2008年3月9日日曜日

18保険

=== 変額保険 ===バブル期には、保険金を投資信託に似た方法で運用し、運用結果で受け取る保険金額が変動する商品が発売された。株価が上昇する局面では保険金額が増える、保険金には別の控除枠があるなど、高騰した不動産の相続税対策として適切とも言われた。バブル崩壊と共に運用実績が落ち込み、元本割れで契約者が損害を蒙ったり、被保険者が自殺を選択する例もある。詳細は[[変額保険]]、[[バブル景気]]を参照のこと。

25保険

本来は更新を機会に再評価を行って保険金額を適切に設定しなおすべきだが、煩雑な再評価手続きや事務手続きを嫌ったり、保険金額低下に伴う掛け金低減、即ち収入減を嫌って、敢えて更新手続きはそのままにしているのではないかとの指摘がある。直接消費者に対応する代理店等は、その収入が契約高に応じて定められるため、敢えて再評価を提言しないのではないか、とも言われるが、新価特約や価額協定特約等で新築費用を保険金額として契約することもできるので、代理店の業務怠慢や知識不足の部分も大きいと思われる。
=== 乗せ換え ==='''乗せ換え'''は、他社の商品を解約させて自社の商品に切り替えさせる事を指して俗に言われるが、自社商品の間でも、より自社に有利な商品に切り替えさせる場合にも言う。殊に、バブル期に高利率を約束して契約した商品を解約させて、バブル崩壊後に設計された低利率の商品へ切り替えさせる場面で用いられる。

24保険

=== 消費者信用団体生命保険 ===[[2006年]][[8月]]頃から明らかになった問題として、消費者信用団体生命保険がある。
大手[[消費者金融]]企業各社が、会社を受取人として債務者に対し生命保険を掛けていた問題である。債務者に'''断り無く生命保険を掛けていた'''ケースもある。これは債務者死亡(自殺・生死不明での夜逃げ等も含む)による貸し倒れリスクとそれによる審査の厳格化の回避、債務を相続した遺族の負担の軽減、債務者死亡後の返済に関わる迷惑を遺族にかけない、などの名目があるものの、[[2005年]]度でこの消費者信用団体生命保険で保険金を受け取ったケースは4万件弱あり、さらに死亡原因の半数の2万件が不明、その1割が[[自殺]]であったことが判明した。またこの保険金を消費者金融企業各社が合計300億円受領していたこと、そして一部には弁済金以上の保険金を獲得した例もあると判明した。

23保険

バブル崩壊後は資金の運用利回りを確保することが出来ず、従前に顧客に約束した利率の方が高くなる所謂'''逆ざや'''状態に陥った。これを解消するために、顧客に対して低利率の商品へ切り替えさせることが推奨された。この際に、商品の不利な情報(利率の低下)について充分に説明せずに、特約の追加や、それまでの契約の返戻金を組み込んで月々の支払額を下げるなどして、顧客に不利な情況をカモフラージュして契約に至らせ、実質的に予定利率を引き下げて顧客の受け取る保険金を削減する。
=== 死差益 ===保険金の運用の3つの要素として、利差損益(市場での運用益と支払いの利率の差)、費差損益(業務費用の予算と実際の費用の差、いわゆる節約で益を出す)、そして死差損益(商品設計上の死亡率と、実際の死亡率との差)がある。この中で、死差損益については、人口統計等から算出される死亡率を基に商品設計を行う一方で、保険加入時には医師の診断や告知を要求してリスクの高い顧客を排除することから、概して契約者の範囲では死亡率が低くなる傾向にあり、恒常的に利益を生む、という指摘がある。また、戦後日本では概ね寿命は延び続け、死亡率が下がる傾向にあり、対して商品設計に用いる従前の統計では死亡率が高いことから、この面でも恒常的に利益を生む、という指摘がある。

