもある。しかし、株主の責任は[[有限責任]]であり、会社に多額の[[債務]]が残っても株主は出資額以上の損失を被ることはない。一方で、会社を解散した場合、債務をすべて履行してなお資産が残れば、その資産の所有権は株主にあり、出資比率に応じて分配する。
また、出資することで得た株式は株券を発行する会社においては[[有価証券]]である株券で表章され、特に譲渡制限を設けていない限り譲渡可能である。特に[[証券取引所]]に[[上場]]された株式は、相対取引や公開買付などを除くと、証券会社を介して証券取引所において売買取引されるのが通例である。これに対し公開されていない株式である[[未公開株]]は相対(あいたい)で取引される。

株式6

'''株式'''(かぶしき)とは、[[株式会社]]における社員権、[[持分]]のことである。通常の持分が[[社員]]の出資額などに応じて不均一な形態をとるのに対して、均一的な細分化された割合的な構成単位をとる点に特徴がある。そのため、株式会社が事業に必要な巨額の資金を調達する際に、資本を細分化し、小額の出資を多数の出資者から募ることが可能になる。また、株式会社におけるそれぞれの株主の出資の割合を知るためには単に所有する株式の数を調査すれば足りることになる。
なお、株式を表章する有価証券である[[株券]]の意味で使われることもある。
株式の発行は、社員の募集と資金調達という二つの性質を持つため、かつては前者の性質が重視されて[[株主総会]]の決議が必要とされていたが、現在では後者の性質が重視されるようになり、経営の機動性を確保するため、株主総会の[[授権資本制度授権]]の下で原則として[[取締役会]]の決議で発行することができるほか、株式の[[株式分割分割]]、消却なども[[会社法]]の規定の範囲内で自由にできるようになった。

株式5

==日本の店頭市場==なお日本の店頭市場は現在消滅している。これには以下のような経緯がある。
そもそも店頭市場とは取引所で扱わない証券の市場という意味である。日本では日本証券業協会が1963年以来運営してきた店頭登録銘柄制度がこれにあたる。店頭市場は証券会社間の相対取引が基本だが、店頭登録銘柄制度においては、1976年に発足した日本店頭証券(2001年にジャスダックに商号変更するとともに市場運営を日証協から受託)で、実質的に市場取引が行われていた。しかし店頭市場は、法律的には市場取引が行われている場所として長く認知されなかっただけでなく、機能としては取引所の基準を満たさない企業のための補完的市場の位置を与えられ、企業が成長するとともに取引所に企業が移る関係にあった。1998年の証券取引法改正では、店頭市場は店頭売買有価証券市場とされ、市場として取引所と対等の地位を与えられた。
しかし1999年以降、取引所側が相次いで新興企業向け市場を立ち上げると、その補完的機能においても取引所とまともに競合するようになった。そこで日証協では店頭市場の活性化のために、ジャスダック市場(店頭市場を2001年に改称)の取引所への転換を2003年に決定した。かくしてジャスダック市場は、2004年12月に[[ジャスダック証券取引所]]に改組され、それまで店頭銘柄とされていたものも、東京証券取引所など取引所の上場銘柄と同じく上場銘柄と呼ばれることになり、この結果、日本では店頭市場・店頭銘柄は消滅して現在に至っている。

株式4

取引所による市場の独占や様々な規制は、先進資本主義国で独占禁止法制の例外として容認されていたが、すでに述べたように機関投資家(具体的には年金、保険、さまざまなファンドなど)は、このような取引所の独占が果たして効率的な市場を実現しているかについて疑問を提出するようになった。このような不満を受ける形で、アメリカでは1970年代にまたイギリスでは1980年代に、取引所の独占を否定する市場改革が実現した。このうち1986年にイギリスで行われた改革は「ビッグバン」(参照[[ビッグバン (金融市場)]])と呼ばれるもの。日本で1997年から1998年にかけて行われた市場改革は、このイギリスの改革をもじって「日本版ビッグバン」(参照[[金融ビッグバン]])と呼ばれる。このような市場改革がPTSの登場をもたらし、市場改革のスピードをさらに上げることを既存の取引所に迫っているのである。

株式3

このような取引所の規制的なあり方は、自然発生的に市場の分裂fragmentationを生み出してきた。上場制度による制約は、上場されてない証券を店頭市場over-the-counter marketsが扱うことを生み出した。また会員制度は、非会員が場外市場curve marketsを作ることを妨げるものではなかった。他方で、市場の分裂は、売買注文を出す側からすれば、不便なことなので市場を統合するという合理化への圧力を生み出すものである。
このように市場は本質的に統合と分裂を繰り返す存在なのである。近年、この市場問題に新たな意味付けを与えているのは[[機関投資家]] institutional investorsの成長である。投資金額が巨大化している機関投資家は、市場に対して自らの要求を突きつけるようになっており、市場はこの機関投資家の要求への対応を迫られているのである。加えて機関投資家の要求に沿うように取引のスピード、匿名性、コストでの効率化などを実現した私設取引システムPTS:proprietary trading systems(なお伝統的取引所に対抗するシステムとしての側面が強調されるときはPTSと呼ばれるが、同じシステムについて高度な情報技術システムの側面を強調するときは電子取引システムECN:electronic communication networks と呼ばれることがある)の登場と成長は、既存の取引所に脅威となり、取引所の側の変革を促すように作用したのである。

株式2

==証券取引所の規制==様々な商品取引でも同じであるが、商品取引を容易にするためには同じ場所、同じ時間に取引を品物を持ち寄ることで、売買の成立は容易になる。品物が互いにわかっている定型化された取引の場合には、注文という情報を持ち寄るだけでも同じことが可能である。つまり市場の本質は売買についての注文情報が集まり、新たな価格情報などが生み出される場所ということになる。こうして一度「[[市場]]」が成立すると、市場に参加するものの利害を守るために、市場に入ることに入場料を取ったり、市場に入れるものを限定して会員制度あるいは組合員制度を取ることも見られる。
証券取引所で多く見られた規制は、会員制度(会員だけが取引所で取引資格がある)、上場制度(取引可能なものを上場されたものに限定する)、市場集中原則(会員に対して上場証券について取引所での売買を義務付ける)、固定取引手数料制度(会員に対して取引所で定めた固定取引手数料を徴収することを義務付ける)などである。これらの規制には、市場の機能を高める側面と、会員の利害を守る側面との両面があると考えられる。

株式1

'''証券市場'''(しょうけんしじょう)とは、[[金融市場]]の中で、[[有価証券]]([[株式]]、[[債券公社債]]など)の発行が行われる発行市場と、それが[[流通]]する流通市場との総称。[[証券取引所]]をさすこともある。
==発行市場と流通市場==英語では発行市場を一次市場primary market、流通市場を二次市場secondary marketという。これは新しく証券が登場する最初の場所が発行市場で、一度発行市場を通過した証券が転々と売買される場所が流通市場である、という意味である。
[[証券]]の社会的な機能としては、資金の調達機能や小口の資金を集めて大口の資金をつくりだす資産変換機能(資産の性格を変換する機能)が知られている。それが果たされているのは発行市場においてである。他方で発行市場が機能する上では、つまり証券の発行が成立する上では、流通市場が存在して証券の流動性(売買可能性)が確保されていることには大きな意味がある。流通市場が存在する証券の方が投資家にとっては流動性の確保が容易であり安心できるからである。

2008年3月21日金曜日

先物26

==影響==現物株式での日計り取引(デイトレード)は、先物の動きを見ながら注文を出していることが多い。従って、先物価格の変動が実際の株価指数(日経平均株価)に与える影響は少なくない。特に、先物は比較的少ない金額で大量の注文を出して約定させることができるため、大口の機関投資家であれば先物価格を瞬時に数十円程度動かすことは容易である。このことを利用した意図的な先物価格の操作(価格の釣り上げや売り崩し)は珍しくなく、それに従う形で日経平均株価がほぼ同じ動きを見せることがある。
== 日経225mini ==個人投資家でも気軽に参加できるよう、大阪証券取引所が2006年7月18日からスタートさせた新しい株価指数先物取引。上場は大阪証券取引所のみ。日経225先物取引の取引単位を10分の1にし、呼び値を5円にしたもの。ただし、限月は日経225先物取引の5つの限月のうち、近い方の2つしか採用されない。
この日経225miniと区別するため、miniではない本来の日経225先物の方を「ラージ」ということがある。

先物23

==取引の実際=====取引例===仮に、先物が18,000円、後述する必要最低証拠金が1枚あたり60万円の場合、口座に100万円を入金して先物を1枚買い建てたとする。この時の証拠金の余力は40万円である。:1) その日の取引終了後、先物価格が18,500円となっていれば、(18,500-18,000)×1,000=50万円 の含み益が生じ、証拠金の余力は90万円となる。この場合は、翌日にさらに1枚追加で買い建てることも可能である。:2) その日の取引終了後、先物価格が17,500円となっていれば、(17,500-18,000)×1,000=-50万円 となって、50万円の含み損が発生する。この時、証拠金の余力は 40万円-50万円=-10万円 でマイナスとなってしまうため、建玉を保持したまま取引を継続するには、追加の証拠金(追証)を10万円納める必要がある。
このように建玉については、毎日、取引終了後に先物終値と建値との差額を計算し、含み益・含み損の額を更新する。これを「'''値洗い'''」という。
1) の場合、18,500円になった所で反対売買(この場合は返済売り)を行って決済すると50万円の利益が確定し、口座残高は150万円となる(ただし別途売買手数料がかかる)。決済後は建玉がない状態なので、拘束される証拠金は0円である。このように、証拠金とは玉を保持している間に一時的に拘束されるものである。
なお、上記の例では買いの場合を扱ったが、売りの場合は逆に株価指数が上がれば含み損となり、株価指数が下がれば含み益となる。

先物22

===SQ===満期日には、満期となった日経225先物(および日経225オプション)は、「[[特別清算指数]]」(Special Quotation、略して'''SQ''')という値によって決済されるので、この満期日のことを「SQ日」と呼ぶことが多い(満期日自体を指して「SQ」と呼ぶことも多い)。或る限月の先物が市場で取引されるのは、その限月のSQ日の前日までで、それまでに反対売買して清算されなかった玉は、SQ日に自動的に決済される。
SQ値は、日経平均株価構成銘柄のSQ日の寄付値(よりつきね)を元に算出される。取引開始後にすぐに寄らない銘柄は、寄った時点での株価を元に計算する。従って、そのような場合はSQ値は日経平均株価の始値とは異なってくる。
なお、オプションでは限月は1ヶ月刻みになっているので、毎月の第2金曜日がSQである。そのため、先物とオプションが同時にSQとなる3・6・9・12月のSQを、特に'''メジャーSQ'''と呼ぶことがある。

先物21

=== 値幅制限 ===相場の急変動から投資家を守るという名目で、先物価格自体に値幅制限が設けられている。日経平均株価の水準により、制限値幅は異なる。ちなみに、日経平均株価16,000円のときで上下3,000円である。
=== 限月取引 ===先物には期限がある。3月,6月,9月,12月の第二金曜日が満期日に設定されており、これらを'''限月(げんげつ)'''取引という。各限月は、例えば3月が満期日の場合'''「3月限」(さんがつぎり)'''などと呼ぶ。
市場では常に5つの限月が並行して取引されている。例えば2007年4月に取引されているのは、6月限・9月限・12月限・2008年3月限・2008年6月限の5つである。この例では、2007年6月の第2金曜日になると6月限の先物は満期日を迎えて取引されなくなり、新たに2008年9月限が上場される。このように、各限月は上場した日から1年3ヶ月存在し、3ヶ月ごとに満期日を迎えたものが取引されなくなって新たな限月のものが上場される。ある時点で市場に存在するのは常に5種類の限月である。
直近の限月が最も取引量が多く、これを'''期近物'''(きぢかもの)と呼ぶ。限月により価格は少しずつ異なるのが普通である。
期近物の満期日が到来する前に一旦精算(手仕舞い)し、同時に次の限月で同じポジションを組むことを'''ロールオーバー'''(繰り越し)という。ロールオーバーを行えば、事実上、満期日の制限なく長期に玉を保持し続けることができる。

先物20

=== 取引単位 ===日経225オプション取引と同じく指数の1,000倍単位。この最小取引単位を「1枚」という。
株価指数が18,000円の場合、1枚は指数の1,000倍の1,800万円分に相当する。但し、取引に際して1枚あたりこれだけの現金を用意する必要はなく、後述する証拠金(通常は数十万円)があればよい。
指数の10円の値動きは、現実にはその1,000倍の1万円の値動きとなり、建玉があれば実際にそれだけの含み益・含み損が発生する。
=== 呼値 ===呼値(よびね)は10円単位である。(海外市場では5円単位)
===建玉===成立した注文で、未決済のままで保持しているものを「建玉」(たてぎょく)、あるいは「玉」(ぎょく)という。
買い建玉(買い玉)をロング(L)、売り建玉(売り玉)をショート(S)と呼ぶことが多い。また、買い建玉を保持することをロング・ポジションを取る、売り建て玉を保持することをショート・ポジションを取る、などという。

先物19

=== 夕場取引(大証) ===2007年9月18日(火)より、株価指数先物およびオプションに、夕場取引(イブニング・セッション)が導入された。* 取引時間は 16:30~19:00 (注文受付は16:15から)。* '''夕場取引の取引日は、当日扱いではなく、翌営業日扱いとなる'''。例えば、9/18夕場の取引であれば、9/19扱いとなる。これは、そもそも先物・オプション市場が現物株式に対応したものであり、現物株式は後場で一日の取引を終了するため、取引日の区切りは後場終了時点に置かざるを得ないことによる。* 後場終了の時点で従来通り清算処理が行われ、営業日が変わって夕場取引に入ることになるので、'''取引日ベースでの一日の流れ'''は、::前営業日の夕場 → 当日の前場 → 当日の後場 → 清算:となる。* 値洗いは、夕場取引後に当日の日中取引の清算値で再度行われる。ただし夕場取引後の値洗いによって発生した証拠金不足は翌日分となるため、翌営業日の値動きによって証拠金不足が解消する場合もある。* 各限月の最終の取引は、SQ日の前営業日の日中取引となる。ただし、新たな限月の取引開始は、(SQ日前日の夕場からではなく)新規設定となるSQ日の日中取引からとなる。

先物18

===== 日中取引 =====* 前場(ぜんば) … 9:00~11:00* 後場(ごば) … 12:30~15:10:先物を株式のヘッジとして利用するための便宜から、株式市場終了後10分間だけ先物の取引が継続するようになっている。このため、半休日(大発会・大納会は株式市場は前場のみとなる)は、先物市場は11:10で取引終了となる。===== 夕場 =====* 夕場(ゆうば) … 16:30~19:00 ※夕場取引については次項を参照:半休日(大発会・大納会)には、夕場取引は行われない。
===== 取引日 =====* 前営業日の16:30(夕場開始)から営業日当日の16:00(日中取引が終了し、清算処理が終了するまで)が一取引日。営業日当日の夕場は、取引日では翌日扱いとなることに注意

先物17

== 制度 ===== 上場証券取引所 ===* [[大阪証券取引所]](大証):取引量は期近物が一日10万枚程度(2007年現在)で、流動性は非常に高い。* [[シカゴ・マーカンタイル取引所シカゴ商業取引所]](CME):現地時間の8:00~15:15(日本時間 23:00~6:15、ただし米国のサマータイム実施期間は1時間前倒し)に取引される(昼休みなし)。大証の寄り付きはこのCMEの清算値(日本での終値に相当するもの)に近い値になることが多い。市場規模は大証の数分の一程度である。なお、CMEには24時間稼働する取引システム([[GLOBEX]])もあり、時間外取引(現地時間 3:00~8:00)も行われている。* [[シンガポール取引所]](SGX, Singapore Exchange):1989年9月より日経225先物を扱っている。現地時間の7:45~14:30(日本時間 8:45~15:30)に取引され、大証より15分早く始まる。夕場取引は大証よりも早く導入されており、現地時間15:30~19:00(日本時間16:30~20:00)で取引されている。

先物16

'''日経225先物取引'''(にっけい225さきものとりひき)とは、[[日経平均株価]]を原資産とする[[株価指数先物取引]]であり、[[大阪証券取引所]]等に上場されている。[[日経225オプション取引]]と並んで、日本を代表する[[デリバティブ]]取引である。
== 概要 ==あらかじめ定められた期日(満期日)に特定の資産(原資産。ここでは日経平均株価)を、あらかじめ決められた価格で売買する契約。原資産が日経平均株価(株価指数)という実体のないものであるため、決済はすべて差金決済となる。
先物の「買い方」(=取引を買いで開始した人)は、満期日の原資産(厳密には「SQ値」、後述)が約定(やくじょう)価格を上回れば利益を得、下回れば損失となる。「売り方」(=取引を売りで開始した人)は、逆に、満期日の原資産が約定価格を下回れば利益を得、上回れば損失となる。また、満期日まで待たなくとも相場の変動に応じて反対売買(買い方の場合は転売、売り方の場合は買戻し)すれば、いつでも損益を確定することができる。
期近物(後述)の先物価格は現実の日経平均株価に近い値を取るのが普通だが、多少の乖離は存在する

