2008年3月11日火曜日

19年金

====国民年金と被用者年金の一元化====*高齢(退職)[[所得]][[リスク]]の違い、所得形態及び納付形態の違い、保険料賦課基準所得の定義の違いといった被用者と[[自営業]]者等との相違点を解消するという条件整備が不可欠である。ただし、仮に納税者番号制度が導入されたとしても、自営業者等の所得把握には限界がある。*事業主負担をどうするか、自営業者等に所得比例保険料負担を求めることに賛同が得られるかどうか。*現行制度と比べ給付と負担が大きく異なることとなると考えられるため、これについての十分な分析が必要となる。
===国民年金の空洞化===国民年金は、創設当初の完全積立方式から修正積立方式による財政運営に移行した。その後、年々の年金給付に必要な費用を、その時々の被保険者納付する保険料で賄われる部分が徐々に拡大し、1985年の基礎年金制度導入を含め年金制度全体が世代間扶養の性格を強めてきたため、現在では[[公的年金#積立方式と賦課方式賦課方式]]に移行したと言える。しかし、近年、国民年金の納付率が低下してきたことで、賦課方式における不公平感が大きくなっている。
====納付率の低下====近年の国民年金保険料の納付率は、[[1992年]](平成4年)度の85.7%をピークに年々低下し、[[2002年]]度は大きく低下した。[[2003年]]度からは若干上昇したが[[2006年]]には66.3%、[[2007年]]度上半期61.1%と再び低下している。また、納付を免除、猶予された人の分を除外せずに算出した国民年金保険料納付率の全国平均は2006年度は49%である。

18年金

====被用者年金一元化====一元化の議論には「財政単位の一元化」と「情報の一元化」がある。財政単位の一元化とは、報酬比例部分の財政単位を一元化して制度設計し、給付と負担を調整する。情報の一元化とは、被保険者情報と受給者情報を一元化し、職業や住所を変えるという移動があったときに一元化された情報をもとに確認する仕組みである。*2006年4月、「被用者年金制度の一元化等に関する基本方針について」が[[閣議]]決定された。公的年金制度の一元化を展望しつつ、民間被用者、[[公務員]]を通じ、将来に向けて、同一の報酬であれば同一の保険料を負担し、同一の公的年金給付を受けるという公平性・安定性を確保する。また、職域部分を廃止し、民間準拠の考え方を踏まえながら、衆参両院の国会議員、公務員の職務や身分の特殊性など公務員制度との関連から新たな仕組みを設けるとした。*2007年4月、共済年金の1・2階部分の保険料率を厚生年金の保険料率(18.3%上限)に統一し、給付を厚生年金制度に合わせる「被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案」が[[国会]]に提出された。
====パートの厚生年金適用の拡大====*2007年4月、上記「被用者年金制度の一元化法案」の中に、[[非正規雇用#形態の種類パートタイム]]労働者の厚生年金(社会保険)の適用の拡大が盛り込まれた。*2011年9月1日からの新しい適用基準は、(1) 週所定労働時間が20 時間以上 (2) 賃金が月額98,000 円以上 (3) 勤務期間が1年以上の条件をすべて満たす人である。*従業員300 人以下(現在、厚生年金の適用対象とされている従業員の人数で算定)の中小零細事業所の事業主は、新しい適用基準を猶予する。*以上は「案」として2007年10月現在、国会提出審議中である。

17年金

負担と給付のバランスを確保するためには、高齢者、女性、若者、障害者の就業を促進し、制度の担い手を拡大してゆくことが重要である。高齢者の就業機会の確保は、高齢者の高い就業意欲に応えつつ、制度の担い手としての役割が期待されることから、増加する年金給付の抑制や高い年金依存度の緩和につながる。また、女性や若年者の無業状態、[[失業]]を改善することが、少子化対策と併せて将来の支え手を増やしていくことになる。
====関連項目====*[[高齢化社会]]*[[少子化]]
===公的年金一元化===公的年金制度の一元化は、[[財政]]の安定性、ライフスタイルに対する中立性、制度間の公平性、制度の利便性(分かりやすさ)などのメリットがある。[[転職]]を繰り返したり、[[サラリーマン#脱サラ脱サラ]]をして[[個人事業主自営業]]に転職した場合、あるいは自営業からサラリーマンに転職した場合など、現在の多様なライフスタイル・キャリア形成に対応した仕組みにする必要がある。また、[[正社員]]と[[非正規雇用非正社員]]との均衡処遇を図り、[[雇用保険]]と年金で共通の適用ルールにすることにより、[[雇用]]形態の選択に対して中立的な仕組みにする必要がある。これは、共助のシステムである本来の機能の在り方という観点からも、非正社員のウエイトが高い産業・企業と低い産業・企業の間において生じている社会保険料負担の不均衡、更には未納・未加入問題や適用範囲の是正の観点からも、重要である。