22保険

遺族にとっては、与り知らぬところで金のやりとりが行われること、また、死亡診断書などが勝手に取り扱われることについて強い憤りを感じる事が多い。また、言うなれば赤の他人に保険をかける行為を容認することは、保険金目当ての殺人行為を助長するという声もある。
=== 火災保険 ===火災保険における保険金額は原則として対象となる建物の評価額を上限として設定される。一般に評価額は年月と共に逓減していくが、契約そのものは維持し、更新の際にも保険金額を見直さずに済まして、評価額に対して過大な保険金額、そして掛け金が維持されることが珍しくない。しかし、保険金支払いにおいては建物の時価額が基準となるため、全損の場合でも、保険金額が満額で支払われず、減額される例が見られる。ただし、評価額を超過した分の保険金額に対応する部分は無効となるため、契約者が過大に支払った保険料は返還される。(逆に保険金額<時価額で差が著しい'''一部保険'''の場合、その割合に応じて削減されるため、'''超過保険'''のほうが消費者利益保護になるという面もある。)

21保険

一方で、保険会社側も大手消費者金融各社からの多額の保険料収入を考慮し、契約より2年以上経過しての保険金支払いに際しては死因等を充分に調査せず、安易に死亡保険金支払いに応じていたことも判明している。
消費者金融業者側は契約書を介して債務者に対し被保険者になる事を通知していると主張しているが、実際には債務者が己の命に保険金をかけられている事が充分に認識されていない、とする調査結果もある。
これらの状況から、正常な弁済の見込みが薄ければ回収を優先して債務者の生命を顧みず、保険金による弁済をも視野に入れた過酷な債務取立てに走る可能性を指摘し、非難する声が高まった。こうした批判を受け、[[金融庁]]は[[2006年]][[9月15日]]、保険会社及び生命保険協会に対して、消費者信用団体生命保険の加入の際に、被保険者である債務者に対しわかりやすく説明することや、保険金支払い時の遺族への確認の方法などを厳格に行うよう指導した。

20保険

これに対して大手[[消費者金融]]の[[プロミス]]は、世間の非難の声を不快とし、債務者の家族の損害を減らすための適切な運用を目指すのではなく、[[2006年]][[10月1日]]より消費者団体信用生命保険を解約し、今後は取り扱わないことを発表した。他の消費者金融会社も概ね同様の動きをとっている。
ただし、同様に銀行やローン会社等においても、融資の際の保証として生命保険に加入させるケースは多い。これらはあまり問題にされていない。
=== 企業が従業員にかける生命保険 ===企業が、従業員に'''断り無く'''生命保険をかけている例がある。企業側の主張としては、労働力の欠如で生じる業務上の損害を埋め合わせる為、また、欠員を補充する費用を獲得するため、としているが、従業員の生命をもって利潤を得る行為であると非難する声もある。一方で、保険会社側も、保険金支払いに際しては経緯や死因等を充分に調査せず、安易に死亡保険金支払いに応じていたことも判明している。

19保険

これに対して、バブル崩壊後の経営の窮状を訴える際には、もっぱら費差損益にかかる経費削減・企業努力の限界と、利差損益における逆鞘を訴え、上記の「乗せ換え」による、予定利率削減の動きを正当化する主張がなされた。さらには、利率の逆ざやをアピールした上で、既存契約についても保険会社による一方的な予定利率変更(予定利率削減)のスキームを確立する試みがなされている。一方で、死差損益に関しては触れず、恒常的に利益を生みやすい要素を隠匿して顧客に不利益を転嫁している、という指摘がなされている。

17保険

== 保険の問題点 ===== 保険金詐欺 ===前述のように、保険は金銭面での損失をカバーするシステムである事から、それを逆手にとって不正に金銭を得ようとする事件が後を絶たない。そもそも保険契約者と保険会社の関係は、典型的なプリンシパル・エージェント関係とみなされており、[[逆選択]]や[[モラル・ハザード]]が発生する危険を常に背負っているといえる。保険における逆選択とは、リスクがより大きな者が、保険加入に際してより強い動機を持つため、結果として保険加入者がリスクのより大きな者で占められてしまう傾向をさし、モラル・ハザードとは、保険加入によって保障(補償)が得られるために、加入者がリスクを回避することを控えてしまうことをさす。