先物15

==投機==[[投機]]を行う者にとっては、前述のリスクヘッジ目的の取引の場合と異なりその商品自体が重要なわけではない。取引参加者は、商品価格を左右するような情報を手に入れるなどして将来の価格を予測し、先物取引によって利益を得ようとする。取引手法はリスクヘッジ取引と同じで、先物の購入または売却を行い、期限前に反対売買をすることで差金決済する。
投機が存在することにより、先物市場の取引規模は増大し[[流動性 (経済学)流動性]]が高まる。また、結果的には、大小様々な情報を価格へ織り込む役目を行なっていることになる。これにより、先物市場の有用性が高まるが、一方で[[レバレッジ]]を活用した巨額の取引により、意図的に価格を吊り上げたり、逆に売り崩したりする場合があり、市場の混乱の一因ともなる。

先物14

:'''一年後、市場のトウモロコシ価格が1.5ドルになっていた場合''':: 農場経営者は、先物市場で売ったトウモロコシを買い戻す。このことで150万ドルの支出がある。昨年250万ドル受け取った分の差額100万ドルが証拠金とともに返ってくる。差し引き100万ドルの利益である。一方、実際に生産したトウモロコシを現物市場で売却する。単価1.5ドルで100万ブッシェル売るため150万ドルの収入である。先ほど、先物市場で得た100万ドルと合算して、250万ドルの収入となる。これで事実上、単価が2.5ドルになる。農場経営者が先物取引をしていなければ、赤字であった。
: このようにリスクヘッジ目的に先物取引をすることは、より高い利益を求めるためではなく、経営構造を安定化させるために行なう。一年後、価格がどうなるか分からない状況では計画が立たないが、先物取引を行なうことで見通しを立てることができるようになる。
: なお、実際の先物取引ではほとんどの場合、期限前に反対売買をすることで差額を決済(差金決済)するため、現物が取引されることは稀である(現物決済する場合、期限まで決済を待たなければならないため)。

先物13

===リスクヘッジ (条件 その2)===*例えば、大規模な農場があったとする。:: 1. 農場ではトウモロコシを生産している。:: 2. トウモロコシは市場価格で売却している。:: 3. トウモロコシが1ブッシェルあたり2ドル以下になると赤字になる。:: 4. 年間に100万ブッシェル生産する。
: 農場経営者は、来年のトウモロコシの価格が気になる。もし、来年の価格が2ドルを下回れば、赤字になってしまう。現状のトウモロコシ先物市場ではトウモロコシが2.5ドルである。そこで、酪農家は先物市場でトウモロコシを100万ブッシェル売る。250万の受け取りであるが、証拠金取引であるため一部を証拠金として納め総額を受け取るわけではない。売却するのは「来年決済時点のトウモロコシ100万ブッシェル」である。
:'''一年後、市場のトウモロコシ価格が4ドルになっていた場合''':: 農場経営者は、先物市場で売ったトウモロコシを買い戻す。このことで400万ドルの支出がある。昨年250万ドル受け取った分の差額150万ドルが証拠金から減額されて返ってくる。差し引き150万ドルの損失である。一方、実際に生産したトウモロコシを現物市場で売却する。単価4ドルで100万ブッシェル売るため400万ドルの受取である。先ほど、先物市場で失った150万ドルの損失と相殺して、差し引き250万ドルの収入となる。これで事実上、単価が2.5ドルになったことになる。農場経営者が先物取引をしていなければもっと収益は多かった。

先物12

:'''一年後、市場のトウモロコシ価格が4ドルになっていた場合''':: 酪農家は、先物市場で買ったトウモロコシを売却する。このことで400万ドルの収入がある。昨年250万ドル支払った分の差額150万ドルと証拠金が返ってくる。差し引き150万ドル利益を得た計算である。一方、実際に飼料とするため現物市場でトウモロコシを購入する。単価4ドルで100万ブッシェル買うため400万ドルの支払である。先ほど、先物市場で得た150万ドルの利益と相殺して、差し引き250万ドルの支払となる。これで事実上、単価を2.5ドルに抑制できたことになる。酪農家が先物取引をしていなければ赤字となっていた。
:'''一年後、市場のトウモロコシ価格が1.5ドルになっていた場合''':: 酪農家は、先物市場で買ったトウモロコシを売却する。このことで150万ドルの収入がある。昨年250ドル万支払った分の差額100万ドルが証拠金から減額されて決済される。差し引き100万ドルの損失である。一方、実際に飼料とするため現物市場でトウモロコシを購入する。単価1.5ドルで100万ブッシェル買うため150万ドルの支払である。先ほど、先物市場で失った100万ドルと合算して、250万ドルの支払となる。これで事実上、単価が2.5ドルになる。酪農家が先物取引をしていなければ、より利益があった。

先物25

含み損が拡大するなどして、値洗い後の必要最低証拠金が口座に入金されている金額を上回ってしまうと、「'''追証'''」(おいしょう)という追加の証拠金が必要になる。定められた期限(通常、翌営業日の前場終了)までに追証の入金がない場合は、全建玉が(通常、翌営業日の後場寄り付きで)強制決済される。
なお、オプションと組み合わせてポジションを組んでいる場合は、先物とオプションを合わせたポートフォリオ全体の持つリスクに応じて必要最低証拠金が計算されることが多い。その場合の計算は非常に複雑になるため、本稿では割愛する。
===ヘッジ===日経225先物取引のリスクヘッジ(リスク回避)の手段として、[[日経225オプション取引]]を利用することができる。'''先物とは逆のポジションとなるように適切な権利行使価格・限月のオプションを先物と同数買い建てる'''(ロングの場合はプット買い、ショートの場合はコール買い)ことで、株価指数の暴落(ロングの場合)・暴騰(ショートの場合)による大きな差損発生のリスクを回避することが可能である。ただしこの場合は先物取引が成功した場合でも、得られる利益はオプション価額の変動(この場合は減少)分だけ少なくなる。
ヘッジ目的の場合はオプションを買い建てることが必要で、オプションを「売り建て」た場合はオプション取引によって得られる利益が一定額に限定されてしまうため、株価指数の暴落・暴騰に対するヘッジとはならない。
なお、[[オプション取引]]は必ずしもヘッジ目的だけに限られるものではない。

先物24

===証拠金===大阪証券取引所では、2000年10月30日より上記CMEの開発した SPAN (The Standard Portfolio Analysis of Risk)という証拠金計算方法が採用されている。証券会社では、このSPANのうちの「プライス・スキャンレンジ」という指標を用いて、以下の計算式で必要最低証拠金を計算することが多い。:必要最低証拠金 = プライス・スキャンレンジ×1.2×(買い玉数-売り玉数)の絶対値-含み損益プライス・スキャンレンジは、指数の終値の対前日の増減値(絶対値)のうち、(1)過去4週間のうち最も変動した値、(2)過去24週間のうち上位2番目に変動した値、のうちの大きい方を30の倍数に切り上げ、それを1,000倍したものである。プライス・スキャンレンジは大阪証券取引所から毎週発表される。
たとえば2007年の初めでは、(1)が234.16、(2)が408であったので、プライス・スキャンレンジは408を420に切り上げて千倍した42万円となる。この時、買玉1枚、売玉3枚を建てており、含み損が20万円とすると、一般的な証券会社の必要最低証拠金は、:42万×1.2×|1-3|-(-20万)=120万8千円である。逆に含み益が20万円の場合は、80万8千円である。

先物11

===リスクヘッジ (条件 その1)===*例えば、大規模な牧場があったとする。::1. 牧場では[[牛]]の[[飼料]]に[[トウモロコシ]]を使っている。::2. トウモロコシは[[市場価格]]で購入している。::3. トウモロコシが1[[ブッシェル]]あたり3[[ドル]]以上になると赤字になる。::4. 年間に100万ブッシェル使用する。
: 酪農家は、来年のトウモロコシの価格が気になる。もし、来年の価格が3ドルを超えれば、赤字になってしまう。現状のトウモロコシ先物市場ではトウモロコシが2.5ドルである。そこで、酪農家は先物市場でトウモロコシを100万ブッシェル買う。250万ドルの支払であるが、証拠金取引であるため一部を証拠金として納めるだけでよい。受け取るのは「来年決済時点のトウモロコシ100万ブッシェル」である。

先物10

=== 実物取引と清算取引 ===株式市場には、かつて長期清算取引があったが、この取引は個別株式の3ヶ月以内の3連続限月制の先物取引であった。現行の先物取引は、第二次世界大戦後のアメリカの制度を見習い、「実物取引」と「清算取引」の区分を踏襲しながら、清算取引については Futures を訳して「先物取引」と呼んでいる。
「実物取引」と「長期清算取引」の中間位置に存在したものとして、期日到来後も30日以内に限って受渡し又は差金決済を繰り延べることが可能な「短期清算取引」がある。日歩(又は逆日歩)とスワップ金利、取引所取引と相対取引、などの違いはあるが、類似の繰り延べ取引(ロールオーバー制度)として「[[外国為替証拠金取引]]」が存在する。
===証拠金取引===先物取引の一般的な特徴として「証拠金取引」が存在する。これは、購入もしくは売却する代金全額の現金は不要で、少ない[[証拠金]]を担保にして取引が出来るというものである。このため、[[株式]]の[[信用取引]]などと同じように、用意する現金に比べて大きな利益、大きな損失が生じやすく、投資額からみるとハイリスク・ハイリターンな取引であるといえる。先物取引に関して、想像以上の損失をこうむってしまう投機家が多いのは、このためである。投資額以上の損失を抱えることもある。

先物9

'''先物取引'''('''さきものとりひき''')とはいわゆる[[デリバティブ]](金融派生商品)の一つで、価格や数値が変動する各種[[商品]]・[[指数]]について、未来の売買についてある[[価格]]での[[取引]]を約定(やくじょう)するものを言う。対義語は[[現物取引]]。[[1531年]]に[[ベルギー]]で世界初の先物取引市場が開設される。[[1730年]]には世界初の公設先物市場、[[堂島米会所]]が誕生する。
==概要==本来は、価格変動の影響を避けるための手段([[リスクヘッジ]])として利用されるが、価格変動を利用して利益を得るスペキュレーション(投機)取引というものがあり、以下のような場合に、その差額を利益として得ることが出来る。* 今後の価格の上昇を予想して商品を購入し、実際に商品価格相場が上昇して売却した場合。* 今後の価格の下落を予想して商品を売却し、実際に商品価格相場が下落して買い戻しを行った場合。
現物を持ち寄らずに、紙上や電子的に取引を行うため、市場(いちば)よりも大規模な取引を行なうことが可能で、商品を取引する上での世界的な価格指標となる。

先物8

==商品取引所==日本では東京工業品取引所、東京穀物商品取引所など4つの商品取引所で商品先物取引が行われている。うち、[[原油]]や[[ガソリン]]、[[貴金属]]などを上場する東京工業品取引所が、商品先物取引の出来高で世界第2位となっている。欧米と同様の清算制度や電子取引端末の導入を契機に、時差の面で[[アメリカ合衆国米国]]市場・[[ヨーロッパ欧州]]市場を補完する[[アジア]]の中核市場として注目されている。
取引形態は、株式市場と同様の'''ザラバ'''方式と、1日数回の取引節ごとに注文を突き合わせる'''板寄せ'''方式に分かれている。殆どの市場で注文処理は[[コンピュータシステム]]によるシステム取引が行われているが、中部大阪商品取引所大阪取引センターにおいては、2007年8月31日まで伝統的なハンドサインによる'''手振り板寄せ売買'''が行われていた。(これが日本における手振りによる最後の取引である。)
板寄せにおいては、市場で売買が成立した後一定時間内の間、取引員が当該値段で売り買い同枚数の取引が成立したとして、後から取引所に報告することが認められている。これをバイカイ付け出しといい(またバイカイを振るともいう)、投資家の中には特殊サービスとして歓迎する向きもあるが、不正の温床であるとして問題視する意見もある。また、取引所と取引員は、日々値洗いに応じて、場勘とよばれる金銭のやりとりをしなければならず、これが即時行われないと違約となって取引停止となるので、取引員は場勘のやり取りを嫌う傾向が強い。このため、取引員は取引所に対し中立のポジションをとる傾向があり、当然一般の顧客とは反対のポジションをとる傾向となる。これを向かい玉といい(市場を全く通さない場合は呑み玉という不正行為である)、顧客に対する出金遅延の原因となりやすい。

先物7

なお、毎日の売買量を出来高(できだか・売りと買いが成立したものを1枚と数える)といい、ある時点での未決済の建玉の量を取組高(とりくみだか・売りと買いが取り組んだ状態を1枚と数える)という。これとは別に売買高という言葉を使用する場合があって、売りと買いでそれぞれ1枚と数え出来高を2倍に数えるのがそれだという。ただし[[日本経済新聞]]の商品市場の欄の説明では出来高のことを売買高といい、取組高のことをたんに建玉と称しているから注意を要する。
==商品取引員==商品取引受託業務を営む[[株式会社]]が'''商品取引員'''である。これは[[有価証券]]の取引に於ける[[証券会社]]に当たる。ごく一部の良心的な取引員を除き、勧誘を巡る苦情が多く、[[2004年]][[4月]]に成立した改正商品取引所法では、資産保全制度の拡充、商品取引員が投資家を勧誘する場合のルール強化、商品取引員の財務基準の見直しなどが盛り込まれた。また、[[外国為替証拠金取引]]に参入するものも多い。商品取引員の利潤の大部分は、顧客からの委託手数料で賄われているが、2004年に委託手数料が自由化された。[[2005年]]4月に[[個人情報保護法]]が施行され、同年5月に商品取引所法が改正されてからは、勧誘規制強化の影響で収益が大幅に落ち込んだ商品取引員が多く、また主務省([[経済産業省]]・[[農林水産省]])による抜き打ち査察が徹底的に強化され、その結果廃業や業務停止に追い込まれる商品取引員が同年から相次いでいる。また、商品先物取引の営業においては[[登録外務員]]の制度が採られている。

先物6

このようにして、商品が上がると思えば買い建玉をし、下がると思えば売り建玉をするのが、商品先物取引(商品相場)における典型的な投機的取引であるが(いわゆる片建取引)、このほかに、同一商品異市場の値段差が縮小するのを狙う取引(アービトラージ)や、類似商品の値段の差・比率に着目する取引(ストラドル)、限月間の値段差に着目する取引、順鞘(限月が近づくにつれ値段が下がっている状態)のときの鞘すべり取り(ローリング)、逆鞘(限月が近づくにつれ値段が上がっている状態)のときの鞘出世取り、順鞘のとき期近(決済の早い限月)を買い期先(決済の遅い限月)を売って、期近を現受け(現物を引き取ること)して期先に売りつなぐことで、差額を獲得する取引などがあり、これらを総称して鞘取りという(もともとは投機的取引で値段差を狙う全ての取引を鞘取りといった)。日本では困難であるが、これらにさらに[[オプション取引]]を絡ませて、いっそう複雑なポジションを構成することもできる。

先物5

==取引の仕組み==取引においては、一定の決まった月までに、現物引渡しまたは反対売買(転売・買戻し)で決済することが約束されている商品を売買する。この決められた月を、「限月(げんげつ)」といい、取引の単位を「枚」という。たとえば金においては1kgが取引単位となっている(2007年2月現在)。現物を受け渡す最小単位も取引単位と同様に設定しているものが多いが、なかには2枚や5枚を単位とするものもある。売買をするにあたっては[[取引所]]によって定められた一定額の証拠金を納めなければならない。この額は契約商品全体の額(「丸代金」という)の5~10%くらいである。すなわち10~20倍のレバレッジがかかっているのがこの取引の特徴である。買いまたは売りをしたまま、未決済(現物引渡しや反対売買が行われていない状態)になっている契約を「建玉(たてぎょく)」という。建玉に発生する損益を「値洗い」といい、ポジション(口座にある建玉全体の状態)にたいして一定以上の値洗い損がでれば、追加の証拠金を納めなければならない。これを取引追証拠金(とりひきおいしょうこきん・おいしょう)という。証拠金が納付できない場合は、そこで強制決済となる。証拠金は、納会日(最終決済日)が近づいてきたときや相場が荒れたときにも、追加を要求される。前者を定時増証拠金(ていじまししょうこきん・ていじまし)、後者を臨時増証拠金(りんじまししょうこきん・りんまし)という。

先物4

日本の商品先物市場は、他の国とは違って個人投資家による[[投機]]取引が大部分を占め、それにより投資家とのトラブルや市場機能の未熟さが指摘されてきたが、[[貴金属]]市場や石油市場の拡大とともに近年は[[商社]]をはじめとする機関投資家の取引が急増している。この結果、石油製品などの実需取引においては、商品先物市場の価格が指標として活用されるなど、日本の産業インフラとしての機能を発揮しつつある。また、[[白金]]や[[ゴム]]などの商品では[[東京工業品取引所]]が世界最大規模の出来高を誇り、世界的な指標価格を形成している。