16年金

==年金制度の課題==年金制度に関する国民の関心は高く、制度の'''持続可能性の確保'''や'''世代間・世代内の不公平の是正'''が求められている。2004年(平成16年)の年金改正法の附則に「社会保障制度全般についての一体的な見直し」が明記されたことにより、同年7月「社会保障の在り方に関する懇談会([[内閣官房長官]]主宰)」が、[[社会保障]]制度を将来にわたり持続可能なものとしていくために、税、保険料等の負担と給付の在り方も含めて議論を開始し、計18回の審議を行った。2006年5月、同懇談会は、社会保障の給付と負担の将来見通しを示し、「今後の社会保障の在り方について」の議論を取りまとめた。来年の通常国会にて、民主党は議員年金、公務員年金、国民年金を一本化する提案を提出する予定。
===急速な少子高齢化===急速な[[少子高齢化]]の進展により、国民の間で年金制度の持続性への不安が高まっている。2004年の年金改正法時における2005年出生率の前提は1.39であったが、実際の出生率は予測を下回り1.25となり[[少子化]]がさらに進んだ。人口減少や地域の過疎化の観点からも少子化に対する危機感が全体に広がっている。
====新人口推計====2006年12月に発表された新人口推計(中位推計)では、[[女性]]の生涯[[未婚率]]を23.5%に見直して[[合計特殊出生率]]を1.26に下方修正した結果、20歳~64歳の現役世代の人口と65歳以上の[[高齢者]]の人口との比率は、2055年には、1.3:1になると修正された。

15年金

''人口関連''*出生率:出生率が低下すると、その世代が被保険者となる約20年後以降に被保険者が減少するため、将来の保険料収入が減少し、所得代替率が低下する。*寿命:寿命が延びると年金給付費が増大し、所得代替率が低下する。''経済関連''*運用利回り:実質的な運用利回りが上昇すると、運用収入が増加し、所得代替率は上昇する。*賃金上昇率:実質賃金上昇率が上昇すると、保険料収入はその分上昇するが、年金給付費の延びはそれ以下(物価により改定)のため、所得代替率は上昇する。*物価上昇率:物価上昇率が低下すると、マクロ経済スライドの調整効果が減殺される(年金の名目額が減少しない範囲で調整する)ため、所得代替率は低下する。*厚生年金被保険者数・労働力率:被保険者数、労働力率が増加すると、保険料収入が増加し、所得代替率は上昇する。*積立金の水準:積立金が増加すると、運用収入が増加し、所得代替率は上昇する。

14年金

===財政検証===*年金事業の収支保険料、国庫負担、給付に要する費用など年金事業の収支について、今後おおむね100年間における見通しを作成し公表する。*マクロ経済スライドの開始今後おおむね100年間において財政の均衡を保つことができないと見込まれる場合には、[[マクロ経済スライド]]の開始年度を定める。(現在、この開始年度は政令で平成17年度と定められ、マクロ経済スライドは発動し得る状態となっているが、平成12~14年度の[[物価スライド]]の特例が解消していないため、マクロ経済スライドによる給付費の調整は行われていない。)*マクロ経済スライドの終了マクロ経済スライドを行う必要がなくなったと認められる場合には、マクロ経済スライドの終了年度を定める。*調整期間マクロ経済スライドによる調整期間中に財政検証を行う場合には、マクロ経済スライドの終了年度の見通しを作成し公表する。
===影響を与える要素===年金財政(所得代替率)に影響を与える主な要素は人口関連と経済関連があり、この2つを勘案して将来の給付水準を設定する。