16保険

例えば生命保険の場合は、被保険者となる人物に過度の保険に加入させ、その人物を意図的に[[殺害]]・または重度の[[障害]]などを負わせる事によって、多額の[[保険金]]を得ようとしたり、損害保険の場合は対象となる物を意図的に損壊・または損壊したなどと偽って報告することにより保険金を貰い、新しい物を購入したり実際の収入に結びつけたりしようとする事がある。中には実際に掛かった費用(修理費用など)を過大申告し、その差額分の金銭を得ようとする事もある。

15保険

すなわち、前述のような保険会社による不正として取り上げられている保険金の支払い拒否は、'''正当な理由で拒否されたものではなく、不当な理由で支払いを拒否されたために問題になったものである。'''これについて詳しくは[[保険金不払い事件]]を参照されたい。
[[新潟県中越地震]]では家屋の倒壊のため補償の調査をしたが、[[建築学]]的には全壊の状態にもかかわらず保険金の支払いを避けるため、外見上半分残っているのは一律半壊の扱いをする保険会社もあったといわれる。これは、営業部門に比べ事故査定(損害調査)部門の人員を減らし、専門の子会社への業務委託を進めてきた構造的な問題から来ていると言われる。

12保険

これらは保険金を騙し取る行為であり、「'''保険金詐欺'''」という立派な[[犯罪]]となる。このような犯罪行為を阻止するため、保険会社は、加入時あるいは支払時に契約内容あるいは請求内容を審査したり、保険会社間で契約情報や事故情報を交換したり、調査会社に委託してその保険事故が正当なものであるかどうかを調査することがある。児童を対象とした生命保険では犯罪を誘引しないよう保険金の上限が低く抑えられている。また、成人を対象とした場合でも保険金がある一定額を超えると保険会社間で情報交換をして被保険者に複数の生命保険会社から多額の保険金がかけられていないか調査する仕組みとなっている。

11保険

=== 保険金の支払い拒否 ===上記は保険金を受け取る側の不正行為であるが、近年は保険金を支払う側、つまり保険会社による不正が話題になっている。[[バブル経済]]の崩壊以降の低金利政策によって多額の逆ざやを抱えることとなった保険会社は、逆ざやをカバーするための収益の改善に躍起となった。この結果、保険会社にとってコストとなる保険金の支払いを渋る状況が生まれた。代表的なものは[[2005年]]に発覚した[[明治安田生命保険]]によるものであり、[[明治安田生命保険]]はこれで2度にわたり[[業務停止命令]]を受けることとなったが、その後このような不正な理由で支払い拒否をしていた保険会社が続々と判明し、保険業界全体に不正が蔓延していたことが明らかになる。
なお、保険金の支払い拒否自体はあってしかるべきであることには注意が必要である。保険金詐欺のようなケースはもちろん、加入時に病気にかかっていることを保険会社に正しく報告しない([[告知義務違反]])ようなケースでも保険金が支払われないことがある。病気にかかっている、つまり死亡のリスクが高いことに見合う保険料の支払いを逃れようとする詐欺的行為と見なされるためである。

10保険

=== 行政処分事例 ===[[保険金不払い問題]]という大規模な不正を発生させるに至ってしまうなど、近年は保険会社やその商品を扱う代理店での不正行為が頻発しており、許し難い不正が判明した保険会社に対して金融庁は度々[[行政行為行政処分]]を与えてきた。金融庁は、金融業者の起こした不正行為に対する行政処分の事例集を発表している。以下はこの事例集から保険会社および代理店の不正行為が原因で行政処分を受けた保険会社のみに絞り込み簡略化したものである。

14保険

また、大手損害保険会社を中心に自動車保険金の支払い漏れが相次いで明るみに出て、監督する金融庁による厳しい処分を受けた会社もあった。これは「損害が発生していても契約者からの請求がなければ支払わない」という姿勢にも起因するが、過度の商品開発競争により各種の特約が作られたものの、営業最優先の体質により、事故査定部門への案内不足やシステムチェック機能を開発の怠慢が発生したことも大きな要因と考えられている。
=== 募集手数料体系 ===保険会社の新契約偏重・利益先行型姿勢の煽りを受け、一部の保険販売員や募集人・保険代理店が同じく新契約偏重・利益先行の姿勢をとるようになり、新契約締結のためならば違法行為をしても構わないと考える者が増えてきており、[[道徳モラル]]の低下が進んでいる。これは、新契約の締結によって手厚い募集手数料や待遇(高額な商品の贈呈など)が受けられるというシステムがその一因になっており、契約者軽視かつ[[貨幣金]]を重視するようになっている業界の姿勢が問題となっている。