先物3

堂島米会所は、米を取引対象としていたので、当然、商品市場であるが、当時の日本で、米は[[貨幣]]的な役割を果たしていたこと、[[金本位制]]と[[銀本位制]]が混在していたことから、米を仲立ちとして[[金]]と[[銀]]の交換レートが実質的に決定されるという役割も持っていた。このことから、商品としての米よりも貨幣としての米の側面が高く、実質的には商品市場というよりも[[為替]]市場として機能していたと分析する研究者もいる。
しかし、米の先物取引は[[第二次世界大戦]]に伴う米流通の統制に伴い[[1939年]]廃止された。終戦後の商品取引所公布を受け、[[1950年]]大阪化学繊維取引所(現在の[[中部大阪商品取引所]])を皮切りに商品先物取引が再開されたものの、米の先物取引は[[2006年]]時点でいまだ実現していない。
==現状==日本の商品先物市場は、[[農林水産省]]及び[[経済産業省]]の管轄となっている。これは、先物取引の内の商品の受け渡しに注目した管轄の方法であり、商品先物取引委員会([[w:Commodity Futures Trading Commission]], CFTC)という専門組織がある[[アメリカ合衆国]]をはじめとする諸外国と異なる点であり、また管轄省庁が2箇所あることに起因する運営上の諸問題も発生している。

先物2

価格調整機能とは、商品先物取引では、公開の市場で多数の参加者が競り合うことで価格が決定されるので、理論上、その時点での最も公正な価格が決められることを指す。また、先物価格を指標として生産者が生産調整を行うことがあるため、将来価格が高い場合は、生産量が増えて結果的に価格が下がり、将来価格が低い場合は、逆の現象が生じる。このため、商品価格の乱高下が減り、価格の安定化をもたらすと考えられている。ただし、仕手やファンド等の介入で価格が、ある程度乱高下する場合もある。[[銀]]相場におけるハント兄弟の買い占めが世界的な事象として知られてるが、結局、彼らは暴落で大損失を被ることになる。
商品先物取引を[[デリバティブ金融商品]]として見た場合、少額の現金のみで取引できる「[[証拠金取引]]」であるため、[[レバレッジ]]効果によって利益・損失とともに莫大になりやすい。
==歴史==[[1730年]]に[[江戸幕府]]が、[[大阪]]堂島米相場会所に対し[[米]]の先物取引を許可したのが、日本での商品先物取引の始まりである。これ以前にも、[[1568年]]に開設された[[ロンドン]]([[イギリス]])の取引所や[[1531年]]に開設された[[アントウェルペンアントワープ]]([[ベルギー]])の取引所があったが、近代的な商品先物取引の嚆矢は上記の堂島米会所といわれている。

先物1

'''商品先物取引'''('''しょうひんさきものとりひき''')は、[[農産物]]や[[鉱物鉱工業材料]]等の[[商品]]を将来の一定日時に一定の価格で売買することを現時点で約束する取引であり、[[先物取引]]の一種である。
本来は、将来の価格変動リスクを管理するための手段([[リスクヘッジ]])として利用するものであるが、多くは[[投機]]手段としての利用となっている。対義語は[[現物取引]]。
==概要==主な役割として、価格変動のヘッジ機能と商品価格の調整機能がある。
ヘッジとは、商品の現物取引を行っている者が、将来の価格変動によって損失を被らないように保険を掛ける機能である。具体的には、[[アルミニウム]]を10,000トン輸入した商社があり、[[船]]で輸送して[[日本]]に到着するまでに1箇月かかるとする。仮に1箇月の間にアルミニウムの価格が1kgあたり10[[円 (通貨)円]]下がったとすると、商社は1億円の損失を出すことになる。このような場合、商品先物取引を利用して10,000トン分のアルミニウムを売っておけば値下がりによって[[利益]]が出るので、現物の損失と相殺することが出来る。

fx13

*[[1990年]]~[[1995年]]4月 超円高: [[湾岸危機]]など短期の上下はあるものの、長期的には円高で推移した。1990年初から東京市場の株価が暴落し、バブル景気に陰りが見え始めた。海外投資や輸入が収縮する一方で輸出は依然強く、円高が進行した。[[1994年]]にはじめて1ドル=100円の大台を突破し、[[1995年]]春には瞬間1ドル=80円割れの史上最高値を記録した。*[[1995年]]~[[1998年]]夏: 超円高から円安へと向かった。1998年秋には一時1ドル=140円台まで下落した。国内ではバブル経済崩壊後、[[不良債権]]や金融機関の破綻などさまざまな問題が表面化し、1997年秋には大手証券や銀行の破綻など危機的な状況となった。また、海外では、[[1997年]]夏の[[アジア通貨危機]]や[[1998年]]夏の[[ロシア財政危機]]などの事件が起こっていた。*[[1998]]秋~:{{節stub}}

fx12

*[[1977年]]~[[1978年]]末: この頃、円高が進み、はじめて1ドル=200円を突破した。1978年末頃には一時1ドル=180円を突破した。*[[1978年]]末~[[1985年]]: アメリカの[[ジミー・カーターカーター政権]]下でのドル防衛政策の他、[[イラン革命]]の進行によるオイルショック懸念、[[ソビエト連邦ソ連]]の[[アフガニスタン侵攻]]で再びドル高となり、1980年には1ドル=250円付近まで円安が進んだ。以後しばらく200円~250円で推移した。*[[1985年]]~[[1988年]]末: 1985年秋の[[プラザ合意]]によるドル安誘導政策で急激に円高が進行した。プラザ合意発表直後に円ドル相場は20円ほど急騰し、1985年初には250円台だった円相場が1986年末には一時160円を突破した。その後も円ドル相場は史上最高値を更新し続け、1987年2月の[[ルーブル合意]]でドル安に歯止めかける方向で合意したもののしばらくドル安が進み、1ドル=120円台にまで上昇した。国内では、激しい円高の影響で輸出産業が打撃を受ける一方で、(当時としては)超低金利時代を背景に[[金余り現象]]が発生し、[[バブル景気]]へと向かった。この時期、[[石油輸出国機構OPEC]]の弱体化で[[原油]]価格も大幅に下落し、円高とあわせて、国内経済は原油相場の影響を受けにくくなった。*[[1989年]]~[[1990年]]頭: 円ドル相場は円安傾向となり、120円台から160円付近まで下落した。この頃、国内はバブル経済の最盛期に向かう一方で、世界的には[[冷戦]]時代が終結に向かいつつある時期でもあり、[[六四天安門事件天安門事件]]、[[東欧革命]]、[[ベルリンの壁崩壊]]など歴史上大きな事件も進行していた。

fx11

==円相場の歴史==[[Image:JPY-USD 1950-.svgthumb275px対ドル為替レート(1950年以降)]]
[[Image:JPY Real Effective Exchange Rates (1970-).svgthumb275px[[実質実効為替レート実効為替レート]](1970年以降)
数字が大きいほど円高]]*[[1949年]]~[[1971年]]8月 円ドル固定レートの時代: [[戦後]]、日本は[[ブレトン・ウッズ協定ブレトン・ウッズ体制]]の下で1ドル=360円の[[固定相場制固定相場]]の時代となった。: [[第2次世界大戦]]の後、[[アメリカ合衆国アメリカ]]は、[[冷戦]]の中で[[西側]]世界のリーダーとなり、経済的にも繁栄し[[アメリカ合衆国ドルドル]]が[[基軸通貨]]となった。1960年代になると[[ベトナム戦争]]への膨大な出費などからインフレが進み、ドル不安が起こるようになった。ドル不安は[[1971年]]8月15日の[[ニクソン・ショック]]で表面化した。*[[1971年]]12月~[[1973年]]前半 スミソニアン体制: ニクソン・ショックの後、[[スミソニアン協定]]でドルの切り下げが決められ、1ドル=308円となった。*[[1973年]]2月 変動相場制への移行: ドルの固定相場制の維持が困難になり、日本は1973年2月に[[変動相場制]]に移行した。変動相場制の導入直後に1ドル=260円台まで円高が進んだが、1973年秋の[[オイルショック]]で 1ドル=300円近辺まで戻り([[有事のドル]])、1976年末頃までしばらく安定の時代となった。

fx10

==円高==2006年現在、110円以下になった時には、明確に円高という。
'''円高'''の際には、[[日経平均株価]]は急落することが多い。
また、[[輸出]]産業の業績が悪化し、[[輸入]]産業の業績が好調となる。* 輸入する時には、今までより安く仕入れる事ができるので、コストが削減できる。* 輸出する時には、円が高いために買ってもらいにくくなるため、利益が減少する。
==円安==2006年現在、120円以上になった時には、明確に円安という。
'''円安'''においては、[[日経平均株価]]は急騰することが多い。
また、[[輸入]]産業の業績が悪化し、[[輸出]]産業の業績が好調となる。* 輸入する時には、今までより高く仕入れなくてはならないので、コストが余計にかかる。* 輸出する時には、円が割安なので買ってもらいやすくなり、利益が増大する。

fx9

'''円相場'''(えんそうば)は、[[円 (通貨)円]]に対する[[外貨]]の相対的価値([[為替レート]])のこと。通常は、外貨1単位に相当する円貨額で表示する(通貨や市場によっては別の慣行もある)。
特に[[アメリカ合衆国ドル米ドル]]や[[ユーロ]]、[[UKポンド英ポンド]]との比較によって示され、その中でも米ドルに対しての「円の相対的価値」を示すことが多い。
==概要==国際市場において、[[日本]]の[[通貨]]である円の相対的価値が、何らかの意味で基準とみなされる水準よりも高い状態を「'''円高'''」、逆に低い水準であるとき「'''円安'''」という。
分かりやすく言えば、今まで1ドル120円だったが、1ドル115円になった場合には、'''円高'''になる。つまり、より少額の「円」で、1ドルと交換できるようになる訳である(同じ円貨額でより多くのドルを買えるようになったと考えると、通貨価値が上がったということが理解されやすい)。

fx8

スワップポイントとは、外国為替取引において異なる通貨間の取り引きをする際に、外国為替取引では通常2日後の決済となり通貨の交換をする際に生じる金利格差のポイントの事である。
この交換日を先延ばし(ロールオーバー)した際の取引通貨間の金利の差額をスワップポイントと言う。
金利の安い通貨を売り金利の高い通貨を買い保持し続けると、金利格差の差額分がプラスになる為にスワップポイントを得る事ができ、逆に金利の高い通貨を売り金利の安い通貨を買い保持し続けると、金利格差の差額分がマイナスになる為にスワップポイントを支払わなければならない。

fx7

== 欠点 ==* スプレッドは狭いが、売買手数料がかかる(店頭業者は [[スワップポイント]]、スプレッドで利益を得られるため手数料0の業者も多い)。* 取扱通貨が店頭取引と比べて少ない。* 取り扱い業者が限られる。* [[東京金融取引所]]が定めるレバレッジは高くて30倍程度であり,元手がないと大きくポジションを張ることができない。* レバレッジ(証拠金)が,最近の相場変動による定期的に変更されることがあり、損失が発生しなくても証拠金の積み増しを迫られることがある。

fx6

'''くりっく365'''は[[東京金融取引所]]が行っている[[外国為替証拠金取引]]である。
== 特徴 ==* くりっく365は取り扱いの業者から、東京金融取引所に対して注文をする形となる(取引相手は東京金融取引所)。* インターバンクと同等の価格、狭いスプレッド幅での取引が可能。* [[スワップポイント]]が売りと買いで同一。* 取扱業者が破綻しても、ポジションが東京金融取引所で保持される。また取扱業者の財務力も金融商品取引法の業者登録基準に加えて純資産30億円以上となっているため、そもそも破綻の可能性が通常の店頭取引業者よりも低い。* 申告分離課税として一律20%の税率で課税され、[[株価指数先物取引]]や[[商品先物取引]]など、他の取引所の先物取引と損益通算も可能。* 翌年から3年間にわたり繰越控除の適用が可能。*

fx5

==金融商品販売法の適用==本取引は、[[2004年]][[4月1日]]施行の「[[金融商品の販売等に関する法律]]」(「金融商品販売法」)の改正により、「'''直物為替先渡取引'''」に該当することが明確になった。(金融商品販売法 第2条1項12号、同法施行令 第4条)
このため、業者はリスク等に対する[[説明責任説明義務]]が課せられる。説明が尽くされておらず顧客が被害を蒙った場合は、業者は[[損害賠償]]責任を負うことになる。(同法 第3条1項2号、第4条)
==[[金融先物取引法]](現:[[金融商品取引法]])による規制==本取引は、かつては取引に関する法律(いわゆる「業法」)がなく規制もなかったため、多額の手数料を顧客から騙し取るといった悪徳業者が多発した。[[2005年]][[7月1日]]に金融先物取引法が改正されたことで以下の規制が設けられたが、過当競争状態になっている証券会社などでのトラブルや、本取引を騙っての詐欺事件が後を絶たない。
*業者は登録制となり、[[金融庁]]の監督下に置かれるようになった。*以下の禁止行為が設けられた。**不招請勧誘の禁止**契約をしない旨の意思表示をした人に対する再勧誘の禁止**断定的判断を提供しての勧誘の禁止*広告規制:手数料やリスクなどについての表示を義務づけられた。*書面の交付義務:契約締結前、取引成立、証拠金受領時にそれぞれ書面の交付が義務づけられた。*外務員が登録制となった。
※なお、この法律は金融商品取引法が施行された2007年9月30日に同法の一部として再構成され、廃止された。

fx4

==一部の取扱通貨について==近年成長著しい[[中華人民共和国中国]]の[[人民元元]]を取り扱っている業者は少なく、扱っていてもスワップ金利が付かない場合や、中にはスワップ金利が売り買い共にマイナスというケースもある。これは、中国元の元市場が先進国の通貨に比べて自由化されておらず、通常の方法で取引でできないためである。
==主なリスク==; 外国為替相場の変動リスク: 相場の変動がある以上、利益が期待できる反面、損失を受ける場合がある。証拠金の何倍もの取引を行うことができるため、損失が預託した証拠金を超え、さらなる証拠金を請求されることもあり得る。; 業者に対する信用リスク: 客から委託された証拠金を、自社の資産とは別勘定で[[信託銀行]]に[[信託分別管理]]するといった保全管理をしていない業者の場合、破綻した際には預託していた証拠金が戻ることは期待できない。業者によって証拠金の管理方法が異なるので、約款などで確認する必要がある。; マイナススワップポイントのリスク: 高[[金利]]の通貨を売り、低金利通貨を買う取引をする場合(2006年12月現在ではドル売り円買いなど、多くの円買い取引がこれに相当する)、スワップポイントの支払いが必要となる。スワップポイントはその通貨ペアの金利差が逆転しない限り支払わなければならないので、特に長期売買の時には「スワップポイントの収支」が多額になることがある。

fx3

==ロング・ショート==外国為替証拠金取引では、常に何らかの通貨を売り、何らかの通貨を買う、という取引をする。これは、日本円でバナナを買う際に、バナナを買って日本円を売っているわけでもあるのと同様である。外国為替証拠金取引ではバナナの代わりに通貨を用いており、例えば、日本円を売って米ドルを買う、米ドルを買ってユーロを売る、というような取引をしている。
「買い」の方の通貨をロング、「売り」の方の通貨をショート、と呼ぶ。上記の例では順に、ドルロング円ショート(またはドル円ロング)、ユーロショートドルロング(またはユーロドルショート)という言い方になる。また、通貨のペアはUSD/JPY、EUR/JPY、EUR/USDなどと表記が決まっているので、「ドル円ロング」といえば円はショートされている。同様に「ユーロドルショート」と言えば、ドルはロングされている。ただし同じ取引を、円ドルショート、ドルユーロロングなどという言い方は慣例としてしない。
==外国為替証拠金取引の例==1ドル=120円、レバレッジ20倍で取引する場合、60万円(5000ドル相当の円)を証拠金として預託すると、5000ドル×20倍=10万ドルの取引が可能となる。つまり、証拠金は取引額の5%になる。1ドル=120円のときに取引開始して10万ドルを買い、その後、円高となって1ドル=115円になったとする。このときの収支は、
* 1ドルあたり 115円-120円=-5円 であるから、10万ドルでは50万円の損失である。* また、証拠金は1ドル=120円のときに、5000ドルであるから60万円である。* 初めの証拠金の60万円に対して50万円の損失を差し引くと、残るのは10万円だけであり、初めの1/6となる。
上記と逆に、円安となって1ドル=125円になった場合は、50万円の利益となる。つまり、初めの証拠金の60万円が110万円となり、およそ2倍となる。