13年金

===マクロ経済スライド===2004年法改正では、給付と負担の見直し方については、最終的な保険料の水準を法律に規定し('''保険料水準固定方式''')、その保険料の範囲内で年金給付を行うことを基本とした。年金額改定は、新規裁定者(68歳未満)は名目手取り賃金の伸び率(変動率)によるスライド、既裁定者(68歳以上)は物価の伸び率(変動率)によるスライドにより行われる。このため、これまでのように5年ごとの財政再計算(保険料の改定)は行わず、財政状況を検証するため、少なくとも5年に一度、「財政の現況及び見通し('''財政検証''')」が行われる。(初回は平成21年までに実施)
また、財政均衡期間において、必要な積立金が確保できないなど財政の不均衡が見込まれる場合には、賃金や物価の変動と合わせて、少子化(公的年金加入者の減少)や高齢化(平均余命の伸び)といった経済情勢や社会情勢などの変動に応じて、給付の水準を自動的に調整する仕組み('''マクロ経済スライド''')が導入された。[[マクロ経済スライド]]による調整期間における年金額改定は、新規裁定者(68歳未満)は名目手取り賃金の伸び率(変動率)×スライド調整率、既裁定者(68歳以上)は物価の伸び率(変動率)×スライド調整率により行われる。*スライド調整率=公的年金加入者の変動(減少)率×平均余命の伸び率(0.997)*公的年金加入者の変動率=3年度前の公的年金加入者総数の変動率(3年平均) *平均余命の伸び率(0.997)=65歳時の平均余命の伸び率(平均的な受給期間の伸び率は0.3%)

12年金

===有限均衡方式===2004年法改正においては、厳しい年金財政状況を踏まえ、社会経済と調和した持続可能な年金制度を構築するために、給付と負担のあり方の抜本的な見直しが行われた。
将来のすべての期間について給付と負担の均衡を図り(永久均衡方式)将来にわたって一定の積立金を保有することを改め、おおむね100年間で給付と負担の均衡を図り、その財政均衡期間の最終年度に給付費の1年分程度の積立金を保有すること('''有限均衡方式''')とし、積立水準の圧縮分を次世代、次々世代の給付に充てることとした。*有限均衡方式:すでに生まれている世代の一生程度(概ね100年間)の期間(財政均衡期間)について、収入(基礎年金拠出金・国庫負担・積立金)と支出(給付費)の均衡を図っていく財政運営で、定期的な財政検証ごとに財政状況の現況分析と財政状況の見通しを立て、その見通しの期間を徐々に移動させていく財政運営。この場合、積立金の水準は、財政均衡期間の最終年度2100年(2004年財政再計算)において支払準備金程度(約1年分の給付費)とすることとされている。*財政均衡期間:すでに生まれている世代の一生程度(概ね100年間)の期間における収入(基礎年金拠出金・国庫負担・積立金)と支出(給付費)の均衡を図ることとし、そのため定期的に財政検証(財政状況の現状分析)と財政の見通しを立てることとされている期間。

11年金

世代間扶養の考え方に基づく財政運営方式では、保険料負担の急増や給付水準の急激な抑制が不可避となることから、従来から一定規模の積立金を保有することにより、将来の保険料負担の上昇及び給付水準の低下を緩和することとされている。2004年改正前の年金額の改定は、'''給付水準維持方式'''により原則として5年ごとに行う財政再計算に合わせて、[[賃金]]や[[消費]]支出などを総合的に勘案して行われ、保険料負担は段階的に保険料を引き上げる'''段階保険料方式'''がとられていた。また、財政再計算が行われなかった年度は、完全自動[[物価スライド]]により年金額の改定が行われていた。*給付水準維持方式:年金額の給付水準を将来にわたり維持するために必要な費用を賄うための財源(保険料等)を確保する方式。*財政再計算:将来推計人口(出生率や平均余命、予定死亡率)、積立金の予定運用利率や経済情勢(賃金や消費支出の変動)を勘案し、今後の年金額やその給付水準を将来にわたり維持するために、今後必要な負担(保険料額)を5年ごとに見なおすこと。

10年金

===2006年度見通し===2007年3月に公表された「厚生年金の標準的な年金額(夫婦二人の基礎年金額を含む)の見通し【生年度別、65歳時点】-暫定試算-」の経済前提基本ケースで出生中位場合は、1941年度生まれ(65歳)の月額22.7万円(所得代替率59.7%)から所得代替率は徐々に下がり、1986年度生まれ(20歳)では月額37.3万円(所得代替率51.6%)となる。*経済前提基本コース:最近の経済動向を踏まえた設定*出生中位:2055年の合計特殊出生率を1.26に設定
==財政運営=====財政の均衡===日本の年金制度は、現役世代の保険料負担で[[高齢者]]世代の年金給付に必要な費用を賄うという'''世代間扶養'''の考え方を基本に「'''[[公的年金#積立方式と賦課方式賦課方式]]'''」により運営されているが、近年、[[経済]]の長期的停滞の下で[[人口]]の[[少子高齢化]]が急速に進行している。