9保険

例えば生命保険においては、募集人や代理店へ支払われる募集手数料体系が顧客サービスの品質を大きく下げている。手数料の支払いには'''L字払い'''(新規契約を締結するとまず大きな手数料が支払われ、その後数年間に渡り一定の手数料が支払われるというもの。初年度の手数料は、顧客が支払った初年度の保険料と同額以上、といった保険会社もある)という独特のシステムが定着しているが、これは言わば「新規契約を最重要視させる」システムであり、それゆえ既存顧客への対応が悪化する最大の要素となっているほか、中にはその大きな募集手数料を狙った悪質な代理店により、自身へ支払われる募集手数料が切れるタイミングを見計らって既存契約者へ新たな契約を提案したり、また過大な内容の契約や必要の無い契約を推し進めるなどして新契約を締結させてしまい、最終的に顧客に損害を与えてしまう事も実際にある。
このような募集手数料体系は、募集人や代理店のモラル低下を招き、保険業法に違反する行為に走らせてしまう原因となっているため、無視できない状況下にある。また銀行代理店など大手代理店に対して、各保険会社が競って手数料をつりあげており、契約者軽視となりやすい状況がある。

8保険

==保険会社==[[保険業法]]第3条の定めにより、保険会社は生命保険会社と損害保険会社に分かれ、いずれも内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ行うことができない。また、一つの会社が生命保険業と損害保険業を同時に行うことはできない。
外国の保険会社が日本に支店や支社を開設して日本で営業する場合も同様の規制があり、免許が必要(保険業法第185条)。===保険会社一覧===

7保険

== 保険商品 ===== 保険商品に対する規制 ===保険商品は、[[約款保険約款]]に基づいて締結される保険契約である。保険約款は保険会社が定めた契約条項であり、契約の基本的な内容を定めた普通保険約款と、普通保険約款の規定を変更または補完している特別約款から成る。保険会社は経営上、多数の契約を迅速に締結する必要があるため、この契約方式を採用している。一方で、保険契約者・被保険者にとって不利な条項となるおそれもあるため、次の規制が講じられている。*商法等の法律により保険約款の内容を規制(立法)*金融庁による保険約款の認可・届出制(行政)*解釈が分かれる場合は「'''作成者不利の原則'''」により契約者を保護、著しく不当な条項は裁判で無効(司法)

6保険

===収支相等の原則===保険会社が同一のリスクを持つ保険契約者の集団から集めた保険料の総額と、保険会社がその集団の中で支払う保険金の総額とは等しくなくてはならない。これを収支相等の原則といい、保険が継続的に安定して運営されるために要請される。収支相当の原則は、給付・反対給付均等の原則を時間的・空間的に拡張したものであり、後者は前者の十分条件であるが必要条件ではない。また、収支相等の原則は、同一のリスクを持つ保険契約者が集団として存在していることを前提としていることから理解できるように、同一のリスクを持つ者が多数集まることによって不確実なリスクを合理的に処理する仕組みであることを示している。

4保険

このような突発的事件・事故で保険会社の経営は危機に陥いる可能性があるため、[[ソルベンシー・マージン比率]]が公開されている。この指標は、保険会社のリスク耐久性を意味している。
==保険の原理=====大数の法則===確率論・統計学で確立されている[[大数の法則]]をわれわれの社会におけるさまざまなリスクに適用すると、個々の局面で捉えると予測困難で、かつ致命的な損害になりうるようなリスクであっても、同等の危険を十分な数集めることによって確率的に予測可能になり、また経済的損失も変動の少ないものになりうると考えられる。