fx2

* [[レバレッジ]]を利用することによって証拠金の何倍もの外貨を取引することができる。* 為替レートが同一の時の、売り相場と買い相場(他の外貨商品でいう、電信買相場(TTB)と電信売相場(TTS))の差(スプレッド)が他の金融商品に比べて小さい。* 金利差による[[スワップポイント]]も、他の金融商品より有利な場合が多い。
===課税方法===為替差益に対する課税は外貨預金が[[雑所得]](総合課税)で外貨MMFが非課税、利子は外貨預金・外貨建てMMFとも[[利子所得]]([[所得税]]・[[住民税]]合わせて20%の[[源泉分離課税]])となるが、外国為替証拠金取引(FX)は取引方法により2種類の課税方法に分かれる。* '''店頭(相対)取引''': 差益・スワップポイントとも雑所得(総合課税)。先物取引など他の取引との損益通算・損失繰越は不可。* '''[[くりっく365]]'''([[東京金融取引所]]による取引所取引): 差益・スワップポイントとも雑所得(所得税・住民税合わせて20%の[[申告分離課税]])。[[先物取引]]との損益通算・3年間の損失繰越が可能。
==レバレッジ==外国為替証拠金取引では、レバレッジを利用することにより、証拠金以上の外貨を取引することができる。レバレッジの倍率を高くするほど為替相場の変動によるリスクは高まる。取引業者によっては400倍もの高レバレッジも設定可能である。逆に証拠金と同額の外貨を取引する(レバレッジ1倍)という外貨預金に近い比較的低リスクな取引もできる。
仮にレバレッジが100倍で取引した場合、1%の変動(1ドル=100円から1ドル=101円)が100%の変動になる。利益なら証拠金が2倍になるが損失なら証拠金全額を失う。
実際には[[商品先物取引商品先物]]の証拠金取引と同様、損失が一定額を超えると、[[損切りロスカット]]ルールによって強制的に反対売買がなされる。またそれよりも損失の小さい段階で追加証拠金の差し入れ(追証)を請求される(マージンコール)場合もある。

fx1

'''外国為替証拠金取引'''('''がいこくかわせしょうこきんとりひき''')とは、証拠金(保証金)を業者に預託し、主に差金決済による[[通貨]]の売買を行なう取引をいう。「'''FX'''」、「'''通貨証拠金取引'''」、「'''外国為替保証金取引'''」などともいう。
[[日本]]では[[1998年]]に[[外国為替及び外国貿易法]]が改正されて、豊商事株式会社、ダイワフューチャーズなどが取扱いを開始、[[ブロードバンドインターネット接続ブロードバンド]]の普及も手伝って市場が急速に拡大した。[[商品先物取引商品先物会社]]、[[証券会社]]のほか、本取引を専業で取り扱う業者もある。取引の仕方によってはハイリスク・ハイリターンとなるため、外国為替相場に関する十分な知識や経験を要する。
==特徴==外国為替証拠金取引には、[[外貨預金]]・[[外貨]]建て[[マネー・マーケット・ファンドMMF]]など、他の外貨建て金融商品と比較して、以下の特徴がある。
* 多くの外貨建て商品では、通常外貨を買ってから後に売るという取引になるが、外国為替証拠金取引では逆に外貨を売ってから一定期間後に買い戻すことも可能である(いわゆる「売りから入る」取引)。また、[[円 (通貨)日本円]](JPYと略する)しか持っていなくても、「[[アメリカ合衆国ドル米ドル]](USD)を売って[[ユーロ]](EUR)を買う」といった取引も可能である。

2008年3月11日火曜日

19年金

====国民年金と被用者年金の一元化====*高齢(退職)[[所得]][[リスク]]の違い、所得形態及び納付形態の違い、保険料賦課基準所得の定義の違いといった被用者と[[自営業]]者等との相違点を解消するという条件整備が不可欠である。ただし、仮に納税者番号制度が導入されたとしても、自営業者等の所得把握には限界がある。*事業主負担をどうするか、自営業者等に所得比例保険料負担を求めることに賛同が得られるかどうか。*現行制度と比べ給付と負担が大きく異なることとなると考えられるため、これについての十分な分析が必要となる。
===国民年金の空洞化===国民年金は、創設当初の完全積立方式から修正積立方式による財政運営に移行した。その後、年々の年金給付に必要な費用を、その時々の被保険者納付する保険料で賄われる部分が徐々に拡大し、1985年の基礎年金制度導入を含め年金制度全体が世代間扶養の性格を強めてきたため、現在では[[公的年金#積立方式と賦課方式賦課方式]]に移行したと言える。しかし、近年、国民年金の納付率が低下してきたことで、賦課方式における不公平感が大きくなっている。
====納付率の低下====近年の国民年金保険料の納付率は、[[1992年]](平成4年)度の85.7%をピークに年々低下し、[[2002年]]度は大きく低下した。[[2003年]]度からは若干上昇したが[[2006年]]には66.3%、[[2007年]]度上半期61.1%と再び低下している。また、納付を免除、猶予された人の分を除外せずに算出した国民年金保険料納付率の全国平均は2006年度は49%である。

18年金

====被用者年金一元化====一元化の議論には「財政単位の一元化」と「情報の一元化」がある。財政単位の一元化とは、報酬比例部分の財政単位を一元化して制度設計し、給付と負担を調整する。情報の一元化とは、被保険者情報と受給者情報を一元化し、職業や住所を変えるという移動があったときに一元化された情報をもとに確認する仕組みである。*2006年4月、「被用者年金制度の一元化等に関する基本方針について」が[[閣議]]決定された。公的年金制度の一元化を展望しつつ、民間被用者、[[公務員]]を通じ、将来に向けて、同一の報酬であれば同一の保険料を負担し、同一の公的年金給付を受けるという公平性・安定性を確保する。また、職域部分を廃止し、民間準拠の考え方を踏まえながら、衆参両院の国会議員、公務員の職務や身分の特殊性など公務員制度との関連から新たな仕組みを設けるとした。*2007年4月、共済年金の1・2階部分の保険料率を厚生年金の保険料率(18.3%上限)に統一し、給付を厚生年金制度に合わせる「被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案」が[[国会]]に提出された。
====パートの厚生年金適用の拡大====*2007年4月、上記「被用者年金制度の一元化法案」の中に、[[非正規雇用#形態の種類パートタイム]]労働者の厚生年金(社会保険)の適用の拡大が盛り込まれた。*2011年9月1日からの新しい適用基準は、(1) 週所定労働時間が20 時間以上 (2) 賃金が月額98,000 円以上 (3) 勤務期間が1年以上の条件をすべて満たす人である。*従業員300 人以下(現在、厚生年金の適用対象とされている従業員の人数で算定)の中小零細事業所の事業主は、新しい適用基準を猶予する。*以上は「案」として2007年10月現在、国会提出審議中である。

17年金

負担と給付のバランスを確保するためには、高齢者、女性、若者、障害者の就業を促進し、制度の担い手を拡大してゆくことが重要である。高齢者の就業機会の確保は、高齢者の高い就業意欲に応えつつ、制度の担い手としての役割が期待されることから、増加する年金給付の抑制や高い年金依存度の緩和につながる。また、女性や若年者の無業状態、[[失業]]を改善することが、少子化対策と併せて将来の支え手を増やしていくことになる。
====関連項目====*[[高齢化社会]]*[[少子化]]
===公的年金一元化===公的年金制度の一元化は、[[財政]]の安定性、ライフスタイルに対する中立性、制度間の公平性、制度の利便性(分かりやすさ)などのメリットがある。[[転職]]を繰り返したり、[[サラリーマン#脱サラ脱サラ]]をして[[個人事業主自営業]]に転職した場合、あるいは自営業からサラリーマンに転職した場合など、現在の多様なライフスタイル・キャリア形成に対応した仕組みにする必要がある。また、[[正社員]]と[[非正規雇用非正社員]]との均衡処遇を図り、[[雇用保険]]と年金で共通の適用ルールにすることにより、[[雇用]]形態の選択に対して中立的な仕組みにする必要がある。これは、共助のシステムである本来の機能の在り方という観点からも、非正社員のウエイトが高い産業・企業と低い産業・企業の間において生じている社会保険料負担の不均衡、更には未納・未加入問題や適用範囲の是正の観点からも、重要である。

16年金

==年金制度の課題==年金制度に関する国民の関心は高く、制度の'''持続可能性の確保'''や'''世代間・世代内の不公平の是正'''が求められている。2004年(平成16年)の年金改正法の附則に「社会保障制度全般についての一体的な見直し」が明記されたことにより、同年7月「社会保障の在り方に関する懇談会([[内閣官房長官]]主宰)」が、[[社会保障]]制度を将来にわたり持続可能なものとしていくために、税、保険料等の負担と給付の在り方も含めて議論を開始し、計18回の審議を行った。2006年5月、同懇談会は、社会保障の給付と負担の将来見通しを示し、「今後の社会保障の在り方について」の議論を取りまとめた。来年の通常国会にて、民主党は議員年金、公務員年金、国民年金を一本化する提案を提出する予定。
===急速な少子高齢化===急速な[[少子高齢化]]の進展により、国民の間で年金制度の持続性への不安が高まっている。2004年の年金改正法時における2005年出生率の前提は1.39であったが、実際の出生率は予測を下回り1.25となり[[少子化]]がさらに進んだ。人口減少や地域の過疎化の観点からも少子化に対する危機感が全体に広がっている。
====新人口推計====2006年12月に発表された新人口推計(中位推計)では、[[女性]]の生涯[[未婚率]]を23.5%に見直して[[合計特殊出生率]]を1.26に下方修正した結果、20歳~64歳の現役世代の人口と65歳以上の[[高齢者]]の人口との比率は、2055年には、1.3:1になると修正された。

15年金

''人口関連''*出生率:出生率が低下すると、その世代が被保険者となる約20年後以降に被保険者が減少するため、将来の保険料収入が減少し、所得代替率が低下する。*寿命:寿命が延びると年金給付費が増大し、所得代替率が低下する。''経済関連''*運用利回り:実質的な運用利回りが上昇すると、運用収入が増加し、所得代替率は上昇する。*賃金上昇率:実質賃金上昇率が上昇すると、保険料収入はその分上昇するが、年金給付費の延びはそれ以下(物価により改定)のため、所得代替率は上昇する。*物価上昇率:物価上昇率が低下すると、マクロ経済スライドの調整効果が減殺される(年金の名目額が減少しない範囲で調整する)ため、所得代替率は低下する。*厚生年金被保険者数・労働力率:被保険者数、労働力率が増加すると、保険料収入が増加し、所得代替率は上昇する。*積立金の水準:積立金が増加すると、運用収入が増加し、所得代替率は上昇する。

14年金

===財政検証===*年金事業の収支保険料、国庫負担、給付に要する費用など年金事業の収支について、今後おおむね100年間における見通しを作成し公表する。*マクロ経済スライドの開始今後おおむね100年間において財政の均衡を保つことができないと見込まれる場合には、[[マクロ経済スライド]]の開始年度を定める。(現在、この開始年度は政令で平成17年度と定められ、マクロ経済スライドは発動し得る状態となっているが、平成12~14年度の[[物価スライド]]の特例が解消していないため、マクロ経済スライドによる給付費の調整は行われていない。)*マクロ経済スライドの終了マクロ経済スライドを行う必要がなくなったと認められる場合には、マクロ経済スライドの終了年度を定める。*調整期間マクロ経済スライドによる調整期間中に財政検証を行う場合には、マクロ経済スライドの終了年度の見通しを作成し公表する。
===影響を与える要素===年金財政(所得代替率)に影響を与える主な要素は人口関連と経済関連があり、この2つを勘案して将来の給付水準を設定する。

13年金

===マクロ経済スライド===2004年法改正では、給付と負担の見直し方については、最終的な保険料の水準を法律に規定し('''保険料水準固定方式''')、その保険料の範囲内で年金給付を行うことを基本とした。年金額改定は、新規裁定者(68歳未満)は名目手取り賃金の伸び率(変動率)によるスライド、既裁定者(68歳以上)は物価の伸び率(変動率)によるスライドにより行われる。このため、これまでのように5年ごとの財政再計算(保険料の改定)は行わず、財政状況を検証するため、少なくとも5年に一度、「財政の現況及び見通し('''財政検証''')」が行われる。(初回は平成21年までに実施)
また、財政均衡期間において、必要な積立金が確保できないなど財政の不均衡が見込まれる場合には、賃金や物価の変動と合わせて、少子化(公的年金加入者の減少)や高齢化(平均余命の伸び)といった経済情勢や社会情勢などの変動に応じて、給付の水準を自動的に調整する仕組み('''マクロ経済スライド''')が導入された。[[マクロ経済スライド]]による調整期間における年金額改定は、新規裁定者(68歳未満)は名目手取り賃金の伸び率(変動率)×スライド調整率、既裁定者(68歳以上)は物価の伸び率(変動率)×スライド調整率により行われる。*スライド調整率=公的年金加入者の変動(減少)率×平均余命の伸び率(0.997)*公的年金加入者の変動率=3年度前の公的年金加入者総数の変動率(3年平均) *平均余命の伸び率(0.997)=65歳時の平均余命の伸び率(平均的な受給期間の伸び率は0.3%)

12年金

===有限均衡方式===2004年法改正においては、厳しい年金財政状況を踏まえ、社会経済と調和した持続可能な年金制度を構築するために、給付と負担のあり方の抜本的な見直しが行われた。
将来のすべての期間について給付と負担の均衡を図り(永久均衡方式)将来にわたって一定の積立金を保有することを改め、おおむね100年間で給付と負担の均衡を図り、その財政均衡期間の最終年度に給付費の1年分程度の積立金を保有すること('''有限均衡方式''')とし、積立水準の圧縮分を次世代、次々世代の給付に充てることとした。*有限均衡方式:すでに生まれている世代の一生程度(概ね100年間)の期間(財政均衡期間)について、収入(基礎年金拠出金・国庫負担・積立金)と支出(給付費)の均衡を図っていく財政運営で、定期的な財政検証ごとに財政状況の現況分析と財政状況の見通しを立て、その見通しの期間を徐々に移動させていく財政運営。この場合、積立金の水準は、財政均衡期間の最終年度2100年(2004年財政再計算)において支払準備金程度(約1年分の給付費)とすることとされている。*財政均衡期間:すでに生まれている世代の一生程度(概ね100年間)の期間における収入(基礎年金拠出金・国庫負担・積立金)と支出(給付費)の均衡を図ることとし、そのため定期的に財政検証(財政状況の現状分析)と財政の見通しを立てることとされている期間。

11年金

世代間扶養の考え方に基づく財政運営方式では、保険料負担の急増や給付水準の急激な抑制が不可避となることから、従来から一定規模の積立金を保有することにより、将来の保険料負担の上昇及び給付水準の低下を緩和することとされている。2004年改正前の年金額の改定は、'''給付水準維持方式'''により原則として5年ごとに行う財政再計算に合わせて、[[賃金]]や[[消費]]支出などを総合的に勘案して行われ、保険料負担は段階的に保険料を引き上げる'''段階保険料方式'''がとられていた。また、財政再計算が行われなかった年度は、完全自動[[物価スライド]]により年金額の改定が行われていた。*給付水準維持方式:年金額の給付水準を将来にわたり維持するために必要な費用を賄うための財源(保険料等)を確保する方式。*財政再計算:将来推計人口(出生率や平均余命、予定死亡率)、積立金の予定運用利率や経済情勢(賃金や消費支出の変動)を勘案し、今後の年金額やその給付水準を将来にわたり維持するために、今後必要な負担(保険料額)を5年ごとに見なおすこと。

10年金

===2006年度見通し===2007年3月に公表された「厚生年金の標準的な年金額(夫婦二人の基礎年金額を含む)の見通し【生年度別、65歳時点】-暫定試算-」の経済前提基本ケースで出生中位場合は、1941年度生まれ(65歳)の月額22.7万円(所得代替率59.7%)から所得代替率は徐々に下がり、1986年度生まれ(20歳)では月額37.3万円(所得代替率51.6%)となる。*経済前提基本コース:最近の経済動向を踏まえた設定*出生中位:2055年の合計特殊出生率を1.26に設定
==財政運営=====財政の均衡===日本の年金制度は、現役世代の保険料負担で[[高齢者]]世代の年金給付に必要な費用を賄うという'''世代間扶養'''の考え方を基本に「'''[[公的年金#積立方式と賦課方式賦課方式]]'''」により運営されているが、近年、[[経済]]の長期的停滞の下で[[人口]]の[[少子高齢化]]が急速に進行している。

2008年3月10日月曜日

9年金


===関連項目===*[[年金記録問題]]
==標準的な年金額==2004年改正では、標準的な年金受給世帯における受給し始めた(65歳)時点の年金額(夫婦の基礎年金と夫の厚生年金)の現役世代の平均手取り収入に対する比率('''所得代替率''')で見て、50%を上回る給付水準を確保することとされた。*標準世帯:夫が平均的収入で40年間就業し、妻がその期間全て専業主婦であった世帯
===年金額の見通し===年金を受給し始めた年(65歳)以降の年金額(名目額)は[[物価]]の上昇に応じて改定されるが、通常は物価上昇よりも賃金上昇率の方が大きいため、その時々の現役世代の所得に対する比率は低下していく。[[マクロ経済]]スライドによる調整期間においては、新たに年金を受給し始める者だけでなく、既に年金を受給し始めている者についても年金改定が緩やかに抑制され、年金額の現役世代の所得に対する比率は低下する。ただし、名目の年金額は、物価や賃金が下がる場合を除き、下がる事はない。