3保険

一部の保険組織では、一般の[[個人]]や[[企業]]から保険料の形で徴収し、集めた保険料で[[株式]]を購入したり、[[企業]]などに貸し出したり([[融資]])して、資金の運用を行ったりすることもある一方、他の保険会社へ再保険をかけて、保険会社から見ての[[リスク]](=万一の事故が発生した際の[[保険金]]支払いリスク)を分担していたりする。
[[保険契約]]に該当する事件、事故や災害([[保険事故]]という)が発生した場合、所定の手続きを行って、保険金を受け取るが、[[アメリカ同時多発テロ事件]]のような異常な事件が発生した場合、大成火災海上保険のように、[[再保険]]取引で大きな損失を出し、保険金の財源が底を尽きて破綻した会社もある。

2保険

民間の保険は、[[生命保険]]と[[損害保険]]、疾病(しっぺい)保険などのいわゆる[[第三分野保険第三分野の保険]]の三つの業態に分かれている。保険期間は、生命保険が数年~終身と長期にわたり、貯蓄的な性格を持つものがほとんどであり、損害保険は一日~一年程度の短期の掛け捨てのものが多い。両者の中間的位置付けである第三分野の保険期間は、一年~終身であるものが多い。
民間の保険会社は、[[保険業法]]による免許事業制であり、生命保険業免許を持つ生命保険会社と、損害保険業免許を持つ損害保険会社が存在する。第三分野の保険は、両者とも取り扱う。
上記の保険に似たものには、主に[[生活協同組合]]や[[農業協同組合]]などの[[協同組合]]組織による「'''[[共済]]'''」もある。この[[共済]]のうち、主務官庁を持たない、いわゆる無認可共済については、2005年に[[保険業法]]が改正され、将来的に保険会社または[[少額短期保険業者]]のいずれかに移行することが義務付けられている。

1保険

'''保険'''(ほけん 英:insurance)とは、加入者の[[財産]]や[[生命]]、[[健康]]などの[[危険]]([[事件]]、[[事故]]や[[災害]]など)に対し、[[金銭]]面での損失をカバーするための事業である。
==概要==加入者数が充分大きければ危険率は一定の経験値に収束する、という[[大数の法則]]により、危険率に見合った[[保険料]]を徴収すれば収支が均衡するはずである、という考え方に基いている。
日本では、[[国]]が直接または間接にかかわる[[社会保険]]として[[健康保険]]や[[介護保険]]、[[労働保険]]([[雇用保険]]、[[労災保険]])、[[年金保険]]([[厚生年金]]・[[国民年金]]など)の制度があり、医療費や介護費、失業時の生活費がカバーされ、また老後の生活支援の一部となっている。

保険22

元来、損害保険は「交渉次第で支払いを抑制して利益をあげ得る」商品であったため、支出となる保険金の支払いをなるべく抑制しようとしてきた企業姿勢に加え、特約の乱開発によって上述のような複雑な構成の保険が多数存在するようになり、保険会社自身がその保険がどのようなものか直ちに把握しづらくなってしまったことが、こうした不適切な不払いを大量に引き起こした要因である。このように、不払いにいたった経緯が保険会社側のモラルに欠けた利益追求姿勢および怠慢や甘えにあったことから、[[金融庁]]は不当不払いを起こした保険会社に対して業務改善命令の行政処分を課した

保険23

==リスク細分型自動車保険==日本では1997年より認可され、主に[[保険#外国損害保険協会加盟会社外資系保険会社]]を中心に、[[放送]]([[コマーシャルメッセージコマーシャル]])や[[新聞]]など[[マスメディア]]を使った[[広告]]で展開している。ドライバーの年齢、性別、地域、車種、走行距離、[[運転免許証]]の色などによって保険料が違うのが特徴である。近年は、国内の既存保険会社が子会社を作って参入するケースもある。
週末にしか車を使用しないなど、走行距離が極端に短いケースでは保険料が安くなるが(広告している例はほとんどが一番安くなる条件(30代の女性、[[コンパクトカー]]、年間走行距離2000キロ程度)を設定したケース)、通勤など日常的に車を利用する地方などで走行距離が伸びるケースでは、[[保険#日本損害保険協会加盟会社国内の保険会社]]よりも高くなることが多い。また、法人契約はできず個人契約に限られ、車種も一般的な乗用車(5・3ナンバー

保険21

なお、自動車保険の保険金支払は、契約者の危険度上昇と見なされるため、翌年度以降の保険料上昇に繋がるという点で、損害保険の中でも異質である。少額の請求では、逆に将来の保険料支払額が保険金の額を上回ってしまうこともありうる。一方で、事故の形態によっては、翌年度の保険料が上がらない場合もあり、保険金を請求する際には、翌年度以降の保険料がどうなるかという点についても事前に確認するとよい。
==風水害など地震への保険==ほとんどの自動車保険(車両保険)では、[[自然災害]]をカバーしていると謳っている場合でも、保険約款の免責規定で、[[地震]]や、[[津波]]、[[噴火]]によって被った損害を補償しない旨の定められており、注意が必要である。([[地震保険]]のオプションをつけない場合の、[[火災保険]]や住宅総合保険と同じ)しかし数社であるが、通常の自動車保険に追加する形で、これらほぼすべての自然災害をカバーする保険も存在する。

保険24

: 非常に一部の保険では、[[地震]]や[[津波]]、[[噴火]]などの大規模[[自然災害]]による損害も補償範囲となる場合がある(追加保険料の支払いが必要)。: 相手確認条件付車対車衝突限定の車両保険(「車対車+A」)は保険料が安いが、相手に当て逃げされた場合や自損事故の場合には保険金は支払われないので注意が必要である。
上記の対人賠償保険、無保険車傷害保険、自損事故保険、搭乗者傷害保険、対物賠償保険、車両保険の6つに対人・対物示談交渉サービスをセットしたものを自家用自動車総合保険(SAP)、車両保険を除いた5つ(車両保険は任意付帯)に対人示談交渉サービスをセットしたものを自家用自動車保険(PAP)、それぞれ単独又は任意の組み合わせで契約するものを自動車保険(BAP)という。しかし、近年の保険料自由化により、各損保会社とも新しい独自の商品の開発を行なっており、これらによる分類があてはまらなくなってきている。

保険20

* '''車両保険''': 自身の車両の損害(事故のほかにも、車両の盗難や、[[風水害]]など、[[地震]]や[[津波]]、[[噴火]]以外の[[自然災害]]による損害も含む)への補填。自損事故に限らず、相手のある事故の場合でも責任割合により自車の損害を全額相手から支払ってもらえるとは限らないため、車両保険を利用する場合がある。免責金額をつけて契約する場合が多い(保険会社によってはゼロとして契約することもできるが、保険料は高くなる)。: 車両の損害額は、原則として車両の時価評価額で算出される。経年に応じて車両の評価額は低くなっていくため、車両の購入金額が全額補償されるものではない。また、これは車両自体の評価額であり、特別装備(後付の[[カーナビゲーション]]や[[アルミホイール]]など)の金額は含まれないため、事故によって特別装備が損壊したとしても、車両の評価額以上の保険金は支払われないので、特別装備についての保険金が追加されて支払われるようなことはない。こうした特別装備についての補償も視野に入れる場合は、その内容を保険会社に申請する必要がある(追加保険料の支払いが必要)。

保険19

: 搭乗者傷害保険が定額払(死亡時に1,000万円、入院1日あたり1万円など)であるのに対し、人身傷害保険は治療費・休業補償・[[逸失利益]]など、実際に発生した損害額を補償する。また、自車の側に過失がある場合、その過失相当分の治療費などは相手の賠償保険からは支払われないが、この保険では、自車の側の過失分も含めて、損害額が保険会社からまとめて支払われる。
===物への保険===* '''対物賠償保険''': 自動車事故による賠償責任のうち、人的被害を除く部分に対する補填を行なう。壊れた物の修理費・再購入費の他、それによって生じた休業損害なども含まれる。ペットなどの生物もこれに含まれる。保険金額は、最高「無制限」まで加入できる。免責金額をつけて契約することがある。: 爆発物を積載した車や爆発物を取り扱う建物との衝突による類焼、人気[[競走馬]]を輸送する車との衝突、などに高額の賠償例がある。