8年金

=== 加入者数の推移 ===*[[2006年]]3月末現在の[[公的年金]]の加入者数。厚生労働省資料であるとして報道の読売新聞夕刊2007年(平成19年)10月18日2版4ページの記事から引用。**第1号被保険者、自営業者:400万人、無業者:700万人、パートなど:600万人、その他:600万人**第2号被保険者、厚生年金:3300万人、各種共済年金:500万人**第3号被保険者、民間サラリーマンの配偶者:1100万人
===保険料===国民年金保険料は、[[2005年]]4月から毎年280円ずつ引き上げ、2017年度には月額16,900円に固定する。厚生年金保険料は、2004年10月から保険料率(労使折半)を毎年0.354%引き上げ、2017年9月から18.3%に固定する。*2007年度保険料 :第1号被保険者の国民年金保険料は、月額14,100円(定額)。:第2号被保険者の厚生年金保険料率は、標準報酬月額の14.642%(4月現在)の労使折半。:第3号被保険者の保険料本人負担はなく、配偶者の加入している年金の保険者が負担。

7年金

民間[[サラリーマン]]や[[公務員]]等には、[[厚生年金]]や[[共済年金]]に企業や組織が義務として強制加入ししなければならず、自動的に加入していると見なされる1階部分の老齢基礎年金に加えて2階部分の[[老齢厚生年金]]や退職共済年金を[[受給]]できる。
このほか、任意の選択として個人では[[国民年金基金]]や[[確定拠出年金]]に、企業では社員のために各種の[[企業年金]]に任意に加入して掛金を[[拠出]]し、老後に[[給付]]することができる。
更に勤務先に関係なく、全くの個人の選択として[[個人年金]]とされる[[年金保険]]なども有る。
また、[[障害者]]になった場合には[[障害年金]]が、死亡した場合には[[遺族年金]]が受給できる。
;1階部分([[公的年金]]):最低限の保障を行う'''[[国民年金]]([[基礎年金]]、[[老齢基礎年金]])'''(保険料は定額);2階部分(公的年金)::現役時代の収入に比例した年金を支給する'''[[厚生年金]]'''、'''[[共済年金]]'''(保険料は収入の一定割合);3階部分([[私的年金]])::'''[[企業年金]]'''([[厚生年金基金]]、[[確定給付年金]]等)、[[確定拠出年金]](企業型、個人型)、[[国民年金基金]]

4年金

==日本の年金=====概要===年金制度は、高齢期の生活の基本的部分を支える年金を保証する仕組みである。[[1961年]](昭和36年)4月から国民年金法の適用(保険料の徴収)が開始され、国民皆年金制度が確立された。その後、[[1985年]](昭和60年)の年金制度改正により、基礎年金制度が導入され、現在の年金制度の骨格ができた。
[[産業構造]]が変化し、都市化、[[核家族]]化が進行してきた日本では、従来のように家族内の「私的[[扶養]]」により高齢となった親の生活を支えることは困難となり、[[社会]]全体で高齢者を支える「社会的扶養」が必要不可欠となっており、公的年金制度は、安心・自立して老後を暮らせるための社会的な仕組みである。
===年金制度の歴史===日本で最も古い年金は、[[軍人]][[恩給]]であり、[[1875年]]([[明治]]8年)に「[[陸軍]]武官傷痍扶助及ヒ死亡ノ者祭粢並ニ其家族扶助概則」と「[[海軍]]退隠令」、翌[[1876年]](明治9年)に「陸軍恩給令」が公布された。その後、[[公務員]]を対象に別々に作られた恩給制度を一本にまとめ、[[1923年]]([[大正]]12年)に「[[恩給法]]」が制定された。

3年金

これに対して、[[保険]]の仕組みを取る年金制度を'''[[年金保険]]'''と呼び、被保険者が掛け金や保険料を負担([[拠出]])し、年金財政はこの収入によって確立されることになる。このような受給者にとって有償な年金を'''拠出制年金'''という。この場合には、掛け金や保険料、加入期間(保険料納付期間)、受給者の所得・[[資産]]などに応じて、支給される年金額も異なることが多い。
強制加入の年金保険は世界で初めて[[ドイツ帝国]]初代首相[[オットー・フォン・ビスマルク]]が始めたとされる。
今日、多くの国の公的年金は、年金保険の形を取っている。また、民間[[保険会社]]や[[信託銀行]]、その他の[[会社]]や私的団体によって運営される年金においても、拠出制年金が採用される。

2年金

また、段階によって呼称が変る一例として「[[国民年金]]保険料」として25年間以上掛け続けたものが、一旦[[受給]]者となると「[[老齢基礎年金]]」として受給するもので、受給の段階では「国民」の表記は消えてしまう。一方、[[厚生年金保険]]の場合は「[[老齢厚生年金]]」と呼ばれるものを受給し、「厚生」の表記は無くならない。
== 概説 ==[[1959年]]([[昭和]]34年)11月1日施行の「国民年金法」においては、「養老年金」は、一定の年齢に達した者の中で、一定の[[所得]]以下の者に限定して支給するものであった世帯所得による支給制限の基準額を五十万円とした

1年金

'''年金'''(ねんきん、pension英語などでは年金を[[ペンション]]と言い、また[[宿泊施設]]もペンションと言われるが、日本では「ペンション」と言えば宿泊施設を指す。、annuity)とは、毎年定期的・継続的に[[給付]]される[[貨幣金銭]]のことである。また、年金を保障する仕組み('''年金制度''')も指す。制度の運営手法によって、[[公的年金]]と[[私的年金]]に分類される。また[[個人年金]]は私的年金とは別に分類する場合が多い。
== はじめに ==日本における年金に関しては[[工業規格]]や[[日本農林規格JAS規格]]などと違い、一般的に使われる言葉、[[社会保険庁]](発足予定の[[日本年金機構]])をはじめ、[[社会保険労務士]]など専門家が使う言葉、公式書類に記載される言葉、年金[[拠出]]者や年金[[受給]]者が理解しているとして使う言葉になどに微妙に違いがある。
正式名称が長いだけに略して使われることが多い。年金は個人個人が国やその機関に働きかける[[申請主義]]を採っている[[社会システム理論社会システム]]であるが、年金が持つ加入義務と[[受給]]権利の[[立場]]からそれぞれの[[言葉]]と[[意味]]する事の正しい理解が必要とされる。

sitemap

株式75
株式74
株式73
株式78
株式77
株式76
株式73
株式72
株式71
株式70
株式81
株式80
株式79
株式78
株式77
株式76
株式75
株式74
株式62
株式61
株式60
株式69
株式68
株式67
株式66
株式65
株式64
株式63
株式63
株式59
株式58
株式57
株式56
株式55
株式54
株式53
株式52
株式51
株式50
株式49
株式48
株式47
株式46
株式45
株式44
株式41
株式40
株式39
株式38
株式37
株式36
株式35
株式34
株式33
株式43
株式42
株式27
株式23
株式22
株式32
株式31
株式30
株式29
株式28
株式26
株式25
株式24
株式21
株式20
株式19
株式18
株式17
株式16
株式15
株式14
株式13
株式12
株式11
株式10
株式9
株式8
株式7
株式6
株式5
株式4
株式3
株式2
株式1
先物26
先物23
先物22
先物21
先物20
先物19
先物18
先物17
先物16
先物15
先物14
先物13
先物12
先物25
先物24
先物11
先物10
先物9
先物8
先物7
先物6
先物5
先物4
先物3
先物2
先物1
fx13
fx12
fx11
fx10
fx9
fx8
fx7
fx6
fx5
fx4
fx3
fx2
fx1
19年金
18年金
17年金
16年金
15年金
14年金
13年金
12年金
11年金
10年金
9年金
8年金
7年金
4年金
3年金
2年金
1年金
sitemap
8モノライン
7モノライン
6モノライン
5モノライン
4モノライン
3モノライン
2モノライン
1モノライン
35生命保険
34生命保険
33生命保険
32生命保険
31生命保険
30生命保険
29生命保険
28生命保険
27生命保険
26生命保険
25生命保険
24生命保険
23生命保険
22生命保険
21生命保険
20生命保険
19生命保険
18生命保険
17生命保険
16生命保険
15生命保険
14生命保険
13生命保険
12生命保険
11生命保険
10生命保険
9生命保険
8生命保険
7生命保険
6生命保険
5生命保険
3生命保険
2生命保険
1生命保険
4生命保険
18保険
25保険
24保険
23保険
22保険
21保険
20保険
19保険
17保険
16保険
15保険
12保険
11保険
10保険
14保険
9保険
8保険
7保険
6保険
4保険
3保険
2保険
1保険
保険22
保険23
保険21
保険24
保険20
保険19
保険18
保険17
保険16
保険15
保険14
保険13
保険12
保険11
保険10
保険9
保険8
保険7
保険6
保険5
保険4
保険3
保険2
保険
自動車保険

8モノライン

====会計上の違い====米国においては、CDSはデリバティブであり、FASB133に基づき時価会計の対象となる。これに対し、保証は、保険であり時価会計の対象とならない。====Pay As You Go CDS====近年、保証とCDSのハイブリッドとも言うべき商品であるPay as you go CDSが発展した。これは、スケジュール・ペイメント保証という本来の金融保証の特色は堅持しながらも、契約書式だけはISDAの雛形を使うものである。一般的なCDSと大く異なる点はCSAを結ばない点にある。しかし、伝統的な金融保証と経済効果は同じであるものの契約書式がISDAの雛形を利用するため、FAS133の対象であり、各モノライン保険会社の時価評価の対象となっている。この結果モノライン保険会社は、実際の資金移動を伴わない「計算上の」時価評価損益を発表する場合がある。

7モノライン

金融保証とCDSでは、支払い事由も異なるが、実際の支払い方法も異なる。金融保証がスケジュール通りの支払いのみを行うのに対し、CDSの場合は3CEが起きた場合、現物決済(Physical Delivery)あるいは資金による相殺決済(Cash Settlement)が行われる場合がある。これは、支払い事由が起きた時点で、プロテクションの売り手は元本の相当部分の流動性を用意、保有していることが必要であることを意味する。この時にプロテクションの売り手の信用力が買い手より相対的に弱い場合、プロテクションの買い手は売り手に対するカウンターパーティー・エクスポージャーをマネージするために、ISDAの雛形に基づくCSA(Credit Support Annex)を結ぶ場合がある。参照銘柄の信用状態が悪化したと市場が判断し、CDS価格が上昇する場合、CSAを通してプロテクションの買い手は売り手に対し担保を要求することになる。プロテクションの売り手は当該CDS取引による時価評価損が担保の提供を通して直ちに流動性への必要性へと波及する。この点、モノライン会社は実際の支払い不履行が起きない限りは流動性の提供は必要ない。

6モノライン

====支払い事由からみた違い====金融保証とCDSとの最大の違いは、クレジット・イベント(支払い事由)の発生形態にある。金融保証は原債務が支払われなかった場合にのみ代位して支払う。この支払い事由は「支払い不履行」(Failure to Pay)と呼ばれる。このことは保証がある特定された債務に対する保証であることから生じる。これに対しCDSの場合は主債務が特定されておらず、Reference Entityという広い範囲で指定される。このため、CDSの場合の支払い事由も広く、前記Failure to Payに加えて、破産(Bankruptcy)及びリストラクチャリング(Restructuring)が含まれる。この3つの支払い事由をさしてCDS市場では3CE(3 Credit Event)と称される。この表現を用いると、金融保証の支払い事由は支払い不履行(Failure to Pay)のみであるため、1CEであると表現できる。この様に金融保証の支払い事由はCDSに比べ範囲が狭い。

5モノライン

=== モノライン保険会社に対するリスク分析方法 ===「ストレスをかける」という作業の最大の特色は、それが計算上・概念上のことであるという点である。ある被保証債券の損失額の予想(すなわちキャピタル・チャージ)を増加させるという格付機関の行為は、当然その被保証債券の信用状態が弱まると予想されるときに行われる。しかし、保証会社は「スケジュールペイメント保証」を行っているため、予想損失額の増加にともなう資本を増強する必要性と、実際の保険金の支払いとの間にはかなりの期間的ずれが生じるケースがある。先ほどの30年債の例に戻ると、5年目に支払い不履行をおこした被保証債券発行体のキャピタルチャージは急激に上昇するであろうが、金融保証会社の''実際の支払いは''残り25年間に渡って行われる。しかし、計算上は既存の資本に対するキャピタルチャージが急上昇する結果、最上級格付けを維持するために必要な水準を満たさなくなる可能性もありうる。上記計算式の例を再び引用すると、(実際の資本量÷理論上必要な資本量)の割合が1.25を割れ、それに対する何らかの資本の増強が行われないと「格下げ」要因となる。最も極端なケースにおいては、ある被保証債券が支払い不履行をおこす「可能性が高まった」だけでも、格付け機関は主観的にキャピタルチャージを上げるため、実際の支払い不履行が数年後まで起きないにもかかわらず、格下げがおこる可能性がある。このため、金融保証会社の「格下げリスク」と「流動性リスク」は全く別個のものであり、クレジット分析においては分けて考慮される。

4モノライン

====キャピタル・チャージ====格付け機関は、シャドー格付けを確認すると同時に案件ごとに予想損失を計算(現在価値ベース)し、その分の資本を備えとして充てるよう指導する。この「備え」の部分はキャピタル・チャージと呼ばれる(銀行のリスクウエイトに類似)。もともと、支払い不履行の確率が低く、かつ不履行の場合でも回収率が高いと想定される地方債・ABS優先債が対象であるため、キャピタル・チャージは一般的には元本の数パーセントである。そのキャピタル・チャージを積み上げていくと、その保証会社の会社レベルでの最大予想損失を表すことになる。格付け機関では、様々な信用悪化シナリオ分析に基づきこの最大予想損失額を会社レベルで再計算(増加)する。この過程は「ストレスをかける」と表現され、「大恐慌シナリオ」などが典型的な例である。この様に極端なストレスをかけても十分資本があるという計算結果が出れば、最上級格付けが付与される。関係式で表現すると、分母にストレス後の(増加した)必要資本量(=キャピタルチャージの合計)、分子に現在の保険金支払い余力(=資本量)をおき、1.25倍以上であれば最上級格付というように定義される。

3モノライン

=== 格付機関のモノラインに対する格付手法 ===このように、低い信用リスクをもつ分散された地方債・ABS債の保証ポートフォリオと、スケジュールペイメント保証を組み合わせることにより、モノライン保険会社は格付け機関から高格付けを取得する。その際、格付け機関がとる格付手法は、銀行の格付けと類似している。====シャドー格付け====まず、モノライン保険会社は保証対象となる被保証債券の保証''付与前''の格付けを取得することが義務付けられる。この保証付与前の格付けは「シャドー格付」と呼ばれる。これは、保証を行った場合、前面に出てくるのは保証会社の格付けであり、被保証債券のこの格付けは一般的には発表されないからである。シャドー(影)と呼ばれるのはこのためである。このシャドー格付けをとる過程で、すでに一部の格付け機関からは対象債券に対する分析がなされていることになる。シャドー格付けに関しては、一般的に投資適格以上が保証を付与する最低条件である。

2モノライン

被保証債券をさらに詳しくみると、公的セクター(地方債など)及び、資産担保証券(Asset Backed Securities=ABS)に大別され、一般社債等の保証は行っていない。保証対象の資産担保証券の種類は多様だが共通する基本的な特性として、ABSの優先(シニア)債への保証のみを行い、劣後債への保証は行わないということがあげられる。ABSにおいては、「大数の法則」が働き、信用状態が悪くなっても、劣後債が最初に損失を蒙る。このため、優先債の急激な信用悪化は一般的には無い。また、優先債全額を保証するモノライン保険会社は、一般的にABSの構造上、いわゆるコントロール権をもっている。このコントロール権を利用することにより信用状態が悪化しはじめた場合には積極的に関与するため、一般的なABSの優先債投資家よりは立場が強い。
=== 保証という金融商品の特性 ===金融保証という商品の最大の特色のひとつとして「主債務の''当初約定通りの''元利金の支払いを行う」ということがあげられる。例として、年2回利払いのある、30年後に満期を持つ債券が5年目に支払い不履行をおこしたとする。この場合、金融保証会社は支払い不履行のあった5年目から、30年目までの25年分の6ヶ月毎の利払いと、30年目の元本をその''支払い期日が来たときに''支払う。債券の利率(クーポン)は、一般的に債券元本に対し数パーセントである。この結果、複数の主債務者(債券の発行体)が支払い不履行を行った場合においても保証会社において流動性不足を生じないように計算・分散されている。この様な金融保証は「スケジュール・ペイメント保証」とも言われる。

1モノライン

'''モノライン保険会社'''(-ほけんがいしゃ)は金融保証専門の[[保険]]会社。== 概要 ==モノラインの「モノ」は「単一」を意味し、複数(マルチ)の種類の保険を扱うマルチライン保険会社と対比されて使用される用語である。広義(保険業界)においては、単一種類の保険をあつかう保険会社は全てモノラインと呼ばれるが、狭義(金融業界)においてはニューヨーク州保険業法69条に基づき設立された金融保証を専門に扱う民間保険会社をさす。
=== ビジネス・モデル ===[[地方債]]など信用力の比較的高い[[債券]]への[[保証]]を行い、その際に銘柄、期間を細かく分散させることにより保証会社自らも[[格付け機関格付機関]]より最上級の格付けを獲得し、その信用力をもとに業務を行う。被保証対象は、資本市場における元本の確定している債券やローン(fixed Income)のみを対象とし、株式、為替、商品、不動産等元本の確定していない[[金融商品]]は対象外である。確定したキャッシュ・フローのクレジットリスクのみを保証し、いわゆるマーケットリスクは保証しない。

35生命保険

== 不当な不払い問題 ==[[2005年]]2月に判明した[[明治安田生命保険]]による保険金の不当な不払いの発生を受け、2005年10月、生保各社から過去5年間に保険金や配当金の不払いがあったかどうかを調査した結果が発表された。これによると28社もの生保が不適切な事由で保険金や給付金を支払っていなかったことが明らかになった。
しかし、この調査結果が発表される以前や以後に損保各社による大量不払いが明らかになっており、それに飲み込まれる形で生保の不当な不払いはあまり関心が寄せられず、以降は続々と不正が判明する損保関連の不祥事が目立つようになっていった。
こうして一連の不祥事が終息したかに見えた生保業界であったが、[[2006年]]12月22日の[[ジブラルタ生命保険]]での不払い発覚を皮切りに、新たな保険金の不当不払い事案が生保各社から大量に発覚し始めてしまう事態になった。このため、[[2007年]]2月1日に金融庁が日本の全生命保険会社(38社)に対して、2001年~2005年の過去5年間に行われた保険金不払いの件数や不払い合計金額を調査し、

34生命保険

外交員の側には*ノルマが厳しく、離職率も高い。それ故にきちんとした知識を持った外交員を育てることが難しい*長年、俗に言われる「[[GNP (商法)GNP]]営業」(G:義理・N:人情・P:プレゼント)で勧誘してきたこともあり、特に女性外交員の社会的地位は大変低く、モチベーションを維持することが難しい
などの問題が指摘されている。保険会社の方でも、この問題を解決しようと対策に乗り出しているが、実効は上がっているとは言い難い。トラブルにならないようにする為にも、まず基本的な生命保険の種類とそれぞれの特徴を理解し、自分にとっての「必要性」を検討すること、また、外交員にきちんと納得がいくまで説明を求めるなどの必要がある。
また、こと生命保険においては、募集人や代理店に支払われる募集手数料が高額であり、悪質な募集人や代理店はこれを得るために、違法行為となりうる特典(保険料の立て替えなど)を付与したり、不必要な契約を迫ってくることも実際にあり、何の疑いも無く募集人の言うがままに保険に加入してしまうと最終的に契約者自身の首を絞めてしまう可能性がある。こうした危険から身を守るためにも、募集人の話は鵜呑みにせず、その募集人とは何ら関連性の無い別の方法を用いてしっかりと調べておくことが推奨される。

33生命保険

生命保険文化センターの調査によると、日本人の生命保険平均死亡保険金額の平均は普通死亡保険金額と災害死亡保険金額を合わせて1人あたり約5500万円以上。また、一世帯あたり平均4.9種類の生命保険に加入し、負担する年間保険料は平均65~70万円、一生涯に払い込む保険料の総額は2000万円以上にも及ぶ。即ち、生命保険は住宅の次に高額な商品であり、また長期の契約になることから、契約を決める際にはその必要性・かかるコストを慎重に検討し、契約者個人の人生設計・ライフスタイルも十分勘案する必要がある。
しかし、実際の保険契約は自発的に加入したというものはまれで(そもそも自発的に加入するケースは、保険会社にとってはモラルハザードの点から問題があるので逆に警戒することがある)、勤務先で外交員から勧誘されるままに入ったり、親類・友人・知人などの紹介や勧誘で加入したというケースが多い。そのため、契約書を読まない、読んでも内容を理解していない、といった事例があとを絶たない。
契約者の側には*生命保険に関する知識を得る機会が少なく無関心である(特に、インターネットが広まる前)*それゆえ、外交員の言いなりに保険に加入し、自分が契約した生命保険の内容についての認識が殆どなく、その保障期間や金額・保険金の受け取り条件・一定の年齢で保険料が上がることなどを知らずにトラブルになることもある。

32生命保険

*契約期間が1年を越える生命保険の場合、基本的に[[クーリングオフ]]が出来るが(書面の交付又は第一回保険料支払日から8日以内に手続きを行えば可能)、自ら保険の営業所などに行って契約した場合には、クーリングオフはできない
*保険金の請求事由(死亡等)が発生しても、直ちに保険金の給付が受けられない場合がある。そのため、大金が必要なとき(葬儀等)に保険から現金が用立てられないといったトラブルが発生することがある。保険金の給付までにかかる期間等は加入時に確認する必要がある。
*入院に関する保険金の給付に日数がかかった場合、給付時までに容態が回復したりすると、その状態に応じて給付が減額されることがある。そのため、即時給付の保険と、給付までに日数がかかる保険の場合で、給付額が異なってくる場合がある。(即日給付される保険であれば、後日回復したからといって給付額の減額(返金)を求められたりすることは通常ない)これもよくトラブルの原因になるので、よく確認すべきである。
== 日本の生命保険業界の問題 ==日本においては950種類以上の生命保険商品が存在し、全世帯のうち93%以上は何等かの生命保険に加入していることから、日本は世界的な生命保険大国であるとも言える。

31生命保険

*保険会社が破綻した場合には、その保険は本来なら、無効になる。しかし、契約者への影響が大きいことから、保険会社がお金を出し合い、契約者保護機構というものが作られており、実際には、別の救済保険会社もしくは保険契約者保護機構が保険業務を引き継ぐ事が多い。しかし、バブル崩壊や海外生保の流入により破綻する保険会社が増え、契約者保護機構もそろそろ限界に来ている。
*保険料金額は、月払いより年払い、年払いよりは一括納金(全期前納)の方が、訪問集金より口座振替の方が若干安くなる
*個人で加入するより勤務先の企業などの団体扱いの保険があれば、後者の方が保険料も安くなる
*解約・減額は外交員や営業所以外にも「ライフセンター」などと呼ばれる窓口でやってもらう方法もある
*保険金などの請求権は、原則として支払事由発生日の翌日から起算して3年を経過した時、[[時効]]により消滅する

30生命保険

== 生命保険豆知識 ==
*生命保険には税金がかかる。以下の例は保険金3000万・年収800万円・生命保険以外の財産が無い場合**夫が被保険者・契約者で受取人が妻の場合は保険金に対し税金はかからない**夫が被保険者で妻が契約者と受取人の場合は[[所得税]]と[[住民税]]が保険金にかかり、合計約433万円**受取人を子供にしている場合は保険金は[[贈与税]]の対象となり、約1374万円
*生命保険の保険料は、保障の期間中同額の全期型と一定期間毎に保険料が上がる更新型がある
*契約時に提出する告知書(加入時の自分の健康状態を記入するもの)に偽りがあったり、告知漏れがあった場合には、保険金は下りないこともある(告知義務違反)
*被保険者の同意が無ければ、たとえ夫婦・親子であっても保険の加入は出来ない
*保険料が払えなくなっても、返戻金がある種類の保険であればそれを原資にして保障を継続することが出来る(保険期間を変えずに保険料を少なくする払済保険、保険金額を変えずに期間を短くする延長定期保険など。但し、付随していた特約は自動的に解約となる)

29生命保険

必要な保障というのは、各人の価値観やライフスタイルなどによって多様である。死亡時に必要な補償額は、一概に年齢だけで決められるというものではないし、その他の保障についても同様のことが言える。自分が死んだときに、残された人にとって本当に保険金が必要かというのすら、個々人のライフスタイルによって異なる。コストをかけて生命保険の保障を受けなくても、単なる貯金や公的社会保障制度([[健康保険]]・[[厚生年金]]・[[遺族基礎年金]]・[[生活保護]]など)でも十分ということもある。生命保険ではなく[[損害保険]]で賄える場合もある。また、場合によっては、死んだときの保障よりも入院したり介護状態になったときの方に備えておかなければならないという場合もある。
つまりは、誰しも・万人が生命保険が必要というものではないことになる。個人の貯金や公的な社会保障制度でも足りない分があればそれを生命保険を使って補う、ということを念頭に置くことも、上手に生命保険を活用する方法である。

28生命保険

====団体信用生命保険====[[住宅ローン]]の融資を受け、返済途中に契約者が死亡あるいは高度障害状態になった場合、保険金でローンが全額返済される仕組み。保険料はローン開始時に一括支払いする方法や、ローン金利に上乗せする方法がある。
====団体年金保険====会社等で従業員に対して退職後の年金を支給するために加入する商品。保険料は全額企業負担のもの、一部従業員負担のもの、全額従業員負担のものがある。

27生命保険

=== 団体保険 ===団体保険とは、会社や官公庁等の団体に所属する者全体を保障する生命保険の一種である。団体と生命保険会社で直接契約を行い、単一の契約でその所属員が一括して保障されるようになっている。大量処理によって運営コストが節約できるため個人保険よりも安価に保障が得られることが多い。
====団体定期保険====会社等で被用者の死亡保障を目的とした定期保険商品。保険期間は1年で、1年経過後には自動で更新される。
*総合福祉団体定期保険:企業が弔慰金等の財源として加入する団体定期保険である。基本的に所属員全員が加入し、団体が保険料を負担する。
*団体定期保険(Bグループ):所属員が任意で加入できる定期保険で、企業の福利厚生として行われている。保険料は所属員の負担になるが、個人保険に加入するよりも割安であることが多いが、当然団体から離脱すると(たとえば退職すると)保障は継続しない。

26生命保険

*[[変額保険]]:保険期間中に[[株式]]・[[債券]]などへの投資・運用を行い、その成果に応じて死亡保険金額、解約返戻金額、満期保険金額が変化する保険商品。一般の保険は契約時に定めた保険金額が契約期間中に変化しない(定額保険という)。詳細は[[変額保険]]の項目を参照。
その他、保険商品は多種多様であるが、多くは基本的な死亡保険・生存保険の金額・期間を変化させて組み合わせたものになっているといえる。
==== 主な特約の種類 ====
特約とは、終身保険や定期保険などの主契約に特約として付加出来る、いわば生命保険のオプションとしての存在である。定期付終身保険の場合、正式名称は「定期特約付終身保険」となるため、定期保険部分そのものがベースとなる終身保険の特約である。
*医療特約:けがや病気が原因で入院したときに所定の金額が受け取れるもの(災害入院特約・疾病入院特約)が一般的。

25生命保険

*[[アカウント型保険]]:比較的新しい商品で、毎回一定の保険料のうちいくらかを定期保険、残りをアカウントと呼ばれる積立金に充当し、定期保険終了後に一時払終身保険あるいは年金に移行するタイプの保険である。現在の主力商品となっている。詳細は[[アカウント型保険]]の項目を参照。
*子ども保険:子どもの年齢や小中学校・高校の入学時期に応じて祝い金が支払われたり、満期時に保険金が受け取れるような保険。また、親の死亡時には以降の保険料支払が免除されたり(契約は満期まで継続する)、子どもに対して補助金が給付されたりすることもある。実態としては、子どもを被保険者とする生存保険と、親を被保険者とする死亡保険を組み合わせた複雑な保険商品になっている。
*[[個人年金保険]]:一定期間保険料を払い込み、保険料を積み立てた資金を原資として、契約で定められた年金を受け取るような保険商品。生存保険の一種。詳細は[[個人年金保険]]の項目を参照。

24生命保険

*[[定期付終身保険]]:終身保険と定期保険を組み合わせたもの。終身保険が主契約で定期保険が特約となっていることが多い。子どもが大きくなる前のように、大きな死亡保障が必要なときだけ保障を大きくすることができる。アカウント型を販売していない会社では主力商品となっている。:ややもすると「定期付き終身保険」は、積極的に販売されていない生命保険と思われがちだが、既に保有契約として約1,473万件・約317兆円(2007年9月末)が保険契約としてある。この保険金額は、個人保険契約約1,002兆円に対し、約31.6%という占率がある。特に団塊世代が主契約の保険料支払いを終える60歳や65歳をどんどん迎えることになる。もちろん、「定期保険(特約)の更新型」もだが、「特約の更新型」にも契約者は注意をして検討する必要がある。詳細は[[定期付終身保険]]の項目を参照。

23生命保険

*[[養老保険]]:保険期間内に死亡した場合に保険金が支払われるのはもちろんだが、満期になった時に生存していた場合、満期返戻金として保険金額と同額が支払われるというもの。契約満了時には通常、満期返戻金に加え、配当金が支払われるため、払い込んだ保険料よりも多く受け取れる為「貯蓄型」とも呼ばれる。加入時の年齢や保険期間によっては貯蓄性がない場合もある。これは、生存保険と死亡保険を同額組み合わせることで保険金給付に関わるリスクを減らし、貯蓄的な色合いを濃くしたものである。かつては、途中で解約した場合にも、払込金額以上の金額が戻って来ること、一定条件を満たせば被保険者死亡時にかかる相続税の取り扱いが優遇されていることなどから、本来の目的を離れ、貯金代わりに利用するものも多かったが、バブル崩壊後徐々に[[予定利率]]が減少し、途中解約しては支払金額以上には戻って来なくなったので、この利用法は廃れた。養老保険の場合、満期時に生存していれば確実に保険金が受けられるので、保険料は定期・終身保険よりもさらに割高になっている。[[バブル期]]には当時の高利回りを狙った「'''一時払養老保険'''(契約時に保険料を一時金として一括払いする養老保険)」が流行った時もあった。詳細は[[養老保険]]の項目を参照。

22生命保険

== 現在販売されている保険商品 ===== 個人保険 ===個人保険とは被保険者を個人とする契約を指す。団体保険に対する意味で個人保険と呼ばれる。
==== 主な生命保険の種類 ====現在販売されている保険商品のうち主なものについて述べる。
*[[定期保険]]:一定期間以内の死亡に対して保険金が給付される生命保険。いわゆる「掛け捨て」と呼ばれる保険であり、死亡のみ保障するため、保険期間を満了したときの満期保険金はない。途中解約した場合の解約返戻金は一般に少ない(ただし、保険期間が60年・70年といった長期になった場合、契約後期の解約返戻金の額はそれなりに大きくなる)。保障される金額に対する保険料は比較的安いため、子どもが成長するまでの世帯主など、一定期間、高額な保障が必要とされる場合に利用される。近年では保険料を安く保障額を多くしたいというニーズに対応するため、中途解約の場合、解約返戻金がまったくない商品も開発されている。:一般に「定期保険」と言った場合は保険期間中は保険金額が一定だが、保険期間中に保険金額が増加したり減少したりするものもあり、それぞれ「逓増定期保険」「逓減定期保険」という(契約時に将来の保険金額がすべて固定されているという点で[[変額保険]]とは異なる)。

21生命保険

ただし、最近は保険料を安くしたいというニーズに応えるために、配当金がまったく無い、あるいは利差益のみを配当金として還元するようなタイプの保険商品も設計されている。
=== 危険選択 ===生命保険においては、収支相等の原則を守るために同一の危険を持つ被保険者集団を形成する必要があるが、その裏をかいて不当に利益を得ようとする行為が発生する恐れが常にある。言い換えると生命保険会社と加入者の関係に内在する[[情報の非対称性]]に起因する[[モラル・ハザード]]や[[逆選択]]が常に発生し得る。
そのため、生命保険会社は、同一の危険を持つ被保険者集団を守るために危険選択を行う。具体的には加入時に[[医師]]による診査や告知書などを用いて、特に標準的な危険よりも大きな危険を持つと考えられる加入者を識別している。ただし、それはそのような加入者が保険に加入できないことを意味しない。その加入者と同等の危険を持つ被保険者集団が形成できれば、その集団に対する適切な保険料で保険に加入することができる。
また、支払時にも査定を行い、保険金詐欺を防ぐことが行われている。

20生命保険

純保険料として必要な金額は、前述のように加入者の死亡率と責任準備金の運用利率に基づいて決定され、そのときに用いられる予定値がそれぞれ予定死亡率、予定利率である。
生命保険の付加保険料は、新契約締結にかかる費用、契約の維持にかかる費用、保険料の集金にかかる費用という名目で徴収される。これらについてもあらかじめ必要な額を見込んで保険料計算を行うが、そのときの率を予定事業費率と呼ぶ。
これら予定死亡率、予定利率、予定事業費率はあくまで見込みであるため、実際に保険料として必要となった金額との間に差額が発生する。それらをそれぞれ'''死差益'''、'''利差益'''、'''費差益'''と呼び、この三つを合わせて'''三利源'''と呼ぶ。実際の見込みは保険料の不足が発生しないようかなりの余裕をもって設定されるので、基本的に差額は剰余金として発生する(逆ザヤ(利差損)の問題については「歴史」の節を参照)。これらの剰余金は本来保険料として徴収する必要の無かった金銭であるので、保険会社はこれを契約者に還元する。これを配当金と呼ぶ。