保険18

* '''搭乗者傷害保険''': 車の運転中に、車に乗っていた人(運転者を含む)が死傷したときに支払われる。他人を乗せていてケガをさせた場合、賠償事故となれば、対人賠償保険からも保険金が支払われるが、それとは別に保険約款に定める定額の保険金が支払われる。
* '''人身傷害保険'''(人身傷害補償特約): 上記の無保険車傷害保険、自損事故保険、搭乗者傷害保険を包含する保険。歩行中の自動車事故による怪我も含む。: 事故の場合、相手方との示談や、加害者の捜索、入通院費用の確定などに時間がかかり、入通院や当座の収入の確保など、早期に必要となるお金が速やかに調達できない場合がありうる。人身傷害保険では、怪我の状況により、先に金額を算定して立替払いする。後日相手方や他の保険などから支払われる分は、立て替えた保険会社へ支払われる。

保険17

==任意保険の種類=====人への保険===* '''対人賠償保険''': 自動車の運行・管理に起因して、他人を死傷させたときの損害賠償責任に対する補償。自賠責からの給付を超えた損害賠償額が支払われる。保険金額は、最高「無制限」まで加入できる。* '''無保険車傷害保険''': 事故に遭って死亡または後遺障害を負った場合、本来相手方から賠償金が支払われるべきところ、相手方が無保険だった場合、救済措置として自車の保険から対人賠償保険相当額が支払われる。対人賠償保険に自動付帯。* '''自損事故保険''': 自損事故の場合は、賠償金が支払われるべき相手が存在しないため、救済措置として自車の保険から保険約款に定められた定額の保険金が支払われる。対人賠償保険に自動付帯。

保険16

====任意保険の補償水準====但し加害者側がこれらの保険に加入しても、直ちに被害者が'''十分な補償を受けられることまで担保しているわけではない'''ことに注意する必要がある。なぜなら保険会社も営利企業であるから、事実関係や[[交通事故の過失割合過失割合]]等で自社に有利な主張をすることが普通であり、仮にそれらが全く妥当であったとしても、保険会社が独自に作成している業界補償基準は、自賠責保険と同等若しくは若干上積みする程度のもの{{要出典}}であり、[[裁判]]で認められた補償基準などには遠く及ばないからである。

保険15

この補償額の「会社独自基準」と社会的(裁判例・[[弁護士会]])水準との乖離は、[[消費者金融]]における「[[グレーゾーン金利]]」と類似した構造で保険会社に膨大な超過利潤をもたらしている。しかし借り手が予め[[利息制限法]]を超過した高金利を認容して契約するグレーゾーン金利と異なり、一般に被害者は低水準の補償で受忍しなければならない必要性は全くない。ところが事故対応ノウハウを有する保険会社が示談交渉上の主導権を握ることが多いため、被害者の不知や動揺・事故による経済的困窮などに付け込んで、半ば強引に補償額を抑制することが常態化している。

保険14

また被害者が裁判も辞さないとの姿勢を示すと、保険会社は自社の裁判費用と労力および保険金支払額等とを勘案した上で、被害者に若干の上積み額を提示し裁判で長い間争うよりも楽だと主張して示談に持ち込もうとする場合が多い。実際、裁判になれば保険会社は企業の組織力を動員して、被害者の落ち度を徹底的に探し強引とも思える主張をすることとなる。このため被害者は事故の肉体的・精神的苦痛に加えて、裁判による経済的・精神的負担も覚悟しなくてはならなくなる。簡易な紛争解決手段として創設された[[少額訴訟制度]]も、保険会社は一般にこれによる解決を拒否するため機能していない。小額訴訟の訴額では、通常の訴訟に移行させれば原告である被害者側の費用倒れに終わるため、保険会社はこれを払い渋りの手口の一つとして積極的に活用しているからである。訴訟経験のない被害者側がこれを過剰に恐れる心理は保険会社による補償の抑制に有利に作用する場合が多い。このような被害者に対する救済機関として、[[1978年]]に[[財団法人]]交通事故紛争処理センターが設立された。