19生命保険

*生死混合保険:死亡保険と生存保険を重ね合わせたもので、被保険者が死亡したときには死亡保険金が、満期時に生存しているときには生存保険金が支払われる。:養老保険は上記死亡保険と生存保険を1対1でブレンドしたもので、保険期間中に死亡したときと満期時に生存しているときに同額の保険金が支払われる。また、終身保険は養老保険の保険期間を生命表の生存者が0になった時点に伸ばしたものである。その時点は会社によって異なっており概ね105歳付近が理論上の満期となっている。
現在多種多様な保険商品が開発、販売されているが、その多くはこれらの保険を適宜組み合わせたものである。
=== 三利源と配当金===生命保険の保険料は、純保険料と付加保険料からなる。純保険料とは、保険金の支払に充てるために徴収される保険料であり、付加保険料とはそれ以外の、保険会社の事業経費として徴収される保険料である。

18生命保険

*死亡保険:保険期間の間に被保険者が死亡したときにのみ保険金が支払われる。:純粋な死亡保険の代表例が定期保険である。定期保険は満期保険金が無いので、満期時には全ての保険料収入を保険金として支払う設計になっている。そのため、責任準備金は満期時にはゼロとなり、保険期間を通じても一般にそれほど多くはならない。
*生存保険:被保険者が満期時に生存しているときに保険金が支払われる。:終身年金はある種の生存保険である。年金支払開始から1年後に生存していれば1回目の年金が、2年後に生存していれば2回目の年金が...と、複数の生存保険が合成されたものと考えればよい。

17生命保険

実際の保険料はこのような運用益を見込んで割引かれている。この割引分を算出するためにあらかじめ運用利率を予定しておく。この利率を'''[[予定利率]]'''とよび、これも保険料計算の重要なパラメータである。ちなみに自然保険料方式の場合、その年に払い込まれた保険料は、すべて保険金として出て行くことが前提になっているので[[予定利率]]という概念がない。予定利率は前払い保険料が発生する平準保険料方式のみの概念である。
=== 解約返戻金 ===平準保険料方式をとると、本来はまだ必要ではない保険料を事前に徴収していることになるので、保険期間中に何らかの理由で保険契約を解約することになると、その保険料のうち一部は契約者に返還される。これを解約返戻金と呼ぶ。
=== 基本的な保険商品のモデル ===生命保険商品は極めて多岐にわたるが、その多くが死亡保険と生存保険の組み合わせによって設計されている。

16生命保険

:「平準保険料方式」とは、自然保険料方式では高齢になると保険料が高くなりすぎ、契約者が保険料負担に耐えられないというデメリットがあるため、それを解消する方式であり、保険期間中の年齢ごとの死亡率を平準化した保険料を徴収する。このため、保険期間の終期近く(つまり高齢)になっても保険料が上昇しない。
平準保険料方式を採用すると、本来は高齢になってから支払うべきであった保険料をあらかじめ若いときに支払うことになるので、結果として生命保険会社は将来の保険料を事前に徴収して留保していることになる。この留保された資金のことを責任準備金と呼ぶ。責任準備金は平準保険料方式の契約者についてそれぞれ存在するので、総合すると大きな資金となり、生命保険会社はこれを元に運用を行い、収益を上げることができる。これは生命保険会社の金融機関としての顔である。

15生命保険

ただし、死亡統計は過去から現在までのデータのみが使用されるのに対し、実際の生死は将来発生することであるから、当然予測に誤差が発生し得る。そのようなときに保険料収入が不足する事態になってはいけないので、保険料計算に用いる死亡率にはあらかじめ安全が見込まれている。このときの死亡率を'''予定死亡率'''と呼び、保険料計算の重要なパラメータのひとつである。
=== 平準保険料と責任準備金 ===生命保険の保険料率は年齢ごとの死亡率を元に計算されるが、その考え方には大きく分けて「自然保険料方式」と「平準保険料方式」がある。:「自然保険料方式」とは、加入者の年齢ごとにその死亡率に応じた保険料を徴収する方式で、一般には高齢になればなるほど死亡率が高くなるため、自然保険料方式による保険料率は年齢とともに上昇する。

14生命保険

また、バブルと前後する時期に、金融の自由化の一環として銀行・保険・証券や損害保険と生命保険など業界の「垣根(ファイヤーウォール)」を取り払い、相互に参入を自由化しようという政策が進展した。保険業界も、生保は損保子会社を作ることにより損保業界への参入が認められ、損保は生保子会社を作って生保業界に参入することが認められ、他業種の保険業界参入も進んだ。

== 生命保険のしくみ ===== 生命表 ===現在の生命保険では、人間の生死にかかわる統計データ、すなわち[[生命表]]が用いられるのが常である。すなわち、生命表による加入者の生死の予測に基づいて、適切な保険料が設定される。

13生命保険

しかし、想定に反して株価は著しく下落し、それによって大幅に目減りした満期返戻金では融資の返済に不足が生じたため、多くの資産家が損害を被ることとなった。このような株価下落時のリスクの説明が不十分だった点や、募集行為上の問題(銀行が積極的に募集に関わったなど)があったことなどにより、保険会社や銀行に対する訴訟が相次いだ。
現在の変額保険は運用方法について、ファンド(投資信託)を顧客が選択することにより分散する、死亡保険金の保険金額は保証されるなどの規制を行うことにより、大きくリスクは減少している。しかし、死亡保険金額を保証することとしたために、海外の類似の商品にくらべ、保険会社が破綻した場合の信用リスクがやや高くなってしまった。(本来、ファンド(投資信託)は運用会社の預かり資産であるため、運用会社や保険会社が破綻してもほとんど影響は無い。)

12生命保険

*[[終身保険]]:保険期間を定めず、生涯にわたって保障される保険。死亡した場合必ず保険金が支払われるので、定期保険と比較すると保障される金額に対する保険料が割高である。途中解約をした場合に解約返戻金が出ることが多いが、通常は払い込んだ保険料の総額よりは少なく、また契約してからの経過年数が短いほど返戻金は少ない。解約返戻金の増減は、払込期間をどのように設定するかによって大きく変わる。60歳で保険料を全て払い込む形(払込期間60歳)にした場合、おおむね60歳前後で払い込んだ保険料よりも解約返戻金のほうが多くなる。保険料を上回るタイミングが60歳より前に来るか、後に来るかは、金利([[予定利率]])よりも、保険会社の経費(予定事業費率)の影響が大きい。したがって一般に「金利([[予定利率]])が高いときの終身保険契約はお得」と言われるが、60歳前後で解約した場合、低金利時より保険料が安いというだけで、最終利回りとしては、あまり高金利のメリットは得られない。また、60歳以降から数年は勢いよく解約返戻金が増加するが、70歳を超えると責任準備金としてプールされる金額が減り、かえって死亡保険料として取り崩される金額が増えるので、解約返戻金の伸びは鈍る。最終的に105歳前後で解約返戻金と保険金が合致する。一方、保険料を一生涯払い込む形(終身払)にした場合、加入時期によっては最終的に70歳代半ばで保険金よりも、払い込んだ金額の方が多くなるという現象が生じるケースが多い。詳細は[[終身保険]]の項目を参照。

11生命保険

===日本における生命保険の歴史=======日本における生命保険の始まり====日本では1868年に[[福澤諭吉福沢諭吉]]がこの制度を紹介しており、1881年(明治14年)7月、日本で最初の保険会社・有限[[明治生命]]保険会社が開業された。だが、当初は「人の生死によって金儲けをするのか」という誤解に基づく批判も多く、その普及には時間がかかった。
戦前までの生命保険会社の特徴としては、法人の形態が現在のような保険業法に定める相互会社ではなく、株式会社が主流であった。また、普通の生命保険会社とは別に、徴兵保険と呼ばれる保険を扱う徴兵保険会社があった。

10生命保険

そこでロンドンの労働者達が、生命保険会社・プルーデンシャル ローン&保険組合(現イギリス・プルデンシャル)[[:en:Prudential plc]]に少額な保険料で葬儀費用を賄える保険を作って欲しいと申し入れ、プルーデンシャルはこれを受け入れて少額・保険料建・週払の労働者向け保険を開発した。このことで、生命保険は一挙に庶民のものとなった。一時期、英国の全世帯の1/3がプルーデンシャルと契約していたとも言われている。当時の労働者にとってこうした問題がいかに深刻であったかを物語る事例といえよう。
また、こうした問題は現在の先進国各国で問題となっており、カナダでは国策として生命保険会社を整備した。国会の議決により労働者向けの生命保険を扱う保険会社を設立している。これが現在の[[マニュライフ生命保険]]である

9生命保険

本来、相互扶助の仕組みであった生命保険だが、平準保険料の採用により、前払いされた保険料が生命保険会社の多額の運用資産となった。そしていわゆる機関投資家として金融市場に大きな影響力を持つ礎となった。
===簡易保険の成立===当初は生命保険は資産家や牧師など特殊な人々のものであった。ところが、産業革命により、都市生活者や給与所得者が急増すると一家の収入の稼ぎ手が亡くなった場合の生活保障や、葬儀費用などが問題となった。19世紀半ばのことである。

8生命保険

ただし、この生命表に基づく計算は、[[戦争]]や[[地震]]等の大規模災害による大量死にまで対応できるものではない。このため、現在の生命保険の多くは、戦争・災害に関する免責事項を設けている。
現在の近代生命保険の発祥は、1762年にイギリス・ロンドンに設立されたThe Equitable Life Assurance Society(※英国・エクイタブル生命)[[:en:Equitable Life]]である。
死亡率に応じて保険料を徴収すると年々保険料が上がっていくことになる(これを自然保険料という)が、同社は、その保険料を契約期間に応じてならす、「平準保険料」方式を採用した。この仕組みは契約期間の前半に将来の保険料を前払いし(この前払いした保険料がいわゆる責任準備金となる)、契約期間の後半に積み立てられた金額を保険料として取り崩すことになる。これが現在の生命保険の保険料計算の主流となっている。

7生命保険

ここで重要なのは、こうした統計ができたことで、「誰がいつ亡くなるかは全くわからないが、年齢ごとの亡くなる人数(死亡率)はおおむねはっきりする」ということである。
これは「大数の法則」と呼ばれるもので、この法則でよく知られる例としてはサイコロを数多く振ると回数が増えるにつれてそれぞれの6つの目の出た回数は六分の一に限りなく近づいていく、というものがある。つまり、生命表での場合、少ない人数だと誰がいつなくなるかは全く分からないが大勢集まると限りなく生命表の死亡率に近づくので、「そのうち何人が何歳のときになくなるかおおよそわかる」ということになる。つまり、各年齢ごとに保険料を払う者の人数と亡くなる(保険金を受け取る)者の人数が推定できる。
こうして、この統計による死亡する確率に応じて保険料に差をつけることが考えられ、18世紀、イギリスで死亡率に基づいた保険料を集める制度ができ、これが今の生命保険のルーツとなっている。

6生命保険

== 歴史 =====生命保険の始まり===17世紀、イギリスのセントポール寺院の牧師たちが葬式代をまかなうために、お互いにいくらかずつ出し合って積み立てていったのが、生命保険の始まりだといわれる(香典前払保険・香典前払組合)。ただし、これは年齢に関係なく同じ金額を払い込んでいたため、高齢者は比較的少ない保険料で保険金を受取ることになり、若い者の不興を買い、10年ほどでなくなったとされる。
===近代的生命保険の成立===この問題を解決するきっかけを作ったのが、「ハレー彗星」で有名な天文学者[[エドモンド・ハリー]]である。彼は実際に調査して人間の寿命を統計化した[[生命表]]を作成した。それは年齢ごとに生存している人死亡した人の割合をまとめた統計データである。

5生命保険

また生命保険では、統計に基づいて、年齢ごとの死亡率に応じた保険料を設定することで、保険会社が受け取る保険料と保険会社によって支払われる保険金が均衡する仕組みになっている。契約者が支払う保険料は、年齢ごとの死亡率に応じた保険料の合計を期間全体で平準化した金額となるのが一般的である。
生命保険会社では、他にも貯蓄や老後の保障といった幅広いニーズに対応するため、「財形貯蓄積立保険」や「[[個人年金保険]]」などの商品を取り扱っているが、これらも広い意味で生命保険と言える。
== 商法上の定義 ==生命保険契約は、当事者の一方(保険者)が相手方(保険契約者)または第三者の生死に関して一定の金額を支払うべきことを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって効力を生ずる契約である(商法第673条)。

3生命保険

などがそうである。徴兵保険とは、養老保険の一種で子供が小さいうちに加入しておくと、その子供が徴兵などのときに保険金が給付されるというものであったようだ。現代で言えば学資保険のような商品といえる。こうしたことからも戦前までは養老保険などの貯蓄性の高い商品がその主流であり、遺族補償の重要性は現代ほどウエイトが高くなかったと言える。
====第二次大戦後の日本の生命保険====戦後、こうした生命保険会社の多くは株式会社から相互会社に衣替えし、再出発した。この時期に女性営業職員による募集が考案され、戦争未亡人の働き口として供給が豊富だったこともあり、各社がこぞってこの方式を採用するようになった。また、核家族化の進展を背景にして、主流の商品は貯蓄性の高い養老保険から保障の大きな定期付養老保険、さらには定期付終身保険へとシフトしていった。

2生命保険

====近年の日本の生命保険====近年の主な動きとして、ガン保険などの[[第三分野保険]]を足がかりとして、外資系保険が参入。これを契機に、日本の保険会社も統廃合が進む。また一方でいわゆるバブル景気による金利の上昇と不動産の価格高騰は、「超長期固定金利」の商品を扱う生命保険会社にも多大な影響を与えた。一つにはバブル崩壊後、高い[[予定利率]]の保有契約を多数抱えてしまったこと、もう一つには、資産運用手段として不動産への投資、あるいは不動産関連の融資を行ったことで、保有資産・貸出資産が不良化してしまったことである。この結果、資産運用による収益力が落ち込むとともに、運用は延びずに[[予定利率]]との差額が発生する「逆ザヤ」により経営基盤が不安定になっていった。当時、経営が悪化していた会社は渋谷付近に本社を置いていたものが比較的多く

1生命保険

一方、バブル期には、株式投資が活発化したことから変額保険が注目された。本来、変額保険はインフレなどにより長い期間の間に保険金が著しく目減りする定額保険の欠点を補うものとして開発された商品だが、相続対策などの名目で生命保険会社各社は銀行と組んで営業活動を行った。その仕組みは、次のとおりである。まず、加入する変額保険契約の保険料は、契約者が銀行からの融資を受けることによって賄う。当時は株価が毎年大幅に上昇していたため、その上昇率を前提とすれば、満期時には融資を返済してもなお余りある保険金が得られる、というプランであった。相続税法上の生命保険金の評価は、現金よりも低くなり、なおかつ保険料分が債務として相続財産から控除されるため、相続対策としては有効である、と顧客に説明されていた。

4生命保険

'''生命保険'''(せいめいほけん)とは、[[人間]]の[[生命]]や傷病にかかわる損失を保障することを目的とする[[保険]]で、契約により、死亡などの所定の条件において保険者が受取人に保険金を支払うことを約束するもの。'''生保'''(せいほ)と略称される。
日本では生命保険会社がこれを行っている。また、これとほぼ同様の商品として、[[日本郵政公社]]の[[簡易保険]](現在は[[かんぽ生命保険]])や、[[農業協同組合農協]]や[[生活協同組合生協]]などの[[共済]]事業の中で「生命共済」の名称で取り扱われているものがある。
[[損害保険]]の扱う[[傷害保険]]に似ているが、損害保険の要件とされる「急激・外来」の条件に拘束されない点で異なる(但し、特約として傷害保険を含む場合もある)。生命保険は、一般に(出生直後などを除けば)年齢とともに高まる病気や死亡の危険を保障するための仕組みであって、外来の事故のみを保障する[[傷害保険]]とは技術的根拠が本質的に異なっている。

2008年3月9日日曜日

18保険

=== 変額保険 ===バブル期には、保険金を投資信託に似た方法で運用し、運用結果で受け取る保険金額が変動する商品が発売された。株価が上昇する局面では保険金額が増える、保険金には別の控除枠があるなど、高騰した不動産の相続税対策として適切とも言われた。バブル崩壊と共に運用実績が落ち込み、元本割れで契約者が損害を蒙ったり、被保険者が自殺を選択する例もある。詳細は[[変額保険]]、[[バブル景気]]を参照のこと。

25保険

本来は更新を機会に再評価を行って保険金額を適切に設定しなおすべきだが、煩雑な再評価手続きや事務手続きを嫌ったり、保険金額低下に伴う掛け金低減、即ち収入減を嫌って、敢えて更新手続きはそのままにしているのではないかとの指摘がある。直接消費者に対応する代理店等は、その収入が契約高に応じて定められるため、敢えて再評価を提言しないのではないか、とも言われるが、新価特約や価額協定特約等で新築費用を保険金額として契約することもできるので、代理店の業務怠慢や知識不足の部分も大きいと思われる。
=== 乗せ換え ==='''乗せ換え'''は、他社の商品を解約させて自社の商品に切り替えさせる事を指して俗に言われるが、自社商品の間でも、より自社に有利な商品に切り替えさせる場合にも言う。殊に、バブル期に高利率を約束して契約した商品を解約させて、バブル崩壊後に設計された低利率の商品へ切り替えさせる場面で用いられる。

24保険

=== 消費者信用団体生命保険 ===[[2006年]][[8月]]頃から明らかになった問題として、消費者信用団体生命保険がある。
大手[[消費者金融]]企業各社が、会社を受取人として債務者に対し生命保険を掛けていた問題である。債務者に'''断り無く生命保険を掛けていた'''ケースもある。これは債務者死亡(自殺・生死不明での夜逃げ等も含む)による貸し倒れリスクとそれによる審査の厳格化の回避、債務を相続した遺族の負担の軽減、債務者死亡後の返済に関わる迷惑を遺族にかけない、などの名目があるものの、[[2005年]]度でこの消費者信用団体生命保険で保険金を受け取ったケースは4万件弱あり、さらに死亡原因の半数の2万件が不明、その1割が[[自殺]]であったことが判明した。またこの保険金を消費者金融企業各社が合計300億円受領していたこと、そして一部には弁済金以上の保険金を獲得した例もあると判明した。

23保険

バブル崩壊後は資金の運用利回りを確保することが出来ず、従前に顧客に約束した利率の方が高くなる所謂'''逆ざや'''状態に陥った。これを解消するために、顧客に対して低利率の商品へ切り替えさせることが推奨された。この際に、商品の不利な情報(利率の低下)について充分に説明せずに、特約の追加や、それまでの契約の返戻金を組み込んで月々の支払額を下げるなどして、顧客に不利な情況をカモフラージュして契約に至らせ、実質的に予定利率を引き下げて顧客の受け取る保険金を削減する。
=== 死差益 ===保険金の運用の3つの要素として、利差損益(市場での運用益と支払いの利率の差)、費差損益(業務費用の予算と実際の費用の差、いわゆる節約で益を出す)、そして死差損益(商品設計上の死亡率と、実際の死亡率との差)がある。この中で、死差損益については、人口統計等から算出される死亡率を基に商品設計を行う一方で、保険加入時には医師の診断や告知を要求してリスクの高い顧客を排除することから、概して契約者の範囲では死亡率が低くなる傾向にあり、恒常的に利益を生む、という指摘がある。また、戦後日本では概ね寿命は延び続け、死亡率が下がる傾向にあり、対して商品設計に用いる従前の統計では死亡率が高いことから、この面でも恒常的に利益を生む、という指摘がある。

22保険

遺族にとっては、与り知らぬところで金のやりとりが行われること、また、死亡診断書などが勝手に取り扱われることについて強い憤りを感じる事が多い。また、言うなれば赤の他人に保険をかける行為を容認することは、保険金目当ての殺人行為を助長するという声もある。
=== 火災保険 ===火災保険における保険金額は原則として対象となる建物の評価額を上限として設定される。一般に評価額は年月と共に逓減していくが、契約そのものは維持し、更新の際にも保険金額を見直さずに済まして、評価額に対して過大な保険金額、そして掛け金が維持されることが珍しくない。しかし、保険金支払いにおいては建物の時価額が基準となるため、全損の場合でも、保険金額が満額で支払われず、減額される例が見られる。ただし、評価額を超過した分の保険金額に対応する部分は無効となるため、契約者が過大に支払った保険料は返還される。(逆に保険金額<時価額で差が著しい'''一部保険'''の場合、その割合に応じて削減されるため、'''超過保険'''のほうが消費者利益保護になるという面もある。)

21保険

一方で、保険会社側も大手消費者金融各社からの多額の保険料収入を考慮し、契約より2年以上経過しての保険金支払いに際しては死因等を充分に調査せず、安易に死亡保険金支払いに応じていたことも判明している。
消費者金融業者側は契約書を介して債務者に対し被保険者になる事を通知していると主張しているが、実際には債務者が己の命に保険金をかけられている事が充分に認識されていない、とする調査結果もある。
これらの状況から、正常な弁済の見込みが薄ければ回収を優先して債務者の生命を顧みず、保険金による弁済をも視野に入れた過酷な債務取立てに走る可能性を指摘し、非難する声が高まった。こうした批判を受け、[[金融庁]]は[[2006年]][[9月15日]]、保険会社及び生命保険協会に対して、消費者信用団体生命保険の加入の際に、被保険者である債務者に対しわかりやすく説明することや、保険金支払い時の遺族への確認の方法などを厳格に行うよう指導した。

20保険

これに対して大手[[消費者金融]]の[[プロミス]]は、世間の非難の声を不快とし、債務者の家族の損害を減らすための適切な運用を目指すのではなく、[[2006年]][[10月1日]]より消費者団体信用生命保険を解約し、今後は取り扱わないことを発表した。他の消費者金融会社も概ね同様の動きをとっている。
ただし、同様に銀行やローン会社等においても、融資の際の保証として生命保険に加入させるケースは多い。これらはあまり問題にされていない。
=== 企業が従業員にかける生命保険 ===企業が、従業員に'''断り無く'''生命保険をかけている例がある。企業側の主張としては、労働力の欠如で生じる業務上の損害を埋め合わせる為、また、欠員を補充する費用を獲得するため、としているが、従業員の生命をもって利潤を得る行為であると非難する声もある。一方で、保険会社側も、保険金支払いに際しては経緯や死因等を充分に調査せず、安易に死亡保険金支払いに応じていたことも判明している。

19保険

これに対して、バブル崩壊後の経営の窮状を訴える際には、もっぱら費差損益にかかる経費削減・企業努力の限界と、利差損益における逆鞘を訴え、上記の「乗せ換え」による、予定利率削減の動きを正当化する主張がなされた。さらには、利率の逆ざやをアピールした上で、既存契約についても保険会社による一方的な予定利率変更(予定利率削減)のスキームを確立する試みがなされている。一方で、死差損益に関しては触れず、恒常的に利益を生みやすい要素を隠匿して顧客に不利益を転嫁している、という指摘がなされている。

17保険

== 保険の問題点 ===== 保険金詐欺 ===前述のように、保険は金銭面での損失をカバーするシステムである事から、それを逆手にとって不正に金銭を得ようとする事件が後を絶たない。そもそも保険契約者と保険会社の関係は、典型的なプリンシパル・エージェント関係とみなされており、[[逆選択]]や[[モラル・ハザード]]が発生する危険を常に背負っているといえる。保険における逆選択とは、リスクがより大きな者が、保険加入に際してより強い動機を持つため、結果として保険加入者がリスクのより大きな者で占められてしまう傾向をさし、モラル・ハザードとは、保険加入によって保障(補償)が得られるために、加入者がリスクを回避することを控えてしまうことをさす。

16保険

例えば生命保険の場合は、被保険者となる人物に過度の保険に加入させ、その人物を意図的に[[殺害]]・または重度の[[障害]]などを負わせる事によって、多額の[[保険金]]を得ようとしたり、損害保険の場合は対象となる物を意図的に損壊・または損壊したなどと偽って報告することにより保険金を貰い、新しい物を購入したり実際の収入に結びつけたりしようとする事がある。中には実際に掛かった費用(修理費用など)を過大申告し、その差額分の金銭を得ようとする事もある。

15保険

すなわち、前述のような保険会社による不正として取り上げられている保険金の支払い拒否は、'''正当な理由で拒否されたものではなく、不当な理由で支払いを拒否されたために問題になったものである。'''これについて詳しくは[[保険金不払い事件]]を参照されたい。
[[新潟県中越地震]]では家屋の倒壊のため補償の調査をしたが、[[建築学]]的には全壊の状態にもかかわらず保険金の支払いを避けるため、外見上半分残っているのは一律半壊の扱いをする保険会社もあったといわれる。これは、営業部門に比べ事故査定(損害調査)部門の人員を減らし、専門の子会社への業務委託を進めてきた構造的な問題から来ていると言われる。

12保険

これらは保険金を騙し取る行為であり、「'''保険金詐欺'''」という立派な[[犯罪]]となる。このような犯罪行為を阻止するため、保険会社は、加入時あるいは支払時に契約内容あるいは請求内容を審査したり、保険会社間で契約情報や事故情報を交換したり、調査会社に委託してその保険事故が正当なものであるかどうかを調査することがある。児童を対象とした生命保険では犯罪を誘引しないよう保険金の上限が低く抑えられている。また、成人を対象とした場合でも保険金がある一定額を超えると保険会社間で情報交換をして被保険者に複数の生命保険会社から多額の保険金がかけられていないか調査する仕組みとなっている。

11保険

=== 保険金の支払い拒否 ===上記は保険金を受け取る側の不正行為であるが、近年は保険金を支払う側、つまり保険会社による不正が話題になっている。[[バブル経済]]の崩壊以降の低金利政策によって多額の逆ざやを抱えることとなった保険会社は、逆ざやをカバーするための収益の改善に躍起となった。この結果、保険会社にとってコストとなる保険金の支払いを渋る状況が生まれた。代表的なものは[[2005年]]に発覚した[[明治安田生命保険]]によるものであり、[[明治安田生命保険]]はこれで2度にわたり[[業務停止命令]]を受けることとなったが、その後このような不正な理由で支払い拒否をしていた保険会社が続々と判明し、保険業界全体に不正が蔓延していたことが明らかになる。
なお、保険金の支払い拒否自体はあってしかるべきであることには注意が必要である。保険金詐欺のようなケースはもちろん、加入時に病気にかかっていることを保険会社に正しく報告しない([[告知義務違反]])ようなケースでも保険金が支払われないことがある。病気にかかっている、つまり死亡のリスクが高いことに見合う保険料の支払いを逃れようとする詐欺的行為と見なされるためである。

10保険

=== 行政処分事例 ===[[保険金不払い問題]]という大規模な不正を発生させるに至ってしまうなど、近年は保険会社やその商品を扱う代理店での不正行為が頻発しており、許し難い不正が判明した保険会社に対して金融庁は度々[[行政行為行政処分]]を与えてきた。金融庁は、金融業者の起こした不正行為に対する行政処分の事例集を発表している。以下はこの事例集から保険会社および代理店の不正行為が原因で行政処分を受けた保険会社のみに絞り込み簡略化したものである。

14保険

また、大手損害保険会社を中心に自動車保険金の支払い漏れが相次いで明るみに出て、監督する金融庁による厳しい処分を受けた会社もあった。これは「損害が発生していても契約者からの請求がなければ支払わない」という姿勢にも起因するが、過度の商品開発競争により各種の特約が作られたものの、営業最優先の体質により、事故査定部門への案内不足やシステムチェック機能を開発の怠慢が発生したことも大きな要因と考えられている。
=== 募集手数料体系 ===保険会社の新契約偏重・利益先行型姿勢の煽りを受け、一部の保険販売員や募集人・保険代理店が同じく新契約偏重・利益先行の姿勢をとるようになり、新契約締結のためならば違法行為をしても構わないと考える者が増えてきており、[[道徳モラル]]の低下が進んでいる。これは、新契約の締結によって手厚い募集手数料や待遇(高額な商品の贈呈など)が受けられるというシステムがその一因になっており、契約者軽視かつ[[貨幣金]]を重視するようになっている業界の姿勢が問題となっている。

9保険

例えば生命保険においては、募集人や代理店へ支払われる募集手数料体系が顧客サービスの品質を大きく下げている。手数料の支払いには'''L字払い'''(新規契約を締結するとまず大きな手数料が支払われ、その後数年間に渡り一定の手数料が支払われるというもの。初年度の手数料は、顧客が支払った初年度の保険料と同額以上、といった保険会社もある)という独特のシステムが定着しているが、これは言わば「新規契約を最重要視させる」システムであり、それゆえ既存顧客への対応が悪化する最大の要素となっているほか、中にはその大きな募集手数料を狙った悪質な代理店により、自身へ支払われる募集手数料が切れるタイミングを見計らって既存契約者へ新たな契約を提案したり、また過大な内容の契約や必要の無い契約を推し進めるなどして新契約を締結させてしまい、最終的に顧客に損害を与えてしまう事も実際にある。
このような募集手数料体系は、募集人や代理店のモラル低下を招き、保険業法に違反する行為に走らせてしまう原因となっているため、無視できない状況下にある。また銀行代理店など大手代理店に対して、各保険会社が競って手数料をつりあげており、契約者軽視となりやすい状況がある。

8保険

==保険会社==[[保険業法]]第3条の定めにより、保険会社は生命保険会社と損害保険会社に分かれ、いずれも内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ行うことができない。また、一つの会社が生命保険業と損害保険業を同時に行うことはできない。
外国の保険会社が日本に支店や支社を開設して日本で営業する場合も同様の規制があり、免許が必要(保険業法第185条)。===保険会社一覧===

7保険

== 保険商品 ===== 保険商品に対する規制 ===保険商品は、[[約款保険約款]]に基づいて締結される保険契約である。保険約款は保険会社が定めた契約条項であり、契約の基本的な内容を定めた普通保険約款と、普通保険約款の規定を変更または補完している特別約款から成る。保険会社は経営上、多数の契約を迅速に締結する必要があるため、この契約方式を採用している。一方で、保険契約者・被保険者にとって不利な条項となるおそれもあるため、次の規制が講じられている。*商法等の法律により保険約款の内容を規制(立法)*金融庁による保険約款の認可・届出制(行政)*解釈が分かれる場合は「'''作成者不利の原則'''」により契約者を保護、著しく不当な条項は裁判で無効(司法)

6保険

===収支相等の原則===保険会社が同一のリスクを持つ保険契約者の集団から集めた保険料の総額と、保険会社がその集団の中で支払う保険金の総額とは等しくなくてはならない。これを収支相等の原則といい、保険が継続的に安定して運営されるために要請される。収支相当の原則は、給付・反対給付均等の原則を時間的・空間的に拡張したものであり、後者は前者の十分条件であるが必要条件ではない。また、収支相等の原則は、同一のリスクを持つ保険契約者が集団として存在していることを前提としていることから理解できるように、同一のリスクを持つ者が多数集まることによって不確実なリスクを合理的に処理する仕組みであることを示している。

4保険

このような突発的事件・事故で保険会社の経営は危機に陥いる可能性があるため、[[ソルベンシー・マージン比率]]が公開されている。この指標は、保険会社のリスク耐久性を意味している。
==保険の原理=====大数の法則===確率論・統計学で確立されている[[大数の法則]]をわれわれの社会におけるさまざまなリスクに適用すると、個々の局面で捉えると予測困難で、かつ致命的な損害になりうるようなリスクであっても、同等の危険を十分な数集めることによって確率的に予測可能になり、また経済的損失も変動の少ないものになりうると考えられる。

3保険

一部の保険組織では、一般の[[個人]]や[[企業]]から保険料の形で徴収し、集めた保険料で[[株式]]を購入したり、[[企業]]などに貸し出したり([[融資]])して、資金の運用を行ったりすることもある一方、他の保険会社へ再保険をかけて、保険会社から見ての[[リスク]](=万一の事故が発生した際の[[保険金]]支払いリスク)を分担していたりする。
[[保険契約]]に該当する事件、事故や災害([[保険事故]]という)が発生した場合、所定の手続きを行って、保険金を受け取るが、[[アメリカ同時多発テロ事件]]のような異常な事件が発生した場合、大成火災海上保険のように、[[再保険]]取引で大きな損失を出し、保険金の財源が底を尽きて破綻した会社もある。

2保険

民間の保険は、[[生命保険]]と[[損害保険]]、疾病(しっぺい)保険などのいわゆる[[第三分野保険第三分野の保険]]の三つの業態に分かれている。保険期間は、生命保険が数年~終身と長期にわたり、貯蓄的な性格を持つものがほとんどであり、損害保険は一日~一年程度の短期の掛け捨てのものが多い。両者の中間的位置付けである第三分野の保険期間は、一年~終身であるものが多い。
民間の保険会社は、[[保険業法]]による免許事業制であり、生命保険業免許を持つ生命保険会社と、損害保険業免許を持つ損害保険会社が存在する。第三分野の保険は、両者とも取り扱う。
上記の保険に似たものには、主に[[生活協同組合]]や[[農業協同組合]]などの[[協同組合]]組織による「'''[[共済]]'''」もある。この[[共済]]のうち、主務官庁を持たない、いわゆる無認可共済については、2005年に[[保険業法]]が改正され、将来的に保険会社または[[少額短期保険業者]]のいずれかに移行することが義務付けられている。