保険13

====実質的な強制保険====一方で、上記にある通り、自賠責保険が存在するものの、実際には今日、これだけでは被害者救済も加害者の責任義務を果たす事もまったく不可能であり、結局、日常的に運用されるほとんどの自動車とそのドライバーは、任意保険の加入が必須となっている。公認の[[自動車教習所]]で、堂々と任意保険加入を励行(内容はほとんど[[脅迫]]に近い)している。この為、任意保険も実質的に強制保険と変わらず、保険料の二重取りであると言う批判も多い。事実、多くの保険会社は自賠責による収入を任意保険での支払いに充てている。

保険12

==賠償保険とそれ以外の保険==上述のように、自動車保険の基本は、被害者や遺族への賠償保険が基本である。これには人的被害と物的被害、[[逸失利益]]などが含まれる。賠償保険は、被害者や遺族への補償という性格上、運転者の重過失(飲酒運転、無免許など)であっても、保険金は原則として支払われる。但し、運転者限定の特約への違反があった場合などは支払われないこともあるので、注意が必要である。
賠償保険以外に、自身の怪我や自動車の損害を補填する保険もある。この場合、運転者の重過失があった場合は「[[責任#自己責任自己責任]]」として、保険金が支払われない。賠償保険以外の保険のみを単独で加入することはできない。

保険11

初回契約時の6等級から最高の20等級になるためには、最短でも14年かかることになり、その14年の間は無事故を維持し続けなければならない。
ただし、事故を起こしたとしても、保険を使わなければ等級が下げられることはない。これを利用して、払い込む保険料を含めた金銭的な損失が保険を使わない方が軽微になる時には、事故を起こしても保険を使わずに済ませる場合がある。このような特性から、等級別料率制度は「万が一のための保険であるにもかかわらず保険を使わない」という、保険の存在意義を見失った現象を生み出しているという一面がある。

保険10

なお、'''自動車運転者損害賠償責任保険'''(ドライバー保険)は、自動車を保有しないペーパードライバー個人に掛ける、例外的な保険である。
====等級====任意自動車保険は、事故率の低い対象を優遇するために等級別料率制度を採用している。そのため、等級によって保険料率が変化する。
基本的な保険料率は、保険事故の有無によって1~20等級に区分されている。等級と割引率(割増率)の関係は保険会社によって異なる。最初に契約すると6等級からスタートする。1年間を無事故のまま継続すると、1等級上がり、その分の保険料が割り引かれる。逆に事故を起こすと、3等級下がり、その分保険料が割増になる。

保険9

保険期間は通常は1年だが、長期や短期の保険もある。保険料率は車種の他に、運転者の年齢や運転者の範囲(その車を他人が運転するか、本人・家族のみに限定するか、など)などによる分類によって定められ、危険度(事故率・損害率)の高いグループほど高い保険料率となる。(若年運転者ほど高い保険料率となる。また、運転者が家族に限定されるより、不特定多数による運転の方が保険料率が高い、など。)他にも車両の安全装備([[エアバッグ]]、[[アンチロック・ブレーキ・システムABS]]、衝突安全ボディ)や盗難防止装置の有無([[イモビライザー]]など)による割引制度がある。

保険8

任意保険は自賠責同様、自動車1台ごとに1契約が基本である。しかし、1台の車を共同利用していた時代とは異なり、国民の大多数が運転免許を保有するようになって、家族で数台の車を使用する状況になると、「車ごとの危険度」の算定では実態にそぐわなくなってきた面がある。近年の保険料自由化により、各保険会社が独自に、より細分化されたグループ([[運転免許証]]の色や家族構成、年間走行距離など)毎の危険度の算定や、複数保有割引の導入などが行なわれているのは、「車の保険」から「運転者個人」の保険への移行の流れと捉えられなくもない。しかし保険料率の細分化は、事故率の高い若年運転者の保険料の高騰となり、収入の低い若年層の「無保険化」を招く危険も孕んでいる。

保険7

===任意保険===重大な事故の場合には上記の自賠責保険だけでは不足し、また、物損事故には対応できないが、潜在的加害者である運転者の中で自力で十分な補償能力を有する者はむしろ稀であるため、強制保険以外にも任意で他の保険にも加入しておくことが推奨される。これを任意自動車保険('''任意保険''')という。